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季節は巡り、また巡る
しおりを挟むーーーーーside Takamiya
季節が巡り、
次に俺たちが会えたのは、4年後だった。
あれから1年に一度、すべての始まりの11の月にメールを交わし、ようやく今年、2人の都合があったのだ。
12月の年の瀬、チーズケーキが絶品らしい広島のカフェで待ち合わせだ。
「ごめんなさい、遅くなって!」
グレーのコートを羽織った彼女が、俺の姿を見つけて駆け寄る。
「お久しぶりです。ごめんなさい。毎年わたしが、都合悪くて。しばらくバタバタしてて。」
背中まであった長い髪は、パーマをかけて、肩上のあたりでふわふわと揺れるボブになってる。
それでもかわいらしさは健在だ。
「構わない。また、会えたんだから。
もりなぎ、元気そうでよかった。」
「ふふっ。高宮さんも。」
席に座って、ホットコーヒーを
彼女はカフェラテとチーズケーキを注文する。
「で、どうしてた?」
そう尋ねると、彼女はとっておきの笑顔を浮かべて、
「見て!」
ググッと俺の方に距離をつめ、スマホの画面を見せる。
うさ耳の彼女と、彼女の横に、彼女をちっちゃくしたような、猫耳のちっちゃな女の子。
「えっ?まじ?」
「うん、まじ。かわいいでしょ。やっぱり女の子でした。ふふっ。
名前はみやびだよ。『みやみや』だよ。」
「かわいー、やっぱ、なぎに似てんな。うち、男ばっかりだから、女の子憧れる。今、何歳?」
「3歳。」
「3歳かー、、、、、」
「そうなの。あの、高宮さんと会ったあと、妊娠がわかって、女の子だったらって話してたじゃないですか。そしたら本当にみやびが生まれて。」
「ちょっ、ちょっ。まっ、待って。」
まさかの衝撃発言。
いち、に、さん、頭の中で指を折って数える。まさかの気持ちが混乱してる。
「一応聞くけど、俺の、子じゃ、ないよね?」
声を控えめにして、そう、聞く。
「おっ、生きてるうちに聞くとは思わなかったサイテーなセリフベスト10に入るやつ!」
「まーじーめーにー!」
心臓バクバクで動揺しまくりの俺は、もりなぎの目をじっと見つめる。
少し目を逸らして、彼女がボソッと小さな声で話し始める。
「…違いますよ。
高宮さんと会ったのは、大丈夫な日で、あのあと、夫と、何度か…あったので……」
「そっか…
俺、あん時、ほら、一回ルール破ったから…。お前が違うって言うなら、違うのか。だよな…そっか。
…ごめん。俺もまさかこんなセリフが口から出るとは思わなかった。」
「血液型も間違い無いですし、間違いなく、わたしと夫の子です。安心してください。」
「本当にごめん。」
「…でも、もし、万が一、そうだって言ったらどうしたんですか?」
カチャッと、チーズケーキのお皿にフォークを置いて、彼女は問う。
どきっ、とした。
違うと聞いて、少し残念に思ってしまった気持ちを悟られたのかと思った。
俺と彼女の手をとってはしゃぐことさっきの女の子を、一瞬思い描いてしまい、それがとても幸せだと思ってしまったからだ。
あり、だ。でも、
「まあ…そうだな、もし万が一そうだったとしても、、どうもしないよ。
お前の子供であることは間違いないんだ。お前をさらにミニチュアにしたみたいだもんな。かわいくてしょうがないよ。
子供には罪はないし、お前がダンナさんとの子供として育てるのも間違ってない。
もしお前がダンナと別れるっていうなら、…認知もしたいと思う。俺と一緒になりたいって、言ったら、言ったら…どうするかー。
ちょっと今すぐ無理…こればかりは結論でないや。俺らだけでどうにかなる問題じゃない。あー、でも、んー、どうしたいか…」
「…真面目に考えすぎ。
大丈夫です。ごめんなさい、いじわる言いました。でも、ありがとう。」
ペコっと頭を下げる彼女。
「で、今日は、、どうしますか?
