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最終幕 愛の形
★R18
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「ちょ! 暁美! 待て! 風邪引くぞ!」
「やーだー! あそびたいー!」
陽翔はきゃいきゃいと声を立てながら、ふざけて走り回る暁美を、バスタオルを持ちながら追いかける。陽翔はお風呂上がりに彼女の髪を拭いていたのだが、どうやら暁美はじっとしていられなかったらしく、彼の手をすり抜けてしまったのだ。ろくに拭いていない自分の髪から雫が散っていくため、焦った陽翔はバスタオルを広げて暁美の頭上からすっぽりと被せた。
「捕まえた!」
いやいやと頭を振る暁美を、がっちりと捉えた陽翔は、素早く髪を拭いてドライヤーをかけ、パジャマを着せにかかる。だが今度はパジャマのボタンを最後まで留めさせてはくれず、教育番組で見たダンスを、見様見真似で踊りだしてしまった。暁美がリボンを回す真似をして、ビニール紐を振り回している暁美を観察しながら、陽翔は上手だねと拍手を送る。
それにも関わらず、暁美は手を止めてしまい、ビニール紐を放り出してしまう。陽翔はそれを見て怪訝な表情をしていたが、お風呂場から出てきた百子を認めて、暁美の行動の疑問が氷解した。
「陽翔、暁美のお風呂ありがとう。おかげでゆっくりできたよ」
「かあたん!」
陽翔に感謝の言葉を述べた百子は、駆け寄って来る暁美を抱き上げて、彼女の頬に顔を擦り寄せる。
「百子、髪乾かしてくる。暁美を頼んだ」
陽翔は頷いた百子と、再びビニール紐とダンスを始めた暁美を尻目に、自分の髪を拭きに脱衣場へと向かう。子供とお風呂に入ろうものなら、自分のことは全て後回しになってしまうことも珍しくない。とはいえ、何故かそれが苦になることは殆ど無かった。百子と事前に話し合って、当番制にしているからかもしれないが。
「暁美、もうねんねするよ」
「やだ! まだあそぶの!」
脱衣所のドア越しに、二人の声が細く聞こえるので、陽翔はパジャマを着る手間を惜しんで脱衣所を出る。暁美を宥めすかして寝かせようと意気込んでいた陽翔だったが、暁美が何の前触れもなく布団に倒れ込み、慌てて駆け寄った。
「あ、大丈夫。暁美は寝ちゃっただけ。電池切れみたいでびっくりしたけど」
ビニール紐を持ったまま、静かに寝息を立てている暁美を見て、陽翔はホッと息をついた。確かに2歳児は遊び疲れたり、食べている間に寝落ちしてしまうことは珍しく無いと聞いていたが、遊び疲れて唐突に寝てしまう所は初めて目撃して、動転しかけてしまったのだ。百子はゆっくりと暁美を布団に寝かせ、微笑みながら彼女の頭をなでている。
「暁美はダンスが好きなのね。さっきまでずっと踊ってたのよ。あんな風に寝るとは思わなかったけど……」
百子は暁美を抱き上げ、ベビーベッドにゆっくりと寝かせる。そして暁美のお気に入りのイルカのぬいぐるみを、大の字になって寝てる彼女の腕にそっと置いた。
「暁美は陽翔そっくりね。私、最初は陽翔を産んじゃったって思ってた」
陽翔は思わず吹き出してしまい、自身の膝を叩いた。
「……何言ってんだよ。確かに顔は俺に似てるだろうが、暁美の髪質と肌質と性格は百子そっくりじゃねえか」
