リグレットの炎怨

キリン

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「炎」第二十二話

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「はぁ‥…はぁ」

来た道を戻る形でリグレットは走っていた、右へ左へ階段を降り、足音が聞こえれば別の道を行く。
実は逃げている途中、見覚えのある長い髪がちらりと見えたのだ、今思い返すと、たぶんあそこは医務室だったんだろう。

「確かこっち……あ、見つけた!」

つい大きな声を出してしまったがそこは反省、口元を抑えてそろりそろりと近づく。

顔を半分出し、部屋の中を覗き込む。
そこには見覚えのある後ろ姿がベッドの上にあり、僕の体を安堵が包んだ。

(あっ、いけないいけない、まずは外に出てからだ)

中途半端な安心を振り払い、僕はもう一度部屋を覗き込んだ。
気配はホープ一人だけ、物音も無く、ホープの様子を見ていると誰も居なさそうだった。

(ホープを説得したら背負って行かなきゃいけない、それをあの兵士の数を掻い潜りながら行くのは…‥)

まず、無理だな。
背負う場合は細心の注意を払わなければいけないし、スピードが遅くなる、訓練に訓練を積んだ兵士に追いつかれない訳が無い、万が一戦闘になったりでもしたら、自分もホープもただでは済まないだろう。
僕はそう結論付け、数秒に渡る塾考の末、ある結論に至った。

「‥‥…‥‥ホント、道が無いなら作るって、誰が言ったんだろ」

僕はため息をついた後、ホープのいる病室に足を踏み入れた。

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