私は、同期のランチ送別会が明日あるので、今から朝まではフリーです。」
色々と考えを巡らしてる俺をよそに、さっと切り替えて今後のスケジュールについて話をする。
「うん、俺は、広島のオーナーさんとの商談、さっき終わったとこ。その後食事を一緒にするという架空の予定で、明日帰るスケジュール。」
「すごいね!そんな仕事が重なる偶然あるんだ!」
「ねーよ。
このためにこの仕事とったの。スーパー営業マン、なめてんじゃねーぞ。もちろんまとまった。褒めて。」
「そっか、頑張ってるんだ。
お忙しいところ、ありがとうございまーす!」
「はいはい。
じゃ。そろそろ行くか。」
彼女のお皿に一口残ったケーキをパクリ、
そして、カップに残ったコーヒーを啜り、立ち上がる。
「わたしのケーキ…!」
「残しておいてくれたんだろ??うまかった。」
「美味しかったから、大事に食べてたんですっ。」
なんとなくお互いの手を取り合い、パーキングまで歩いた。
そこまでの短い距離の中で、あ、あれかわいい、おいしそう、あれなんのお店だろ??
キョロキョロいろんなものに興味を持つ彼女を見ていたら、まるで、デートみたいだなって、すごく楽しくなった。
停めてあった車に乗り込む。車で気づかれることもあると思い、レンタカーを借りた。こういったところを認識するたび、いわゆる不倫関係にあるという事実への背徳感が心をざわめかせる。
「今日予約したお店ね、すっごく美味しそうな創作料理の居酒屋でね、
洞穴が席なの!おしゃれーー!」
「ごめ、ちょっと意味わかんないんだけど…」
俺の心のざわつきなんて気づかず、助手席で楽しそうにきゃっきゃしてる彼女は、相変わらずきれいだ。
彼女のいうおしゃれな洞穴とは、各個室が、まるでかまくらのようなドーム状になった席だった。
独特な説明すぎてわからん。って、彼女の頭をペシっと叩くと、なぜか嬉しそうに笑って、抱きついてきた。
美味しい食事に舌鼓を打ち、仕事のこと、プライベートなことを報告し合う。でも、やっぱり家庭のことは、やっぱりお互いに避けてしまう。
「おいしかったねー。
アボカドのやつ、あれ、良かった!今度作ろう!
高宮さんも車じゃなかったら飲めたのにね、残念。」
「おまえは飲み過ぎ。」
店を出て、時間はまだ20時すぎだ。
「どっか、寄る?」
そう、聞くと、俺の服をぎゅっと握って、フルフル頭を振る。
さっきまでテンション高かった彼女が、突然静かになって。
今日会うことが決まって、メールで段取りして待ち合わせをするまでは友達とアポを取るようなそんな感覚でやりとりできてたのに…
途端、これからなにが待っているのかを実感してしまい、緊張する。
「ちょっと早いけど、行こっか…」
彼女が望んだのは意外にもラブホテル。
外資の五つ星ホテルでも考えていたのだけれど、郊外にあるバリ風のラブホテルをリサーチして、送ってきた。
URLを開くとソレで、仕事中に開けたもんだから、背後を気にして場所を頭に入れ、メールと閲覧履歴を即刻削除したのは記憶に新しい。
ホテルに車をつけ、ロビーに入ると、一昔前のラブホの印象は全くなく、広くて綺麗で、誰もいないフロアの真ん中にパネルがある。
やっぱりラブホテルなんだなと思いながら、元々五つ星ホテルの予定だったので、迷わず一番いい部屋をタッチする。
誰にも会うことなく部屋に入ると、落ち着いたダークブラウンでまとめられたリゾート風の広めの部屋。
カーテンがかかっているけど、奥に大きな窓もある。
「最近のラブホってすごいんだなー。へたなホテルの部屋より全然ありじゃない?」
「だよねー、綺麗だし、お部屋もお風呂も広いし、アメニティとかドライヤーもしっかりしたやつだから、泊まりで女子会したりするんだって!ここは去年できたらしくて、全室オーシャンビューなんだよー!」
「へー。すごいな、なかなか勇気のいる女子会だけどな。」
机の上を見るとアダルティなグッズのパンフレットに、チャンネル案内。部屋の奥にあるキングサイズくらいあるベッドを見ると、ここはやっぱりラブホテルだと認識できる。
「どうする?」
