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精霊メーティ
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夜になってもみさが帰って来ない為、アルテは心配になってきた。
そこへ妖精がやって来て、ドアをすり抜け部屋へ入ってくる。
「あら?確か、この妖精は泉の…?テティ様の使いだったかしら?」
妖精はアルテに水色の石の欠片を渡した。
「これは、連絡用の石ね。ミサに何かあったのかしら?確かこうして…。」
そう呟くと、アルテは石を掲げて月の光に当てる。すると映像が映し出され、テティが現れた。
「皇后アルテ、そなたに大事な話がある。そなたの息子シリウスは、明日帰って来ると聞いた。明日、シリウスと2人で泉に来て欲しい。勿論ミサもこちらにいる。」
そう言うと映像は消え、石も消えた。
「…どういうこと?」
アルテは不思議でならなかった。
(精霊テティ様と無事契約出来ても、出来なかったとしても、こちらに帰っている筈だし…ミサに何かあったのかしら……?)
アルテは何だか胸騒ぎがして、明日シリウスが来るのを待たず、フェリスを呼んだ。
「アルテ皇后、お呼びでしょうか?」
「フェリス、直ぐにシリウスに伝えて。」
事情を話し、手紙を託した。
*****
暫くして、シリウスはアルテの元にやって来た。シリウスはフェリスから連絡を受けると、直ぐに残りの仕事に取り掛かり、1時間で終わらせて来たのである。
「シリウス、早かったのね。」
「あんな連絡貰ったら、直ぐ来るに決まってるだろう?で?みさは?」
「森の泉に居るわ。テティ様から連絡が来たの。」
「じゃあ母さん、今すぐ行こう。」
「シリウス、少し待って。心配なのも分かるけど、テティ様は明日と言っていたわ。何か事情もあるのかもしれないし…。契約者に今までこんな事はなかったもの。もう夜も遅いし、今夜はゆっくり休んで明日に備えましょ。」
「ゆっくりって言ったって…明日、夜が明けたら直ぐに行く。」
(みさ・・何があったんだ?心配だ…無事で居てくれ。俺のところに帰ってくる…よな?)
シリウスも何だか嫌な予感がしていた。
「分かったわシリウス。明日、夜が明けたら直ぐ森に行きましょう。」
―夜明け―
アルテとシリウスは夜が明けるのを確認すると、直ぐに扉を出し、森の泉の前に来ていた。
夜明けという事もあり、辺りはまだ薄暗く、泉だけが少しの光を放っていた。
シリウスはみさの事が頭から離れず一睡も出来ていない。
「シリウス、昨日はちゃんと眠れた?」
アルテは心配そうに聞く。
「否…みさの事を考えると一睡も出来なかったよ…」
「そう…そうよね。心配だものね。シリウス、しっかりね。」
そう言うと、アルテはシリウスの手を握り、指輪を取り出して泉を照らした。すると、泉の精霊テティとみさが姿を現した。みさの様子が何だか違う。テティに寄り添っているみさの姿は、テティと同じ格好をし、淡い白い光に包まれている。まるで、テティと同じ精霊の様な姿だ。2人はその姿に見入ってしまい、固まってしまっていた。
…暫くして、アルテがはっとし、
「テティ様、失礼致しました。アルテと息子のシリウスにございます。早くから失礼致します。」
頭を下げ、続いてシリウスが
「テティ様、ご無沙汰しております。アルテの息子、シリウスでございます。」
「うん、良く来たな。話というのは…」
テティが言いかけたところで、みさはテティの袖を引っ張る。
「ん?メーティ、大丈夫?あなたは無理せず休んでいても良いのよ?」
テティは優しく言う。みさは首を振り、
「私がちゃんと…伝えないと…言わないといけないと思うから…」
みさは、何かを決心したような顔をしていた。
「そう、分かったわ。私は見守っているわね。」
テティは優しく微笑み、みさの頭を撫で、みさの少し後ろに下がった。シリウスはみさから目が離せなくなっている。
(みさ…なのか?何だか雰囲気が違う……それに、メーティって呼ばれていたような……?一体何が起きてるんだ??)
