リグレットの炎怨

キリン

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「炎」第二十話

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城内を走り回ってかれこれ三分経った。
流石のブレイバも息が切れ、リグレットが自らの足で走り始めた頃だ。

「いたぞ!衛兵!えいへーい!」
「‥‥…!」

立ち止まったリグレットとブレイバ、急いで真後ろに方向転換する。
むろん、バレてしまったからには一刻も早く逃げださなければいけない、戦闘などもってのほか、数で囲まれてしまえばまず逃げられない。

(ホント、あいつが優しい奴でよかった)

脳裏に浮かぶのは、自分の頭を思いっきり踏みつけてきた老人だ。
分かっている、こんなことになったのは、全部自分のせいだという事を。

(昨日と言い今日と言い、まるであの時みたいだな)

それでも、自分が犯した罪であり、人生を彩った思い出の数々が懐かしいのは、どうしようもない事実だった。

(リグレット、俺はあらゆる罪を墓場まで持っていくつもりだが、一番重い罪をお前に押し付けてしまった)

「ブレイバさん!こっちの道で合ってる!?」
「ああ、そっちだ!」

当時の自分は気が狂っていたと思う、自分の家族にリグレットだなんて名前を付けて、まるで自分が反省した証拠のように、この子の人生を最初からぶち壊すつもりで。

(ああ、分かってるよアグリメント、お前が俺を逃がしたってことは、そう言う事なんだろ?)

廊下を走りながら、ブレイバは目の前の背中を見た。
力強く、そして被せられた深い罪が染みついた背中を。

(最後まで見届けるさ、だから君は、私を二回もこうして助けてくれたんだ)

走りながら、ブレイバは己の運命を決定づけた。
それはかつて自分が逃げ出し投げだし、挙句この子に被せた罪。

神格化の拒絶、即ち、運命への反逆であった。
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