「そ、ですね…じゃ、わたし先にお風呂入ってもいいですか?」
「うん。ごゆっくり。」
彼女が荷物を持ってお風呂のある方へ姿を消し、
俺はひとつ大きく息を吐き出した。
4年ぶりの再会だ。
思いのほか緊張しているんだろうか。
この場所に、かもしれないけれど…
俺はカーテンのかかっている窓の方へ足を進める。
普通ラブホテルには窓がなく、男女のそれをするためだけの窮屈な部屋というイメージだ。
人目を忍んでこんなところに来ておきながら、窓の外が気になった俺は、
シャッ、とカーテンを開ける。
天井まである大きな窓に、その向こうはウッドデッキのテラスになっている。
テラスには、南国調のラタンソファとテーブル、奥には妖しくブルーに光る、露天風呂が備え付けられていた。
彼女のいうオーシャンは、暗くて見えなかったけど。
すっごいな。
外に出てラタンソファに座り、先ほど寄ったコンビニで購入したハイボールを開ける。
12月だ。コートを着ているものの、さすがに寒い。
お酒で気分を落ち着かせようと思ったのだが、そこで熱燗にすれば良かったと思った自分が、あれから歳をとったなと感じさせられる。
ふと、空を見上げると、目隠しで囲われた狭い空に、星がキラキラと輝く。
それはまるで、あの時の夜景のようで。
あれから4年経ったんだ。
そう、しみじみ思う。
4年前、あの日の翌日、案の定、出社したばかりの俺に、ひっついてきたのは後輩の花村だ。
『高宮主任ー。こないだの夜、どうだったんですかー?』
『どうって?』
『巨乳のお姉さん。持ち帰ったんですか?』
『バカ言うなよ。そんなわけないだろ?』
『でも、あのあと一緒だったんでしょ?肌艶いいですよー。』
『…まぁ、それはそうだな。』
『ほらほらー!で、どうなったんですか??』
『あのあと、上のラウンジで飲んで、昔話して、帰ったよ。ほんとそれだけ。残念だけど何もなかったよ。』
『ホントですかー?
主任もあのひとも、満更でもなさそうだったのに、残念です。』
『お前、俺の家庭をどうしたいんだよ…』
『俺は主任が幸せならいいんす。いつも遅くまで仕事して、俺らのフォローもしてくれて、家庭も大事にされて。気の抜けるところがあるのかなって。
なんかこないだ、なんとなく様子が違ってたから、あのひとはなんというか、〝あり〟なんだろうなとおもって。』
『お前、俺のこと好きすぎだろ…
昼飯奢ってやるから、諸々黙っとけよ。』
『ゴチです。承知しました!
で、どうだったんですか?』
『なんもねーよ!』
一目見たか見てないような後輩にも、見抜かれるような、そんな状態で。
俺は、あの日、どんな顔で彼女を見ていたのだろうか。
「お先に頂きましたよー。」
窓が開く音と俺に近づく彼女の声に振り返る。
「うわー、すごい。ウッドデッキも露天風呂もあったんだ!っていうか、さっぶ…」
ラブホテルならではの、バスローブ姿の彼女。
髪から落ちるしずくが胸の谷間に落ち、つたう。
ゴクリと唾を飲む。
「寒いから、早く中入ろう」
俺は着ていたコートをさらに彼女にかけて、部屋の中へと促す。
「じゃ、俺も入ってくる。
外、星が綺麗だったよ。外出るならちゃんと髪の毛乾かしてあったかくして出るんだよ」
「高宮さん、お母さんみたい…」
お風呂は洗い場が広くて、浴槽なんて3人くらい入れそうなジャグジー付きだ。TVモニターがあって、電源をつけると、エッチな映像が流れる。
そうだ、ここはそういったことをする、ラブなホテルだった。
浴室の扉はもちろん透明なガラスだし。
少し冷えた体に熱いシャワーがしみる。
4年ぶりに彼女を抱くのかと思うと、やっぱり緊張してしまう。はやく、この腕に抱きたい。抱きしめて、安心したい。
体を温め、お風呂を出ると、彼女はベッドに入って、シーツにくるまってる。
「なーぎ。どしたの?寒い?眠い?」
タオルで頭を拭きながら、ベッドに近づくと、無言でくっついてくる彼女。
「なんかドキドキしてて。どうしたらいいかわかんなくて…」
「さっきまでめちゃめちゃ普通だったじゃん。」
「普通に見えるようにしてたんです。