陽翔は眠りこけている暁美を、しばらく撫でていたが、不意に百子を後ろから抱きしめた。不埒な彼の両手は、百子の官能を引きずり出そうと、脇腹やデコルテ、太ももを這い回る。百子は全身にかっと血潮が巡り、思わず陽翔を振り返る。驚いた百子の唇を、陽翔はそっとこじ開け、上顎を、歯列を、頬を舌でなぞり、彼女の舌を探り当てて、最初はゆるりと絡めていたが、徐々にその動きは激しくなっていた。百子の太腿に、彼の固い熱が、その存在を強く主張しており、さらに彼女の体温が上昇する。
「んっ……やだ、おきちゃ……」
唇が離れた隙をとらえ、百子は潤む瞳をして首を横に振る。暁美が産まれてからは、いつもは別室で陽翔と愛を深めているのに、自身がくったりする程のキスを、我が子の前でされるとは思わなかったのだ。
「……すまん。移動するか」
陽翔は百子を横抱きにして、タオルと枕を引っ掴み、そろりそろりと寝室を出る。そして以前二人で寝ていた、シングルベッドのある部屋に移動し、百子をベッドに下ろすや否や、陽翔は彼女の唇に再び噛み付く。その間も、陽翔の大きな手は、彼女のカカオ色の蕾を弾いたり、へその下の茂みを探り当て、花芽に触れるか触れないかの位置で撫で続ける。
「んっ……んー!」
いつの間にかパジャマとショーツを脱がされ、陽翔の指に、舌に翻弄されている百子は、声を漏らすまいと、タオルを口に咥える。いくら別室とはいえ、暁美に嬌声のせいで起こしてしまうのは、何としても避けねばならないからだ。
「百子のここ、まだちょっと甘いな」
ぞろりと膨らんだ蕾を、陽翔の舌が覆って、すぐにまた離され、息をふっと吹きかけられ、百子の体が跳ねる。
わざと舌なめずりをして、彼女にニヤリと人の悪い笑みを浮かべてみせ、顔をさらに紅潮させる所を見届けて、満足した陽翔は、彼女の腹や脇腹に舌を這わせ、段々とそれを彼女の体の中心へと移動させる。膨らんだ蕾を指で弄りながら、陽翔は既に潤みきっている秘花に唇を寄せた。
(暁美が産まれてから、そこばっかり舐めるようになるなんて……!)
嬌声をタオルの白に溶かしながら、百子は去年のことを思い出す。当時は陽翔に吸われても母乳がよく出ており、陽翔が興味本位で飲んだことがあったのだが、翌日になって腹痛を起こし、腹を下したという、不名誉な事件があったのだ。それ以来、陽翔は胸の愛撫を口でする事をほぼ断念し、代わりに百子の蜜の源泉をたっぷりと舐るようになっていた。
いつの間にか陽翔の指が秘花に突き立てられ、蜜壺を円を書くように撫でられ、花芽も同時に陽翔の舌が這い回るようになる。百子は幾度となく体を跳ねさせ、目の前に白い光を散らし、喉を反らせて、陽翔の両腕にしがみつき、甘い疼きをひたすら逃がす。その様子を、陽翔は口元をだらしなく歪めて、自身の歓喜を百子への口づけと愛撫に篭める。艷やかな彼女の嬌声が聞けないのは残念だが、その分体は正直に、善がっている証を、いとも簡単に示してみせるため、彼女への愛しさは募るばかりだ。
(ちょっといけないことしてる気分だがな)
「ほら、イってしまえ」
陽翔の指に襞がまとわりつき、百子が一際体を跳ねさせ、荒い息を何度も吐く。百子の蕩け切った表情は、完全に陽翔を求めているそれであり、彼は百子の耳元に唇を寄せた。
「なあ、百子……そろそろ新しい家族を迎えないか?」
てっきり耳を撫でられると思った百子だが、艶っぽい陽翔の声がするりと鼓膜を、脳を撫でて目を見開く。いつものビニールを破る音が聞こえなかったのはそういうことかと、妙に納得がいった。
(先に言おうと思ってたのに……!)
