巻き戻り令嬢、最愛の旦那様を殺そうと思います

ひなクラゲ

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私では彼を救えない… 1

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「いやぁ~~~!!」


 …………………

 ……………

 ………

 救えなかった…

 どうして私は何度繰り返しても貴方を救えないのだろう…?

 もう何度目だろうか…

 貴方が処刑されるのを見るのは……



「早く死ね~~~!!」

「あんなんなっちまっていい気味だっ!」

「見てみろよ! あの姿っ、化け物かよ!!」

「あれが横暴貴族様の最後か!
 ざまぁねぇな!!」

「散々俺達を苦しめやがって!!」

 広場の中心、この処刑台の周りに人々が集まり罵声を浴びせられているのは、私の旦那様…

 いえ…… 離縁したから旦那様ね…

 私の元旦那様は今までの悪事を断罪され、これから処刑される…

 私の愛したただ1人の人…

 旦那様のサラサラな黒い髪が好きだった… 今は無惨にも皮膚ごと引きちぎられ、所々に少しの黒髪を残す程度だ…

 私を優しい瞳で見つめてくれた目は両目を潰され、熱した油を浴びせられたのか顔は酷くただれている……

 私の頭を撫ぜてくれた手は両腕とも無く…

 そして足は潰されており、死刑執行人に首に縄をつけられ引きづられて処刑台までやって来た…

「化け物……」

 処刑台に集まった人々が見世物を見る目で旦那様を見ている…


 何故…?

 どうして旦那様がこんな目に……?

 旦那様は『化け物』と呼ばれる位の拷問を受け、そして処刑されてしまう… 
 
 どれ程痛かった事か…

 どれ程苦しかった事か…

 

 私は悔しさと悲しさで涙が滲む……

 私は救えなかった…

「いやぁぁぁ~~~!!」

 私はまた何も出来ずに後悔の悲鳴をあげる…




 ~~~~~~~~~~

「どうしました? 奥様……」

 目の前に私を心配そうに見つめるメイドが居る

 また……

 また巻き戻ったのね…

「なんでもないわ、アーサ
 でもごめんなさい、今日は何日かしら?」

 いつものように日付を確認するが、これまたいつものように、旦那様が捕まってしまう前日のようだ…

 毎回同じ…

 私は何度もに戻ってきてしまう……

 せめてもっと昔に戻れれば何か旦那様を救う対策でも立てられるのに……

 何故か私はいつも、もうどうにもならないこの日に戻っている

 それでも何とか状況を変えようと何度も何度も、様々な行動を起こしてみたが結果は変わらず、旦那様は酷い拷問を受け、毎回処刑されてしまう…


 …………

 ……

 私はもう…

 疲れてしまったのかもしれない……

 何度も何度も、繰り返し繰り返し旦那様の殺される姿を見続けている事に…


『今回で最後にしよう……』

 私はそう誓う…………





 

 
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