4年ぶりに、会って、どんな顔して会っていいのかも分からなくて、でもお泊りが近づいてくるにつれて、なんか緊張してしまって。高宮さんはなんか普通だし。」
「俺もこう見えて緊張してるんだよ。
さっき真冬の外でハイボール一本空けたよ。お酒の力借りちゃってるよ。なぎほどじゃないけどね。」
「本当に、会えるの、楽しみにしてたの。
最初の1年、次の11月まで家庭を大事にするって約束したのに…みやびがお腹にいたのに、雅季さんのこと考えた。ダメだし、ありえないし…口にしちゃいけないけど…みやびが雅季さんの子供だったらってことも考えた。
本当にごめんなさい。
夫にもみやびにもこんな母親、申し訳なくて。
みやびがちっちゃいのもあったんだけど、次の年も、その次も、忙しくて、正直、雅季さんに会えなくて、少しホッとしてた。」
彼女を引き寄せ、抱きしめる。
「なぎ、いいよ。もう。
大丈夫だから、いろんなこと考えないで。
俺は今日、なぎに会えて嬉しかったよ。それが来年でも、再来年でも、10年後でも嬉しかったと思う。
俺たちって、そういうことでしょ?
なぎも、今日俺に会って嬉しいって思った?」
「…うん。もちろん。」
「それでいいじゃん。また会えたことを喜ぼうよ。」
「ありがと。雅季さん。」
彼女もずっと不安だったんだ。
俺と会って、あんなことになって、そのあと妊娠が判明すれば、きっと分かってても複雑な気持ちだっただろう。
相談できる人なんてもちろんいない。
この秘密を今日できる人間なんてお互いだけだ。
辛かっただろう。
初めてのことばかりで不安の中、身体だけがどんどん変わっていって…
1人でいろんなこと考えて、頑張ってきたんだ。
俺が手を差し伸べるのは違うって分かってるけど、そんな不安な彼女をわかってあげることができなかった自分が、とても悔しく思う。
「ところでなんで今日はラブホだったの?」
俺の腕の中に閉じ込めた彼女は相変わらず小さい。首筋に唇を這わせると、くたっと力が抜けるところも本当にかわいい。
後ろから抱きしめ、彼女を堪能しながら、ずっと気になっていたことを彼女に問う。
「あっ、、普通のホテルより、人目気にならないでしょ?名前も、書いたりとかしなくていいし。」
「堂々としてれば普通のカップルに見えるから大丈夫だよ。広島に顔見知りの知り合いなんていないし。」
「今日のオーナーさん、とか??」
「俺らはともかく、地元のホテルに地元民が泊まるなんて…流石に気まずくて、むしろお互いスルーするわ。」
「そーだね。
でも、ラブホテルって、いけないことしてる感じがするでしょ?
それに、、、いっぱい声出しても大丈夫でしょ?」
また、だ。
彼女はそうやって俺を誘う。
かわいいくせに、時々計算じゃないかってくらい、俺を刺激する。まあ、計算でもなんでも、もう、どっちでもいいんだけど…
「なぎ…」
そう呼んでバスローブの紐に手をかける。
「あ、待って。心の準備とか…」
「そんなんいらない。」
「みやび産んだから、お腹ポヨンってなってるかも…おっぱいも、前みたいじゃないかも…」
「大丈夫、この間もポヨンだったから…」
「もうっ!」
バシッと彼女が俺の胸をパンチする。
「意外に痛い…」
「育児で鍛えてますからね!」
笑い合って改めて抱き合いキスをする。
ローブの紐を解き、なぎの体からバスローブが落ちると…
俺は息を呑む。
「…どうかな…?」
少し頬を赤くして、照れ臭そうに言う彼女。
彼女はネイビーのブラとショーツを身につけていた、
しかし、レースでできたそれは、身体を守るものではなく、魅せるもの。
相変わらず豊かな胸は、それでも申し訳程度に隠れているが、中央の切れ込みから尖った先端が顔をのぞかせている。
ショーツも同じようなレースがフロントにちょこんとあるが、あとはほぼリボンになってる。
いわゆるセクシーランジェリーだ。
「なぎ、これ。」
「恥ずかしいからあんまり見ないで。
…こないだ、4年前に、エロエロなわたし、次回見せますよって言ったから、どうしようかと思って。それで…」
「なぎは俺といれば充分エロエロになるから大丈夫だよ。
ずっとその下着身につけてたの?
