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愛妻家の上司は傘を持たない
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しおりを挟むーーーーーside Mizukawa
あの日、
いつの間にか眠ってしまった私は、
朝、目が覚めると、係長の腕の中にいることにとても驚いた。
すでに目覚めていた係長と視線が合う。
「…オハヨウゴザイマス。」
昨日のことを一瞬にして思い出し、恥ずかしくて布団を目深にかぶる。
「おはようございます。水川さん。
今更照れるなんて、ずるいですよ。」
私のベッドに半裸の藤沢係長がいる。
サラサラの前髪で、横の髪がちょんと跳ねてる、無造作な藤沢係長に、胸がキュンと締め付けられる。
「係長こそ、朝から私を殺す気ですね。」
まさか朝まで一緒にいてくれるなんて思わなかった。
一晩だけ、一度だけという約束で肌を合わせた私たちだ。
係長が隣にいない朝が、来ないことを望んだのは自分だけれども、
事後のフォローというか、なんというか、
終わったのだから、家族の待つ家に速やかに帰っているのだとばかり思ってた。
係長がそっと私の頭を撫でてから、ベッドを降り、昨日身につけていたシャツを羽織る。
昨日の夜、私がボタンを外した紺色のストライプのシャツだ。
少しシワになってしまってるそれを見て、ハンガーにかけてあげればよかったと、そう思った。
そのままスラックスや靴下を履いて、いつもの藤沢係長になっていく。
でも、ノータイで、上着を羽織り、前髪だけ下りてる姿が、いつもよりずっとずっとセクシーだと思う。
絶対他の人には見せたくないと思うあたり、私は相当どうかしてしまってる。
でも、もうそんな姿を見ることもないし、触れ合うこともない。
こうして日常にもどっていくんだなって。
ぼーっと見てたら、時計をつけてる係長と目があう。
「そんなに見られると照れるんですが…
それより、水川さんも服着てもらえると助かります。」
身支度を整えた係長と反対に、自分は裸のままだったことにはっと気づき、ベッドの下に落ちてるパジャマを拾って急いで身につけた。
「体は、大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です。」
「…昨日は、なんて言ったらいいのか。
…本当、水川さんには感謝しかないよ。
こんな俺を受け入れてくれて、ありがとう。
すごく、すごく、夢みたいな、時間だった。」
「そんな…わたしも、です。」
「そろそろ、現実に、戻ります…
無茶苦茶なこと言うようだけど、今まで通り、君の上司で、いさせてもらえるかな?」
「…初めからそのつもりでしたから。
藤沢係長への気持ちは、変わらないです。
わたしも…今までありがとうございました。キスも、昨日も、とても、幸せでした。
また、部下としてよろしくお願いします。」
しっかりと別れを告げてくれる藤沢係長のこと、
やっぱりずるいって思うけど、やっぱり大好きだ。
ーーー
休み明けの出社は、さすがに緊張してたけど、
すでに出勤していた係長に、
『おはようございます』って、言って、
『おはようございます』と返ってくれば、それはいつもの日常。何も変わらない関係だ。
でも、家に帰りスーツを脱ぐと、現れるのは、係長の残した印。
やっぱりずるい人だ。
俺のものだと主張するように身体中に散らされた跡を見るたび、カラダが熱くなり、私ばかりあの日の夜を思い出す。
あの時嬉しかった印が、今は悔しい。
私も残したかった。私と同じ気持ちになるように。
腕に残ったその跡に、自分でキスマークを重ねた。
どうしても欲しくて、1人で慰めたこともある。
しかし、日が経つにつれ、どんどん薄くなり、消えていく係長の跡。
その頃には、あの時のことは、夢だったのかもしれないと、そう思うようにすらなった。
前髪を上げて、スーツを着て、仕事をする係長はやっぱりかっこいいと思う。
元々係長のことは、憧れと尊敬の気持ちで見てたから、その気持ちはずっと変わらない。
尊敬している係長と、一緒に仕事ができることを、私はとても嬉しく思うのだ。
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