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【第一部】第二章 いざ明へ
RIHUZINN
しおりを挟む一通り信長とアメリアの無差別級ボクシングに決着がついたころ、ナポレオンは隣の椅子に座るアキレウスに質問をした。
「前から気になっていたんだけど、アキレウス殿は……その、何で女性なんだい?」
「堅苦しいな、もうちょい気楽に行こうぜ?」
恐る恐る尋ねるナポレオンの言葉を吐き捨て、アキレウスはテーブルに肘をつき顎を置いた。
「まあな、お前の言いたいことは分かる、男なんだろ? お前らに伝えられてる俺って」
忌々しそうにテーブルにデコピンをしながら、アキレウスはゆっくりと話し始めた。
「まーなんだろ、全部が全部って訳じゃあねぇんだがよ、母さんがいろいろやったんだよ、うん」
机に突っ伏し、憂鬱そうなため息をつく。
ちょっと今までの様子からは想像できないようなネガティブオーラがにじみ出ているのに少し驚きながら、ナポレオンは尋ねた。
「えっと、言いたくないなら言わなくていいけどさ、具体的にお母さんは何を……?」
「言わなくていいなら言わねぇよ、ふあぁぁ……俺は寝る」
突っ伏した顔を上げた直後、アキレウスは席を立ち、あくびをしながら寝床へと歩いて行った。
まだ若いのに二度寝とかおっさんかよぉと、口に出せば即死するであろうことを考えるナポレオン、クスクスと笑いながら金平糖に手を伸ばす。
砂糖の塊は相変わらず甘ったるく、口寂しさを紛らわす道具でしかない、まあ食べ物ならナポレオンは何でも好きなのだが。
「ふぁーあ……寝起きのフランスパン殴りぃ」
「デュクシッッ!」
優雅にコーヒーを啜っていたナポレオンの後頭部に、寝起きのジャンヌ特製、「カッチカチのフランスパン」が炸裂し、口と鼻からコーヒーが風船を割ったかのように噴き出る。
ブシャアアッ! と、ナポレオンの口から放たれたコーヒーはそのまま正面に向かう。
勢い良く立ち上がり、突然後頭部を殴ってきたジャンヌを怒鳴る。
「何するんだ! 僕が何したって言うのさ!」
「存在」
「RI・HU・ZI・ンンンンンンンンンンンンンンッッヅヅッッッ!」
顔を両手で押さえ髪を掻き毟り、自分のイメージの悪さとジャンヌの理不尽を呪った。
けらけら笑いながら、ジャンヌはナポレオンに言う。
「ってか、私なんかより後ろ見た方が良いわよ?」
「はぁ⁉ うしr
言われるがままに後ろを向いたナポレオン。
彼は、見てしまった。
何か茶色い液体が体中にぶっかかった、アメリアと信長を。
ナポレオンはまず、それを見て目を閉じた。
あらゆる現実から目を背ける目で。
次に後ろを向いた。
逃げるために。
だが、そう簡単に逃げられるわけも無く、ナポレオンは二人に捕まり。
ボッコンボッコンに粛清されるのであった。
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