昼間から?ずっと?なにそれ、すごい興奮するんだけど…」
「さすがにさっきお風呂から上がった後に着替えたんです!」
「でも…その割には…」
いきなりショーツの真ん中に手を伸ばす。
あれ?
直接皮膚に触れる感触。
真ん中にスリットが入っており、すでにそこから滴らせている。
しかもスリットの一番上のあたりにはパールが飾られていて、その下の秘芽が刺激される仕様のようだ。
「なにこのえろい下着。お前、ずっと期待してたの?」
「そう、です。
早く抱いて欲しくて、ずっとムズムズしてて。」
「で、こんなに濡らしてたんだ。ひとりで。」
「はい…」
「なぎ、やっぱお前、最高。ありがとう。すごく綺麗で、俺やっぱり死にそう。
もう、どうしてやろうかな?」
「あたしより、先に死なないでね。
…優しくしないで。この間みたいにメチャクチャにしてほしい。お願い。」
お互いの唇が合わさり、自分のローブの紐を解き、直接、彼女の肌とを合わせる。
あとはもう、朝が来るまで、本能のままに、求め合うのみだ。
また季節がめぐり、いつか俺たちは再会するんだろう。
ひたすらに求めあい、罪を背負う夜を過ごす。
きっと。
何度でも。
4年前__________
『ただいまー!』
『おかえり!お疲れ様ー。』
私のネコ柄のエプロンをしたままの彼が、玄関まで迎えに来る。
そのまま迎えにきてくれた彼の胸に飛び込む、
『おっ、今日は肉じゃがですね??』
『せいかいー。』
私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
『神戸、どうだった?』
そう聞きながら私の手からキャリーを受け取る。
『いい式だったよーー。
あたしたちの結婚式…思い出しちゃった。
新婦さんまだ若いから、リボンとかフリルのドレスがすっごく可愛くってね。
でもね、あなたの選んでくれた、あたしのあのドレスが世界で一番素敵だと思うんだー。』
『あの青いドレスね。
一目見て、お前に絶対似合うと思ったんだよねー。』
『もう一回着たいなー。でも次は着物もいいなー。』
『誰と結婚式するんだよ。』
『えへっ。
でもねー、披露宴、お酒飲みすぎて、二日酔いになっちゃってね、具合悪くて寝てたんだー。だから、あんまり観光できなかったの。
今度は一緒に神戸、行こう??』
そう言って、彼の腕にしがみつく。
『そうだな。そん時は、おまえ、酒、禁止な。』
『えーっ!』
ひっつきながらリビングに向かう。
3年前に結婚した彼は、設計事務所に勤めてる建築士。今のおうちも彼の設計だ。
出会いは会社の営業社員からの紹介で、私の一目惚れだった。
私の押せ押せ猛アタックに彼が折れて、3年付き合ってめでたく結婚した。
今じゃ彼の方が私のことが好きでたまらない、おしどり夫婦だと思う。
料理の好きな彼は、時々、息抜きだって、ご飯を作ってくれる。
今日のおかずの肉じゃがは、私が作るのより美味しい。
きっと私の帰宅に合わせて、あったかい美味しい料理がテーブルの上に並んでる。
愛し愛され、毎日が本当に充実して幸せだなって思う。
お土産の神戸ワインは冷蔵庫で冷やして、食後に、これまたお土産のフランスパンとチーズで2人で楽しもう。
そして酔っ払って2人で寄り添って寝よう。
さすがに今日は無理だから。
私の頭いっこぶん、背の高い彼。
私の頭を撫でるおっきな手。
少し低いテノール。
そして、子供のように笑う、彼の笑顔が、あの人に似てるなんて、
絶対に内緒だ。
ーーーーーfin
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