その姿に、シリウスはどうしたら良いか分からず、不安になるばかりだった。みさは、ゆっくりと話し出した。
「シリウス…話があるの。私ね、この泉で精霊テティと契約するつもりだったんだけど、話をしていくうちに泉の精霊テティが、私の本当のお母さんだったって分かったの。でね、私の本当の名前はメーティ…お母さんが付けてくれた名前なの。」
「ええっ!?テティ様がみさのお母さん!?名前はメーティ…。そうなのか?みさは…精霊??」
シリウスは驚きを隠せない。
「そうなの。…私は精霊で、名はメーティ。私の入っていた籠に示された"M"という文字は、名前の頭文字だったってわけ。今まで"みさ"って呼ばれていたのは育ての親が付けてくれた名前。どっちの名前も私には大切なものなんだけど、メーティって言われた時、素直に受け止められたの。私は"メーティ"だったんだって。」
「そっか。みさ…否、メーティにとってはどっちも大切な名だもんな。それで、メーティ?いつ帰ってくるんだ?メーティが精霊なら、これ程皆を納得させる理由はない。だから、安心して帰っておいで?」
シリウスは優しく言う。
「………」
メーティは、黙ってしまう。
「メーティ?どうしたんだ…?」
シリウスは不安になってきた。心配そうな顔でメーティを呼ぶ。すると、メーティはまた、ゆっくり話し出した。
「…シリウス、ごめんなさい。私、帰れない…帰れないの…!精霊は人間と結婚出来ないの。それから私は"ココ"から出る事が出来ないの。」
メーティの目には涙が浮かんでいる。
「そんな!何か方法は無いのか??母さんも何か言ってくれ!」
シリウスはどうして良いか分からず、アルテを見るが、アルテも首を振り言った。
「シリウス…精霊と人間とじゃ住む世界が違うのよ。一緒に居ようとしても、必ずどちらかは傷つくわ。あるいはその…2人とも。残念だけど、結婚は諦めなさい。」
「そ……そんな事って…」
シリウスはその場に崩れ落ちてしまった。
アルテはそんな息子をゆっくり起こし、
「シリウス、帰りましょう。
テティ様、メーティ様…事情は分かりました。テティ様とメーティ様が20年振りに出逢えたのは本当に喜ばしい事です。ですが、シリウスは本当にメーティ様を愛していました。ですので本当に残念でなりません。精霊と人間では寿命も違いますし、仕方の無いことだと思います。禁忌を侵してまで一緒になることもしないでしょう…。」
アルテは、残念そうに言い、
「アルテ、申し訳なかったな。シリウスにも申し訳ないことをした…」
テティも、何と言ったら良いか分からないという表情をしていた。
「テティ様、お心遣いありがとうございます。」
アルテは頭を下げ、シリウスを連れて帰った。メーティはずっとシリウスを見詰めている……
そこへ妖精がやって来て、ドアをすり抜け部屋へ入ってくる。
「あら?確か、この妖精は泉の…?テティ様の使いだったかしら?」
妖精はアルテに水色の石の欠片を渡した。
「これは、連絡用の石ね。ミサに何かあったのかしら?確かこうして…。」
そう呟くと、アルテは石を掲げて月の光に当てる。すると映像が映し出され、テティが現れた。
「皇后アルテ、そなたに大事な話がある。そなたの息子シリウスは、明日帰って来ると聞いた。明日、シリウスと2人で泉に来て欲しい。勿論ミサもこちらにいる。」
そう言うと映像は消え、石も消えた。
「…どういうこと?」
アルテは不思議でならなかった。
(精霊テティ様と無事契約出来ても、出来なかったとしても、こちらに帰っている筈だし…ミサに何かあったのかしら……?)
アルテは何だか胸騒ぎがして、明日シリウスが来るのを待たず、フェリスを呼んだ。
「アルテ皇后、お呼びでしょうか?」
「フェリス、直ぐにシリウスに伝えて。」
事情を話し、手紙を託した。
*****
暫くして、シリウスはアルテの元にやって来た。シリウスはフェリスから連絡を受けると、直ぐに残りの仕事に取り掛かり、1時間で終わらせて来たのである。
「シリウス、早かったのね。」
「あんな連絡貰ったら、直ぐ来るに決まってるだろう?で?みさは?」
「森の泉に居るわ。テティ様から連絡が来たの。」
「じゃあ母さん、今すぐ行こう。」
「シリウス、少し待って。心配なのも分かるけど、テティ様は明日と言っていたわ。何か事情もあるのかもしれないし…。契約者に今までこんな事はなかったもの。もう夜も遅いし、今夜はゆっくり休んで明日に備えましょ。」
「ゆっくりって言ったって…明日、夜が明けたら直ぐに行く。」
(みさ・・何があったんだ?心配だ…無事で居てくれ。俺のところに帰ってくる…よな?)
