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精霊との契約??水の精霊テティ

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アルテ皇后は、森の入り口に落ちていた葉っぱを手に取り、呪文を唱える。
そして、葉っぱを地面に置き、指輪をそっと近付けると……扉が現れた。否、葉っぱが扉に変化したのだ。

「行きましょう。」

アルテ皇后は扉を開け、みさを招き入れる。
扉を抜けると、泉の目の前だった。

みさは不思議に思い、アルテ皇后に聞く。

「これも魔法ですか?この扉に入ればどこでも行けるのですか?」

「そうね。これも魔法、精霊の…このホシノシズクの力と言った方が正しいかしら。
私の場合は森の精霊と契約しているから葉っぱを使って、シリウスは花の精霊と契約しているから花をという感じね。それぞれの契約の精霊によって、扉も変わるわ。この扉は、この星の国だったら何処でも行けるの。行き先を念じて扉を開けるとそこに繋がっているわ。扉を出現させた人と手を繋ぐと誰でも通れるのよ。」

「では、この扉を使えば私の星へも?」

(帰れるのかな?)

「いいえ、貴女の星"チキュウ"というところには行けないわ。別の星に繋げる時には、ホシノシズクを集めたものを使わないといけないから。貴女がこちらに来るときは、7色のホシノシズクが嵌め込まれた鏡を使って来るでしょう?それだけ力が必要なの。」

アルテ皇后とみさは、泉の目の前に行く。
アルテ皇后は一歩前に出て、泉に向かって指輪を翳す。

「水の精霊テティ様、アルダバラ国皇后、アルテにございます。
新たに契約したいという娘を連れて来ました。姿をお見せ下さいませ。」

すると、皇后の指輪が緑色に輝き泉を照らす。
泉の水が揺れ、白い光に包まれた精霊が姿を現した。

「アルテ皇后、久しいな。その娘か?我と契約したいというのは。」

(透き通った青い髪…私と髪の色は似ているけれど、姿は全然違う…アルテ皇后も素敵だけれど、精霊って凄く綺麗……こんな人?見たことない……)

みさは思わず目を奪われていた。

「はい、こちらの娘、"チキュウ"という星から来た、ミサといいます。
この度、私の息子であるシリウス皇太子の、妃として迎える事となりましたので、是非テティ様と契約していただきたく連れて参りました。」

アルテ皇后は、テティに頭を下げる。
精霊の姿に見惚れていたみさも"はっ"とし、皇后に続いて頭を下げた。

「うむ。承知した。その娘前へ。」

皇后の後ろからゆっくり前へ出て、頭を下げる。

「よろしくお願い致します…。」

少し、みさは自信無さそうに言う。

「そなたがミサか。これから、そなたが契約出来るに値するか確認する必要がある。泉の中に入って貰う事になるが、何も怖いことは無い。息も出来なくなる事は無いので安心して付いてきなさい。アルテ皇后、今からは私に全て任せていただきたい。全てが終ったら、そちらに送り届けよう。」

「テティ様、承知致しました。よろしくお願い致します。
ミサ、頑張ってね。」

アルテ皇后はみさに笑顔で手を振ると、扉から帰って行った。

「アルテがいなくなって不安か?大丈夫、そなたは私が送り届けるのでな。」

「はい。えと、テティ様、よろしくお願い致します。」

「うむ。ミサ、こちらへ。」

水の精霊、テティに招かれ泉の中に入る。テティの言った通り、息が出来る。
みさはホッと胸を撫で下ろし、テティに付いて泉の奥に入っていく。
すると……
泉の中に居た魚達がみさの周りに集まってきて、水がキラキラと輝きだし、やがてみさは虹色の光に包まれた。

「これは……??綺麗……」

みさが自分を包んでいる光景を見て、うっとりしていると、

「ミ、ミサ……?そなた……!?」

テティが涙を浮かべてみさを見ている。

「テティ様!?どうしたんですか?」

みさは、涙を浮かべて自分を見ているテティを見て驚いた。

「…ミサ、そなたは"チキュウ"という星から来たと言っておったな?」

「はい。私は地球に住んでいますが、12年前に何故かこの国に来て、シリウスに出会い、最近また再会し、この国に参りました。」

「そうであったの。だから、否、…そんな事はないはずじゃ。」

明らかにさっきから、テティがおかしい。

「テティ様?何か…?」

みさは不安で堪らない。

(どうしたら良いのだろう…精霊と契約なんてやっぱり無理だったのかな…テティ様、様子が変だし…)

「……今、そなたは虹色の光に包まれているであろう?」

「はい。」

(今はしっかり話を聞こう。)

みさは決心して、テティの話を聞く。

「そ……れは、な…水の精霊が泉に入った時になる現象なのじゃ。」

「…???…それはどういう。」

「そなたは、水の精霊ということになる。」

「へっ?」

(変な声が出ちゃった……って、精霊?私が?どういうこと?)

みさは驚きの余り固まっている。

「ミサ、教えて欲しい。そなたの家族は"チキュウ"に住んでいるのか?そなたは、"チキュウ"で今まで過ごして来たのであろう?」

「はい、私の家族は地球に居ます。20年、地球で過ごしてきました。…でも、家族とは血が繋がっていなくて…」

「そうであったか。辛い事を話させてしまってすまない。その、ミサの家族から聞いていると思うが、ミサの生まれを教えて欲しい。」

みさは困っていた。血も繋がってなければ、施設で育ったわけでもない。情報は何もない。

「生まれ…ですか。すいません、生まれは分からないんです。」

「分からないとは?」

テティは不思議そうに聞く。

「実は……ある日の夜、家の玄関の前に籠が置かれてあったらしいのです。その中に、おくるみにくるまれ赤ちゃんが入っていて、それが私だったみたいで……分かっている事は、誕生日らしき日付と、"M"の文字だけです。」

「そうか……けれど、これで分かった。
ミサ、落ち着いて聞いて欲しい…そなたは私の娘…メーティ……」

言ったところで、テティは泣き崩れ、座り込んでしまった。

(…わ…たし、が、テティ様の娘?……)

「テティ様、顔を上げて下さい。」

テティは、ゆっくり顔を上げ、

「…ミサ……否、メーティと呼ばせて欲しい。やっぱり、私の感は正しかった。その深い青い瞳と、少し痛んではいるがその透き通った、わたしと瓜二つの青い髪。アルテが連れて来た時に、まさかとは思ってたが…
実はな、私の娘、つまりメーティは、20年前に生まれて3ヶ月の時に悪魔に拐われた。
どういう経緯で"チキュウ"に行ったのかは分からないが、本当に…本当に生きてきてくれて良かった…。」

みさは驚きを隠せない。

(本当に……?この人が私のお母さん…??)

「テティ…様?本当にテティ様が私のお母様なんですか?」

「信じられないのも無理はないな。メーティ、こちらに来てくれるか?確実に確かめる方法がある。私は確かめなくても、メーティが娘だと確信してるが。」

みさは、テティの前に行く。
テティはみさを抱き締め、そしてみさの額に軽くキスをする。すると…みさの額が輝きだし、雫のような花が額に現れた。

「これこそが、水の精霊の証、"シズクの花"。やっぱり…貴女は私の娘、メーティだったのね。」

テティは、喜びを隠せない。何度もみさを抱き締めた。暫くして、みさも実感が湧いてきた。

「お母様…っ!」

みさも泣きながらテティを抱き締めた……
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