本当は百子から切り出すつもりであったが、先を越されたために歯噛みしそうになる。だが百子はふわりと微笑みながら、彼に向かって両手を伸ばした。
「……うん、いいよ、来て……。私も、赤ちゃん、欲しい……」
強請る百子に応えるかのように、すぐさま彼の熱杭がぴたりと秘花に沿わされ、何度か往復する。だが陽翔も気が急いていたようで、彼女の小さな口を唇で塞ぎ、蜜に潤むそこに、猛りに猛った熱杭で、一気に貫いた。
「んっ……! ふっ! んんんんっ!」
陽翔を迎え入れた歓喜で、百子は陽翔の背中に回した両腕に力を込める。それと同時に陽翔が低く呻いた声が、百子の口の中で溶けた。
そして何度も彼の熱杭が蜜壺をかき回し、さらに蜜と悦楽を溢れさせ、百子の意識は白い奔流に攫われていく。
「百子、ナカでイきやすくなったな。暁美のおかげか?」
陽翔の熱杭の先端が最奥に触れ、口の中で悦びを聞きながら陽翔は囁く。襞が陽翔を離すまいとうねるため、いつ果ててもおかしくないのだ。百子が暁美を産んで以来、より陽翔の形を覚えた襞は、激しく蠢いて熱杭を離さなくなってしまい、分身を宥めるのが以前よりも困難になっている。襞と熱杭が直接絡み合っているのも原因かもしれないが。
(上も下も……陽翔でいっぱい……)
声を出すのを抑えるのは、陽翔の執拗な愛撫が原因で困難を極める。とはいえ、彼に唇を塞がれ、舌を絡められている間は、陽翔が動く度に嬌声を上げることができるため、くぐもった声を陽翔に食べられていた。
「はると……! もっと、欲しい!」
唇が離れた僅かな間に、百子が陽翔は百子をうつ伏せにして枕を握らせる。百子が枕に顔を埋めたのを確認し、陽翔は彼自身を、蜜を湛えた襞の中にゆっくりと沈めた。
「……ッーー!」
どちらともなく、声にならない呻きや、互いの肉がぶつかる湿った音、結合部の水音が三重奏となって二人の耳を叩く。陽翔は百子に覆い被さり、荒い息と呻きを、散歩から帰ってきた犬のように吐き出し、百子は最奥をノックされた衝撃で体をそらした。
(声が出ちゃう……! それに、いつもより激しい!)
百子は枕カバーを強く噛んだのだが、陽翔が一際大きく呻くのを聞いてしまう。
「そんなに締めるな……! っく!」
「締めてな……あうっ!」
食いしばった歯の間から呻きが漏れ、思わず陽翔は百子の首筋にゆるく歯を立てる。彼女の体がびくんと震え、さらに襞が蠢いて熱杭に、離すまいと絡みついた。陽翔がさらに腰を推し進め、最奥を貫くので、何度めなのか不明な、白く甘い疼きが一気に弾け、百子は再び枕のカバーを強く噛む。
「百子ッ! 出るッ……! ああっ!!」
白い雷か弾け、全身が一瞬硬直したが、何度か腰を打ち付けて、欲に滾る白を残らず最奥へと送り込む。そのまま二人で横になり、陽翔は百子の背中に、振り返った彼女の唇に何度も口づけを落とし、しばし後ろから抱きしめていた。勢いと熱を失った分身がぬるりと蜜壺から這い出したため、陽翔は慌ててティッシュを掴み、彼女の股間にそれを当てる。そして百子をゆっくりと起こし、執念深く蜜壺に留まっている自身のどろりとした欲を清めた。
「陽翔、気持ちよかった……」
掠れの無い声が、うっとりと陽翔の鼓膜を撫で、唇に柔らかく湿った物が触れ、舌がするりと口腔に侵入する。優しく頬や上顎をなぞり、陽翔はそれに答えた。
「俺もだ……激しくしたつもりは無かったが、あんまり手加減できなくてごめん」
百子はころころと笑って首を横に振り、陽翔の唇を啄むようにキスをした。
「ううん。陽翔と繋がれて幸せだもん。大好きよ」
