ヴィティスターズ!【ワイン擬人化♂】

独身貴族

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味見編

Goûte moi 私を味見して 第1話 妖精か、或いは悪魔か

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Goûte moi 私を味見して 第1話 妖精か、或いは悪魔か
(上演15分)

──────────
《キャスト》

武藤秋(むとうしゅう)
支店長
シェフ

⭐︎本日の出勤⭐︎
カベルネ:
シャルドネ:(キスあり)

──────────

↓ 以下、本編 ↓

***

 閑散とした会議室のような、無機質な部屋。支配人が、履歴書を見ながら、武藤に話しかける。武藤は緊張の面持ちでパイプ椅子に座っているが、対する支配人の表情は履歴書に隠れてわからない。

支配人「武藤秋くん、ね。専門学校で学びつつホテルで勤務し、飲料の実務経験あり。卒業後、フレンチの店に就職……そこのソムリエと折り合いが悪いんだってね?」

武藤「は、はい、まぁ……」

支配人「でもワインに対する興味はある、と。オーケー、合格。ちょうど人手が足りなくて困ってた所だ。明日から、仕事入れそうか?」

武藤「え、明日から? ええ、まぁ……」

支配人「よかった。それじゃぁ、よろしく。武藤くん」

武藤「はぁ。よろしくお願いします……」

***

武藤N「そういうわけで、僕、武藤秋は、ワインバー《ヴィティスターズ》で、働くことになった」

【ヴィティスターズ グート・モワ 第2話 妖精か、或いは悪魔か】

***

 開店前の店。着慣れない制服に、居心地の悪さを感じつつ、シェフから説明を受ける武藤。

シェフ「支配人から聞いたよ。武藤くんって、飲食の実務経験があるんだってね。だったら、店での接客は任せても大丈夫だね~」

武藤「えっ? ちょっと、待ってくださいよ! いくら経験があるからって、初日ですよ!? もうちょっときちんと教えて欲しいです! 仕事内容とか! 店の方針とかやり方とか動き方とか! 色々!」

シェフ「あ~、そこら辺は、バイトとか他の奴らに聞いてもらえるかな? 俺、これから仕込みしなきゃいけないんだよね~」

武藤「そんな!」

シェフ「君の仕事は、一階にあるこのバーで、ワインをお勧めして売ること。あとワインの在庫管理をして回転させ売り上げを上げること。他細かいことは、ほれ、パントリーに誰かしらいるはずだから、そいつらに聞いて。俺と支配人は2階のレストランにいるから、なんかあったら内線かけて。以上!」

武藤「あ、ちょ、ま! ……って足が速い!!」

***

武藤N「店内を軽く説明すると、一階がワインバー、2階がご予約のみのレストラン、地下がワインセラーになっている。ワインバーはカウンター8席、ボックス1席、窓側の4人掛けテーブル2席、天気がいい時は窓を開けてテラス席にもできるようだ。カウンター奥にはパントリーがあり、簡単な調理台と洗い場、2階の厨房につながる小さな運搬用エレベーターがあり、スタッフルームは地下のセラー室の前にこぢんまりとある」

武藤N「このカウンター奥のパントリーに他の従業員がいるようだが……」

***
 
武藤「はあ。なんつーか、テキトーな人だな、ここシェフ……。前の職場とは大違いだ」」

[SE:ドアの鈴]
[SE:  勢いよく開くドア]

シャル「どもーーーーー!! こんちわーっす!」

武藤「うっわ!!! びっくった……!」

[SE:足音]

シャル「おっ! もしかして君が噂の? 新人くん?」

武藤「えっ、あっ、まぁ、そうです」

シャル「おーよろしくー。これから一緒にがんばろーぜっ」

[SE:テーブルに段ボールを置く]

