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渉が変わるには……?

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「それでは、どうすれば良いですか?」

 アプロは少し考えた後、話出した。

「まず、格好から変えてみてはどうだ? その前髪、そんなに長くては表情が見えないであろう? 髪型を変えれば少しはマシになると思うのだが」

「で、でも……アプロ様? 俺はずっとこのまま過ごしてきました。今更、髪型を変えたところで……」

 正直、自信がない。ずっと前髪で顔を隠してたから……否、周りを見ないようにしてたのかもしれない。特に日常生活に不便な事は無いし、変わりたいとも思わない。髪型を変えるとなると……美容院とか行くことになるのか? それは嫌だ……。

「ふむ。こう変えたら良いと思うがダメか?」

 と、アプロがパチンと指を鳴らしたと思ったら、俺の視界が急に開けた。

「え!? え~っ!?」

 驚いて、慌てて鏡を見る。そこに映っていたのは前髪が短くなった俺だった。否、短くなっただけじゃない、所謂イケメンカットだった。

「そんなに驚く事は無い。我にはこれくらい簡単だ。どうだ?」

「こんな髪型にしたこと無いから分からない……」

「そうか、我は似合ってると思うよ」

 アプロは楽しそうにそう言うが、やっぱり自信はない。

「髪型が変わったけど、特に変われたとも思えないし、明日学校に行ったら何か言われないかな……いや、皆、俺には興味無いはずだ大丈夫……」

「何をブツブツ言っておる? それに、渉? さっきから俺の顔を見てないようだが、どうした?」

 声に出ていたらしい。それに……顔、見れないんだよな。人の顔をずっと見て話すのは苦手だ。今までは猫の姿だったから、気にならなかったけど……

「アプロ様、ごめんなさい。俺、人の顔見て話すのは苦手なんです。よっぽど馴れないと」

「ふむ。我は人間ではないのだが、ヒト型だからか? 分かった……」

 すると、ボンッと音がして……見ると、猫の姿になっていた。

「アプロ様……」

 アプロ、優しい……

「渉、これで平気かにゃ。まったく、世話が焼けるにゃ」

「ありがとうございます。ごめんね、アプロ様」

「やっと、顔見てくれたにゃ。目が合わないと俺も寂しいのにゃ。後……様、付けなくて良いにゃ。アプロって呼べにゃ」

 その言葉に俺は嬉しくて、抱きついた。

「アプローー! ありがとーー!」

「く、苦しいにゃ。渉、ひ、ヒト型も馴れてくれると嬉しいにゃ。ヒト型じゃないと、俺も力が使えにゃいからにゃ」

「ど、努力します……」

 *

 ――――次の日、

 俺が教室へ入ると、いつもとは違った。皆、特に何も言って来なかったが、視線は感じた。席へ着くと……やっぱり来た。葵が。

「渉、おっはよー! 髪、切ったんだねー! うん、良いよ! 断然その方が良い!!」

 と、テンションMAXだった。俺はいつもの通りなら、鬱陶しいなぁと思うけど、やっぱり褒められるのは嬉しい。

「ありがと、葵、切って良かったよ」

 と、少し照れながら言うと、葵も嬉しそうにVサインしてくれた。その他はいつもと変わらなかったが、今日は何だか気分が良かった。

「渉、嬉しそうだにゃ」

「アプロのお陰だよ! 葵にも言われたんだ。そっちの方が良いって」
 
「渉、やっぱり葵、好きにゃ?」

「そ、そんなこと無いよ! それに、葵には彼氏がいるって言ったろ?」

 俺は少し動揺してしまっていた。葵の事を好き? そんなことない……あいつは只の幼馴染みだし……

「そうかにゃ……」

 何だかアプロ、残念そうだな。

「アプロ、そんな顔するなよ。俺は確かに葵の事が好きだ。……でも、それは人として、友達としてなんだ」

 その俺の言葉に、アプロは少し悩んでいる様な仕草をしている。

「ふむ。分かったにゃ。渉、帰ったら話があるにゃ」

 話? 何だろう?

「アプロ、今じゃダメなのか?」

「今じゃダメにゃ。帰ったらちゃんと話すにゃ」

 寮に帰るや否や、ボンッっと音がしたと思ったら、アプロがまた、人の姿になっていた。

「アプロ、何で……」

「渉、目を見て話すんだ」

「だから、それは無理……」

 と、言いかけたところでアプロが、

「渉、特訓だ。目を見て話すんだ。いくら髪型が変わっても、話かけてもらっても……渉が話せなきゃ意味がない。厳しいことを言うようだけど、我の力だけでは、彼女を作ることが出来ても続かないよ」

 アプロの言う事は最もだ……。そう、だよな……俺が話せないとダメだよな。

「アプロ、分かったよ。俺、頑張るよ」

「頑張れ! 渉なら出来るさ。少しずつ頑張ろうな。それに、もう少しで夏休みだ。夏休みの間に色々特訓するぞ」

 そうか……もう、夏休みなんだな……

 アプロと初めての夏休みが始まろうとしていた――――

 
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