陽翔は返事の代わりに、百子の唇を舌を奪い尽くし、彼女の唾液を飲み込んだ。
「百子、俺も百子を愛してる。ずっと離さないから、覚悟しろよ?」
このままずっと抱き合っていたかったが、陽翔は百子を再び横抱きにして、忍び足で夫婦の寝室に戻り、百子を寝かせてパジャマを寄越す。いそいそと着替えた二人は、幾度となくキスを交わした。
「今度産まれるのは男の子かもしれんな」
百子の腹を愛おしげに撫でながら、陽翔はきりっとして囁く。妙に説得力を感じた百子は、目をぱちくりさせた。
「まだできてもないのに。陽翔は男の子がほしいの? 私は陽翔の子供ならどっちでも良いかな」
微笑む百子に、陽翔はニヤリと笑ってみせた。
「俺は男の子を作るつもりで百子を抱いたぞ……知ってるか? 夫婦の営みは激しい方が男の子が産まれやすいらしいぞ?」
百子はわなわなと唇を震わせる。どうやら百子が激しいと感じたのは気のせいでも何でもなく、陽翔が意図していた範疇だったらしい。
「……え? まさか、暁美ができる前は優しくしてたってこと……? それにしては激しかったと思うんだけど。そもそも赤ちゃんの性別って、そんな簡単に決まらないと思うよ?」
「試してみないと分かんないだろ。だから明日からは激しく抱くぞ。百子は優しいだけじゃ物足りなさそうだしな?」
低く艶のある声がぞわりと鼓膜を撫で、瞬時に顔を赤くした百子は、陽翔の胸板を拳でドンドンと叩く。その手を彼に掴まれ、キスを落とされた百子は、彼の流れるようなその行動に歯噛みしていたが、暁美がトイレに行きたいと起きてしまったことで霧散した。陽翔がおまるを用意し、二人を見守っていた百子だが、陽翔に愛された体は気だるさを訴え、徐々に瞼が下がってしまい、戻ってきた陽翔に頭を撫でられながら、いつしか微睡みに飲み込まれてしまった。
そして間もなく百子に愛の結晶が宿り、次の年に百子そっくりな男の子が無事に誕生した。男の子は正日と名付けられ、何かと暴走しがちな暁美のブレーキ役に奔走する羽目になるのだが、それはまた、別の話。
『茨の蕾は綻び溢れる~クールな同期はいばら姫を離さない~』(終)
「やーだー! あそびたいー!」
陽翔はきゃいきゃいと声を立てながら、ふざけて走り回る暁美を、バスタオルを持ちながら追いかける。陽翔はお風呂上がりに彼女の髪を拭いていたのだが、どうやら暁美はじっとしていられなかったらしく、彼の手をすり抜けてしまったのだ。ろくに拭いていない自分の髪から雫が散っていくため、焦った陽翔はバスタオルを広げて暁美の頭上からすっぽりと被せた。
「捕まえた!」
いやいやと頭を振る暁美を、がっちりと捉えた陽翔は、素早く髪を拭いてドライヤーをかけ、パジャマを着せにかかる。だが今度はパジャマのボタンを最後まで留めさせてはくれず、教育番組で見たダンスを、見様見真似で踊りだしてしまった。暁美がリボンを回す真似をして、ビニール紐を振り回している暁美を観察しながら、陽翔は上手だねと拍手を送る。
それにも関わらず、暁美は手を止めてしまい、ビニール紐を放り出してしまう。陽翔はそれを見て怪訝な表情をしていたが、お風呂場から出てきた百子を認めて、暁美の行動の疑問が氷解した。
「陽翔、暁美のお風呂ありがとう。おかげでゆっくりできたよ」
「かあたん!」
陽翔に感謝の言葉を述べた百子は、駆け寄って来る暁美を抱き上げて、彼女の頬に顔を擦り寄せる。
「百子、髪乾かしてくる。暁美を頼んだ」