シャル「よっと。ふう。あ、これお届けものね。中身はワイン」

武藤「は、はぁ」

シャル「あ、そだ。まだ名乗ってなかったな。俺はシャルドネだ。よろしくぅ」

武藤「えっ、シャルドネって、……源氏名か何かですか? それとも……本名?」

シャル「あ、もしかして、俺たちのこと、支配人から聞いてない?」

武藤「え、聞いてないです。な、なんですか? ……あ、もしかして、このお店じゃ、そう言う名前で呼び合うとか? それとも、外国人雇用とか……?」

シャル「いんや、そーゆうのじゃなくてねー。んー、なんて説明したらいいんだろうな」

 シャルドネはちょっと考えてから、

シャル「ここはワインバーだろ? 俺はねぇ、ワインとして、ここで働いてんの」

武藤「は、はい?」

シャルドネ「まぁ、なんだ? ワインの妖精さん、みたいな? ま、そんな可愛いもんじゃねえけどな」

武藤「はい!? なんなんだよ妖精って……! 痛々しいだろ……! どういう設定!?」

シャル「んー、やっぱわかんないよなー。……よし、じゃあ手っ取り早く、わからせてやろう」

 シャルドネは武藤に近づく。

シャル「ちょっと顔貸しな」

武藤「え? ……ん!」

  シャルドネは武藤の顎を引き寄せると、キスをする。

シャル「……どうだ? ワインの味がしたろ」

武藤「は、はあああああああああああ!? ちょっと、あんた、初対面で何してんですか!! うわ、最悪!  何すんですかいきなり!」

シャル「そんなに嫌だったか? そーでもねーだろ」

武藤「嫌に決まってんでしょ!! え! なに!? なんで……!?」

シャル「(わざとらしく)ん~、俺の魅力が伝わらなかったか。……じゃあ、今度はもっとよく味わってくれよ。んー」(キスしようとする)

武藤「ちょ、ちょ、また! 顎掴むな! 近づくな! やめーーーー!」


 入り口から、もう1人現れる。

カベルネ「そこまでにしておけ、シャル」

武藤「ふぇ?」

シャル「ちぇー。邪魔すんなよ、カベルネ」

カベルネ「初対面の人間で遊ぶなってあれほど……はあ。取り敢えず、その手を離してやれ」

シャル「しゃーねーな。へいへいっと」

武藤「な、なんなんですか、一体。っていうか、今、カベルネ……とか言ってましたけど」

シャル「そうそう。こいつはカベルネ・ソーヴィニョン。んで、俺はシャルドネな。アンシャンテ~♡」

武藤「え、じゃぁやっぱりこの店じゃ、葡萄の品種名を源氏名にしてるとか?」

シャル「だーから源氏名じゃねぇって。そーゆう名前なんだつってんだろー?」

カベルネ「信じられないと思うが、俺たちはワインの原料となる葡萄が具現化した存在……とでも言ったらいいだろうか。言葉にしづらいが、俺たちは葡萄であり、ワインでもある、そんなところだ」

武藤「えっと……すまんせん。理解できない」

カベルネ「だろうな」

シャル「だからチューしたら納得するかなって思ったんだけどなー」

カベルネ「初対面でするわけないだろ……。新人くん、混乱するのも無理はない。今は理解できなくても結構だ。それより」

[SE:テーブル上の段ボールに手を置く]

カベルネ「開店時間が迫っている。支度を急ごう。武藤くん、しばらくは俺やメルロー、それからシャルドネがついて仕事を教えるから、少しづつでいいから覚えていってくれ」

武藤「え、メルローもいるんですか?」

カベルネ「む? まだ会っていないのか? 先に来ているはずだが……」

武藤「いえ、まだ……」

カベルネ「そうか。2階の手伝いをしているのかもしれんな。まあ、あとで会えるだろう。この届いたワインは、取り敢えずワインセラーに仕舞おうか」

武藤「は、はあ。わかりました」

[SE:ガムテープを剥がす]

武藤「……偶然ですかね、これは。カベルネとシャルドネのワインが入っているんですが」

カベルネ「新しく店で出すそうだ。メニューには決まった銘柄が載っているが、セラーにはシェフが気まぐれに仕入れているワインもある。こいつもその手だな」

シャル「どうせインポーターのねぇちゃんがセクシーだったんだろーよ」

武藤「銘柄は……ディアブロ……かぁ」

***

シェフN「説明しよう! ディアブロとは《悪魔》という意味である! あまりにも美味しいワインだったがゆえに、保管していた蔵に悪魔が住みついていると噂を流して、誰も近づけさせなかった、そんな伝説から名付けられたワインなのである! 以上!」

***

武藤「……もしかして妖精じゃなくて、悪魔なんじゃ……」

シャル「(後ろから覗き込んで)ふっふっふー。どうだろうねー?」

武藤「なんですかその含み笑い。意味深だな……」

***

シェフ「続く!」




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