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introduction
10年ぶりの再会
しおりを挟むーーーーーside Man
取引先で仲良くなった奴の結婚式。
よく一緒に飲みにいく後輩と出席した。
15才くらい年下の女の子と結婚するらしいって。
お前すごいな!よくやったなー!
どうやって落としたんだよって、飲んだのは2週間前だった気がする。
まさかと思った。
こんなところにいるわけがない。
並んだ受付の先にいた彼女には、すぐ、気がついた。
10年ぶりくらいに目にした彼女は、多少丸くなったような気はするが、あの頃のままで。
でも、まさか、なんで。
そんな思いで自分のネームプレートのある席についた。
「一服行きませんか⁉︎」
新婦さんがお色直しに中座したタイミング、
後輩が立ち上がる。
残された新郎を見ると学生時代の友人たちか、飲んでは注いでの応戦で盛り上がってる。
「いーね、そろそろ行きたかったんだよね。」
嘘だ。
会場に入ってからタバコのことなんか忘れてた。
席を立つ俺の視界の端に、ちょうど扉を出ていく彼女が見えたんだ。
「ごめん、ちょっと電話入ってるから、電話してくるわ。」
扉を出て、スマホを手にとり、そう喫煙所に向かう後輩に告げる。
そして、そのままスマホは胸ポケットにしまい、レストルームのあるほうに向かう。
そもそも。トイレじゃないかもしれないし、
偶然出会う確証なんてないけど。
この時の俺は、何も考えてなくて、
ただ、今日、俺がここにいるってことを知って欲しかったんだと思う。
角を曲がったところで、
深いブルーのドレスと、ネイビーのハイヒールを履いた彼女の後ろ姿を見つけた。
「 」
つい、あの頃の呼び名で声をかける。
反射的に振り向いた彼女は、大きな目をまん丸にして、
「うそ…」
きっと、そう小さな声でつぶやいた。
声をかけたものの、特に話題は用意してもなく。
「久しぶり!どしたの?式、友達??」
「あ、新婦が昔の後輩で…」
「びっくりだね。10年ぶりくらい??」
「そうですね…」
あれ?
テンションひっくい。
俺に声かけられたの、嫌だったんだろうか。
「何?なんか大人しくない?」
「いや、とりあえず、めっちゃ、びっくりしてます。ごめんなさい。お久しぶりです。お元気そうで何よりです。」
なんだ。よかった。嫌がられてはなかったみたい。
とりあえずほっとして、
ポンポンって、あの頃みたいに頭を軽くたたく。
「ちょっ、ちょっとー!セットが崩れるじゃないですかっ!
せっかく可愛くしてもらったのにー。」
さっきまでのちっちゃい声じゃなく、
あの頃耳に残ってる声のテンションと顔で、俺を睨む。
「それそれ!お前変わんないねー。」
「普通、きれいになったとか言うもんじゃないんですか??」
俺の前でぷりぷりしている彼女がいる。
懐かしい。
10年ぶりなんて感じさせない昔の感じ。
ハイヒールを履いても、頭ひとつちっさい彼女の頭に、もう一度ゆっくり手を置いたまま、
「…でもまさかまた会えるなんて思わなかった。」
そう、
今の率直な素直な思いを口にした。
しばらく間が空いて、一度俯いた彼女は顔をあげた。
「あ、わた
彼女が何か言いかけたその瞬間、
「高宮さん!そろそろ戻りますよー!」
俺を呼ぶ後輩の声。
「あ、そうだね、新郎新婦戻ってきちゃうかも…」
そう、彼女が言って、
「じゃっ…」
「…おう。」
それで、感動の再会は終わりを迎えた。
「さっきのだれですか?」
「前の支店の後輩。」
「へー、おっぱい、大きかったっすね。元カノとかですか?」
「アホか、どこ見てんだよ。違うよ。全然、そんなんじゃなかったよ。」
彼女は何を言いかけたんだろう。
俺に何か言いたいことがあったのか?
いや、自惚れすぎだろう。
そこ、期待するとこじゃないだろ。
10年ぶりの再会というのは、物事をドラマチックにしてしまうようだ。
期待ってなんだよ。
月9とかのドラマじゃないんだよ。
その後、披露宴が終わるまで、一度も彼女と目が合わなかった。
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