陽翔は頷いた百子と、再びビニール紐とダンスを始めた暁美を尻目に、自分の髪を拭きに脱衣場へと向かう。子供とお風呂に入ろうものなら、自分のことは全て後回しになってしまうことも珍しくない。とはいえ、何故かそれが苦になることは殆ど無かった。百子と事前に話し合って、当番制にしているからかもしれないが。
「暁美、もうねんねするよ」
「やだ! まだあそぶの!」
脱衣所のドア越しに、二人の声が細く聞こえるので、陽翔はパジャマを着る手間を惜しんで脱衣所を出る。暁美を宥めすかして寝かせようと意気込んでいた陽翔だったが、暁美が何の前触れもなく布団に倒れ込み、慌てて駆け寄った。
「あ、大丈夫。暁美は寝ちゃっただけ。電池切れみたいでびっくりしたけど」
ビニール紐を持ったまま、静かに寝息を立てている暁美を見て、陽翔はホッと息をついた。確かに2歳児は遊び疲れたり、食べている間に寝落ちしてしまうことは珍しく無いと聞いていたが、遊び疲れて唐突に寝てしまう所は初めて目撃して、動転しかけてしまったのだ。百子はゆっくりと暁美を布団に寝かせ、微笑みながら彼女の頭をなでている。
「暁美はダンスが好きなのね。さっきまでずっと踊ってたのよ。あんな風に寝るとは思わなかったけど……」
百子は暁美を抱き上げ、ベビーベッドにゆっくりと寝かせる。そして暁美のお気に入りのイルカのぬいぐるみを、大の字になって寝てる彼女の腕にそっと置いた。
「暁美は陽翔そっくりね。私、最初は陽翔を産んじゃったって思ってた」
陽翔は思わず吹き出してしまい、自身の膝を叩いた。
「……何言ってんだよ。確かに顔は俺に似てるだろうが、暁美の髪質と肌質と性格は百子そっくりじゃねえか」
陽翔は眠りこけている暁美を、しばらく撫でていたが、不意に百子を後ろから抱きしめた。不埒な彼の両手は、百子の官能を引きずり出そうと、脇腹やデコルテ、太ももを這い回る。百子は全身にかっと血潮が巡り、思わず陽翔を振り返る。驚いた百子の唇を、陽翔はそっとこじ開け、上顎を、歯列を、頬を舌でなぞり、彼女の舌を探り当てて、最初はゆるりと絡めていたが、徐々にその動きは激しくなっていた。百子の太腿に、彼の固い熱が、その存在を強く主張しており、さらに彼女の体温が上昇する。
「んっ……やだ、おきちゃ……」
唇が離れた隙をとらえ、百子は潤む瞳をして首を横に振る。暁美が産まれてからは、いつもは別室で陽翔と愛を深めているのに、自身がくったりする程のキスを、我が子の前でされるとは思わなかったのだ。
「……すまん。移動するか」
陽翔は百子を横抱きにして、タオルと枕を引っ掴み、そろりそろりと寝室を出る。そして以前二人で寝ていた、シングルベッドのある部屋に移動し、百子をベッドに下ろすや否や、陽翔は彼女の唇に再び噛み付く。その間も、陽翔の大きな手は、彼女のカカオ色の蕾を弾いたり、へその下の茂みを探り当て、花芽に触れるか触れないかの位置で撫で続ける。
「んっ……んー!」
いつの間にかパジャマとショーツを脱がされ、陽翔の指に、舌に翻弄されている百子は、声を漏らすまいと、タオルを口に咥える。いくら別室とはいえ、暁美に嬌声のせいで起こしてしまうのは、何としても避けねばならないからだ。
「百子のここ、まだちょっと甘いな」
ぞろりと膨らんだ蕾を、陽翔の舌が覆って、すぐにまた離され、息をふっと吹きかけられ、百子の体が跳ねる。
わざと舌なめずりをして、彼女にニヤリと人の悪い笑みを浮かべてみせ、顔をさらに紅潮させる所を見届けて、満足した陽翔は、彼女の腹や脇腹に舌を這わせ、段々とそれを彼女の体の中心へと移動させる。膨らんだ蕾を指で弄りながら、陽翔は既に潤みきっている秘花に唇を寄せた。
(暁美が産まれてから、そこばっかり舐めるようになるなんて……!)
