【R-18】愛妻家の上司にキスしてみたら釣れてしまった件について

瑛瑠

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愛妻家の上司にキスしてみたら

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ーーーーー


不動産管理部営業課、藤沢係長は、39歳。既婚。3人の子持ち。
身長176㎝、休日はジムやランニングで鍛え、オーダースーツにピカピカの靴。
顔はあっさり癒し系。さらに気さくで頭も良くて話も面白くて頼りがいもあって、とにかく人気のある上司。

私は、係長の事務関係のサポートをしてる。とても説明がわかりやすく、やりやすい上に、甘い物好きの人で、時々美味しいスイーツを差し入れてくれる。
上司に恵まれてる、こんな最高の職場、他にない。


ただ、この人、すっごく奥様のことが大好きで、携帯の待ち受けは奥様の後ろ姿。
うちの奥さんがね、はよく聞く話。
会社の飲み会も、奥さんが夕食を作って待っているからと断ることができる人。
上司の機嫌を伺うつまらない飲み会より、家庭を大事にしてる、それもポイント高い。

最初はえっ…ちょっとそこまで引くわ…。と思ったけど、奥さんのことが大好きだと、恥ずかしげもなく私たちに言うので、心からそう思ってるんだなと、微笑ましく思うようになり、素敵な旦那様である係長を支え、そこまでに愛されている奥様を羨ましく思った。



いや、全くそんなつもりはなかったんだけどね。
尊敬はしてるよ。嫌いじゃない。
魔が刺したっていうか、なんでだろ?
自分でもよくわからない。


ーーー


翌日のプレゼンの為、資料作成を2人でしてた夜。
奥のフロアにはまだ人が残ってたと思う。

2人で残ってカタカタ、キーボードを打ちながら、ここの数字は、とか大きさはとか。それに、時々新しいコンビニスイーツの話しながら、各々やってたんだけど、

「水川さん、ここ、ごめん。教えてください。」

呼ばれる。
部下の私に敬語とかもなんかいい。

「はーい。」

藤沢係長のデスクに行き、画面を覗き込む。
「ここの色なんですが、水川さん、どれが一番好きですか?」
「うーん、統一感出して薄いブラウンとかですかね。でもここの壁がアクセントになってるので、白のでもいいと思いますけど?」
「そっか、白ね。部分的に薄いブラウンのアクセントタイル貼るのもアリかなー。」

サンプルと図面を見ながら、あーでもないこーでもない一生懸命話してる係長がなんだかかわいくて?
パクパクと動いている唇を見ていたら、勝手に?
思いのほか近かった彼の口に吸い寄せられるよう、キスをした。
ちゅっと、一瞬のスタンプキスだったけど。


思ってたより柔らかかった。
けど、私はなんでこんなことを…


「あ、ごめんなさい…あれ?なんか、、、申し訳ありません。」


びっくりして動きもまばたきも止めてしまった係長。
おーい。
目の前で手を振る。

しまった、これは逆セクハラで訴えられるやつだろうか。


「…水川さん…もう一回、してもいいですか?」

静かに係長が呟く。

「えっ…?」
まさかのありだった?


「…いいんですか?」

「はい…お願いします。」

よくわからないけど係長の許可も取れたので、
もう一度もう少し長めに唇を押し当てる。

やっぱり柔らかい。気持ちいい。


言っておくがわたしにも彼氏はいる。欲求不満とか、そういったモノではないと思う。
ただ、赤ちゃんや小動物にキスをする、そんな感覚に近いと思う。

「…係長、突然すみませんでした。蚊に刺されたとでも思って、忘れてもらえますか?」
「いえ、こちらこそ。…じゃ、仕事の続き、しましょう?」


そう軽く笑って、カタカタとタイピングをする係長は、慣れてるの?意外にプレイボーイ?
なに考えてるの?
あまりにも普通すぎて、こっちがドキドキする。
思いがけず、誰にも言えないやましい秘密が出来てしまった。



でも、
それから係長とは時々、キスを交わす関係になった。

本当に普通通りなのに、
2人で仕事してる時、物欲しそうな顔をしてるような気がして、
またうっかり、してしまった。
わたしも話をする時に、係長の唇を見てたかもしれない。人のせいにできない。


そもそも、藤沢係長が好きとか、奥さんと別れてほしいとか、そんなつもりは全くない。
どうしよう。自分から仕掛けてしまったことだけど、引き返せない。
唇が触れ合うだけのただのキスだけっていうのが、色々な罪悪感を薄れさせてる。



「ね、キス、きもちいい?」

付き合って1年になる恋人とキスをしてみる。
同じように、ちゅっと唇を合わせるだけのキスだ。

「気持ちいいよ。でも、もっと気持ちいいこともしたいけど。」
そういって彼はわたしの唇を甘噛みしながら次第に舌を絡ませる。
体がこれからのことを想像し、熱く、反応する。
恋人とのキスやそれ以上は、とても好きだ。
当たり前に気持ちいい。

係長とのキスは、また、ちょっと違う気持ちいいだなって、ベッドに倒れながら思った。





次の日、資料を取りに行くついでに、書棚に隠れてやっぱりキスをするわたしと係長。

あいかわらず、唇を合わせるだけのスタンプキスだ。
舌とか唾液とかそんなものは存在しない。

「係長、わたしとのキス、気持ちいいですか?」
「そうだね。それは、とても。」
「奥様とはキス、しないんですか?」
「するよ。でも、水川さんとのキスも気持ちいいんです。ダメですか?」
「いいかダメかって言ったらダメです。
 でも、わたしも気持ちいいのでありです。」

いや、なしだろう。
目の前で先輩と係長が同じことをして同じ話をしていたら、間違いなくツッコミを入れる案件だ。


なんでやめられないのか。
色々と自分なりに考えてみた。
たぶん、恋人とか奥さんとか、キスして当たり前の関係の人とするキスじゃなくて、
 このままキスしてもいいんだろうか?
そう、戸惑いながら、ゆっくりと唇を合わせる、まるでファーストキスのような、付き合う前のキスのような、そんなドキドキ感が、
この、決して〝そう〟なってはいけない相手とのキスに似ているのだと思う。

したいけどしてはいけない、でも欲しい。
ダメなのはわかってる。どうしよう。しちゃう。あーどうしよう。みたいなもどかしさと、見られるかもしれないスリリングさ。
私はまるでゲームのような感覚を楽しんでいた。
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