シリウスも何だか嫌な予感がしていた。
「分かったわシリウス。明日、夜が明けたら直ぐ森に行きましょう。」
―夜明け―
アルテとシリウスは夜が明けるのを確認すると、直ぐに扉を出し、森の泉の前に来ていた。
夜明けという事もあり、辺りはまだ薄暗く、泉だけが少しの光を放っていた。
シリウスはみさの事が頭から離れず一睡も出来ていない。
「シリウス、昨日はちゃんと眠れた?」
アルテは心配そうに聞く。
「否…みさの事を考えると一睡も出来なかったよ…」
「そう…そうよね。心配だものね。シリウス、しっかりね。」
そう言うと、アルテはシリウスの手を握り、指輪を取り出して泉を照らした。すると、泉の精霊テティとみさが姿を現した。みさの様子が何だか違う。テティに寄り添っているみさの姿は、テティと同じ格好をし、淡い白い光に包まれている。まるで、テティと同じ精霊の様な姿だ。2人はその姿に見入ってしまい、固まってしまっていた。
…暫くして、アルテがはっとし、
「テティ様、失礼致しました。アルテと息子のシリウスにございます。早くから失礼致します。」
頭を下げ、続いてシリウスが
「テティ様、ご無沙汰しております。アルテの息子、シリウスでございます。」
「うん、良く来たな。話というのは…」
テティが言いかけたところで、みさはテティの袖を引っ張る。
「ん?メーティ、大丈夫?あなたは無理せず休んでいても良いのよ?」
テティは優しく言う。みさは首を振り、
「私がちゃんと…伝えないと…言わないといけないと思うから…」
みさは、何かを決心したような顔をしていた。
「そう、分かったわ。私は見守っているわね。」
テティは優しく微笑み、みさの頭を撫で、みさの少し後ろに下がった。シリウスはみさから目が離せなくなっている。
(みさ…なのか?何だか雰囲気が違う……それに、メーティって呼ばれていたような……?一体何が起きてるんだ??)
その姿に、シリウスはどうしたら良いか分からず、不安になるばかりだった。みさは、ゆっくりと話し出した。
「シリウス…話があるの。私ね、この泉で精霊テティと契約するつもりだったんだけど、話をしていくうちに泉の精霊テティが、私の本当のお母さんだったって分かったの。でね、私の本当の名前はメーティ…お母さんが付けてくれた名前なの。」
「ええっ!?テティ様がみさのお母さん!?名前はメーティ…。そうなのか?みさは…精霊??」
シリウスは驚きを隠せない。
「そうなの。…私は精霊で、名はメーティ。私の入っていた籠に示された"M"という文字は、名前の頭文字だったってわけ。今まで"みさ"って呼ばれていたのは育ての親が付けてくれた名前。どっちの名前も私には大切なものなんだけど、メーティって言われた時、素直に受け止められたの。私は"メーティ"だったんだって。」
「そっか。みさ…否、メーティにとってはどっちも大切な名だもんな。それで、メーティ?いつ帰ってくるんだ?メーティが精霊なら、これ程皆を納得させる理由はない。だから、安心して帰っておいで?」
シリウスは優しく言う。
「………」
メーティは、黙ってしまう。
「メーティ?どうしたんだ…?」
シリウスは不安になってきた。心配そうな顔でメーティを呼ぶ。すると、メーティはまた、ゆっくり話し出した。
「…シリウス、ごめんなさい。私、帰れない…帰れないの…!精霊は人間と結婚出来ないの。それから私は"ココ"から出る事が出来ないの。」
メーティの目には涙が浮かんでいる。
「そんな!何か方法は無いのか??母さんも何か言ってくれ!」
シリウスはどうして良いか分からず、アルテを見るが、アルテも首を振り言った。
「シリウス…精霊と人間とじゃ住む世界が違うのよ。一緒に居ようとしても、必ずどちらかは傷つくわ。あるいはその…2人とも。残念だけど、結婚は諦めなさい。」
「そ……そんな事って…」
シリウスはその場に崩れ落ちてしまった。
アルテはそんな息子をゆっくり起こし、
「シリウス、帰りましょう。
テティ様、メーティ様…事情は分かりました。テティ様とメーティ様が20年振りに出逢えたのは本当に喜ばしい事です。ですが、シリウスは本当にメーティ様を愛していました。ですので本当に残念でなりません。精霊と人間では寿命も違いますし、仕方の無いことだと思います。禁忌を侵してまで一緒になることもしないでしょう…。」
アルテは、残念そうに言い、
「アルテ、申し訳なかったな。シリウスにも申し訳ないことをした…」
テティも、何と言ったら良いか分からないという表情をしていた。
「テティ様、お心遣いありがとうございます。」
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