嬌声をタオルの白に溶かしながら、百子は去年のことを思い出す。当時は陽翔に吸われても母乳がよく出ており、陽翔が興味本位で飲んだことがあったのだが、翌日になって腹痛を起こし、腹を下したという、不名誉な事件があったのだ。それ以来、陽翔は胸の愛撫を口でする事をほぼ断念し、代わりに百子の蜜の源泉をたっぷりと舐るようになっていた。
いつの間にか陽翔の指が秘花に突き立てられ、蜜壺を円を書くように撫でられ、花芽も同時に陽翔の舌が這い回るようになる。百子は幾度となく体を跳ねさせ、目の前に白い光を散らし、喉を反らせて、陽翔の両腕にしがみつき、甘い疼きをひたすら逃がす。その様子を、陽翔は口元をだらしなく歪めて、自身の歓喜を百子への口づけと愛撫に篭める。艷やかな彼女の嬌声が聞けないのは残念だが、その分体は正直に、善がっている証を、いとも簡単に示してみせるため、彼女への愛しさは募るばかりだ。
(ちょっといけないことしてる気分だがな)
「ほら、イってしまえ」
陽翔の指に襞がまとわりつき、百子が一際体を跳ねさせ、荒い息を何度も吐く。百子の蕩け切った表情は、完全に陽翔を求めているそれであり、彼は百子の耳元に唇を寄せた。
「なあ、百子……そろそろ新しい家族を迎えないか?」
てっきり耳を撫でられると思った百子だが、艶っぽい陽翔の声がするりと鼓膜を、脳を撫でて目を見開く。いつものビニールを破る音が聞こえなかったのはそういうことかと、妙に納得がいった。
(先に言おうと思ってたのに……!)
本当は百子から切り出すつもりであったが、先を越されたために歯噛みしそうになる。だが百子はふわりと微笑みながら、彼に向かって両手を伸ばした。
「……うん、いいよ、来て……。私も、赤ちゃん、欲しい……」
強請る百子に応えるかのように、すぐさま彼の熱杭がぴたりと秘花に沿わされ、何度か往復する。だが陽翔も気が急いていたようで、彼女の小さな口を唇で塞ぎ、蜜に潤むそこに、猛りに猛った熱杭で、一気に貫いた。
「んっ……! ふっ! んんんんっ!」
陽翔を迎え入れた歓喜で、百子は陽翔の背中に回した両腕に力を込める。それと同時に陽翔が低く呻いた声が、百子の口の中で溶けた。
そして何度も彼の熱杭が蜜壺をかき回し、さらに蜜と悦楽を溢れさせ、百子の意識は白い奔流に攫われていく。
「百子、ナカでイきやすくなったな。暁美のおかげか?」
陽翔の熱杭の先端が最奥に触れ、口の中で悦びを聞きながら陽翔は囁く。襞が陽翔を離すまいとうねるため、いつ果ててもおかしくないのだ。百子が暁美を産んで以来、より陽翔の形を覚えた襞は、激しく蠢いて熱杭を離さなくなってしまい、分身を宥めるのが以前よりも困難になっている。襞と熱杭が直接絡み合っているのも原因かもしれないが。
(上も下も……陽翔でいっぱい……)
声を出すのを抑えるのは、陽翔の執拗な愛撫が原因で困難を極める。とはいえ、彼に唇を塞がれ、舌を絡められている間は、陽翔が動く度に嬌声を上げることができるため、くぐもった声を陽翔に食べられていた。
「はると……! もっと、欲しい!」
唇が離れた僅かな間に、百子が陽翔は百子をうつ伏せにして枕を握らせる。百子が枕に顔を埋めたのを確認し、陽翔は彼自身を、蜜を湛えた襞の中にゆっくりと沈めた。
「……ッーー!」
どちらともなく、声にならない呻きや、互いの肉がぶつかる湿った音、結合部の水音が三重奏となって二人の耳を叩く。陽翔は百子に覆い被さり、荒い息と呻きを、散歩から帰ってきた犬のように吐き出し、百子は最奥をノックされた衝撃で体をそらした。
(声が出ちゃう……! それに、いつもより激しい!)
百子は枕カバーを強く噛んだのだが、陽翔が一際大きく呻くのを聞いてしまう。
「そんなに締めるな……! っく!」
「締めてな……あうっ!」
食いしばった歯の間から呻きが漏れ、思わず陽翔は百子の首筋にゆるく歯を立てる。彼女の体がびくんと震え、さらに襞が蠢いて熱杭に、離すまいと絡みついた。陽翔がさらに腰を推し進め、最奥を貫くので、何度めなのか不明な、白く甘い疼きが一気に弾け、百子は再び枕のカバーを強く噛む。
「百子ッ! 出るッ……! ああっ!!」
白い雷か弾け、全身が一瞬硬直したが、何度か腰を打ち付けて、欲に滾る白を残らず最奥へと送り込む。そのまま二人で横になり、陽翔は百子の背中に、振り返った彼女の唇に何度も口づけを落とし、しばし後ろから抱きしめていた。勢いと熱を失った分身がぬるりと蜜壺から這い出したため、陽翔は慌ててティッシュを掴み、彼女の股間にそれを当てる。そして百子をゆっくりと起こし、執念深く蜜壺に留まっている自身のどろりとした欲を清めた。
「陽翔、気持ちよかった……」
掠れの無い声が、うっとりと陽翔の鼓膜を撫で、唇に柔らかく湿った物が触れ、舌がするりと口腔に侵入する。優しく頬や上顎をなぞり、陽翔はそれに答えた。
「俺もだ……激しくしたつもりは無かったが、あんまり手加減できなくてごめん」
百子はころころと笑って首を横に振り、陽翔の唇を啄むようにキスをした。
「ううん。陽翔と繋がれて幸せだもん。大好きよ」
陽翔は返事の代わりに、百子の唇を舌を奪い尽くし、彼女の唾液を飲み込んだ。
「百子、俺も百子を愛してる。ずっと離さないから、覚悟しろよ?」
このままずっと抱き合っていたかったが、陽翔は百子を再び横抱きにして、忍び足で夫婦の寝室に戻り、百子を寝かせてパジャマを寄越す。いそいそと着替えた二人は、幾度となくキスを交わした。
「今度産まれるのは男の子かもしれんな」
百子の腹を愛おしげに撫でながら、陽翔はきりっとして囁く。妙に説得力を感じた百子は、目をぱちくりさせた。
「まだできてもないのに。陽翔は男の子がほしいの? 私は陽翔の子供ならどっちでも良いかな」
微笑む百子に、陽翔はニヤリと笑ってみせた。
「俺は男の子を作るつもりで百子を抱いたぞ……知ってるか? 夫婦の営みは激しい方が男の子が産まれやすいらしいぞ?」
百子はわなわなと唇を震わせる。どうやら百子が激しいと感じたのは気のせいでも何でもなく、陽翔が意図していた範疇だったらしい。
「……え? まさか、暁美ができる前は優しくしてたってこと……? それにしては激しかったと思うんだけど。そもそも赤ちゃんの性別って、そんな簡単に決まらないと思うよ?」
「試してみないと分かんないだろ。だから明日からは激しく抱くぞ。百子は優しいだけじゃ物足りなさそうだしな?」
低く艶のある声がぞわりと鼓膜を撫で、瞬時に顔を赤くした百子は、陽翔の胸板を拳でドンドンと叩く。その手を彼に掴まれ、キスを落とされた百子は、彼の流れるようなその行動に歯噛みしていたが、暁美がトイレに行きたいと起きてしまったことで霧散した。陽翔がおまるを用意し、二人を見守っていた百子だが、陽翔に愛された体は気だるさを訴え、徐々に瞼が下がってしまい、戻ってきた陽翔に頭を撫でられながら、いつしか微睡みに飲み込まれてしまった。
そして間もなく百子に愛の結晶が宿り、次の年に百子そっくりな男の子が無事に誕生した。男の子は正日と名付けられ、何かと暴走しがちな暁美のブレーキ役に奔走する羽目になるのだが、それはまた、別の話。
『茨の蕾は綻び溢れる~クールな同期はいばら姫を離さない~』(終)
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中華後宮ラブコメディ。
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