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「炎」第十九話
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今の状況は、十分分かっている。
僕は勇者、世界を救う正しいことをする者。
だからこの行動は正しいし、少しも間違っているとは思わない。
何故なら僕は勇者だ、正しいことをするのが、最善で最優先の役目なのだから。
だからみんなが正しいと思う事をしなければいけないし、何より自分が笑わないといけない。
「何のつもりだ」
だから僕は最善の選択を選び、今こうして剣を交えている。
鍔迫り相手の大剣は重く鋭く、僕の体を潰そうと迫ってくる。
でも僕は怯まない、雄叫びを上げ、老人の大剣を弾き返す。
すぐさま横薙ぎに振るう機械件の刀身が老人の肉を裂くことは無かった、だが、それが理由で老人が笑っている訳ではなさそうだった。
すぐさまリグレットは地面に伏しているブレイバの前に立ち、老人を睨みつける。
まるで、守るように。
「……リグレット…?」
剣を構える少年の後ろ姿に、ブレイバは自然と頼もしさを覚えた。
小さくか弱く、あともう一度戦えば一撃でやられてしまいそうな、この少年の背中に。
何の期待も、根拠もない、ただ、頼もしくて仕方ないのだ。
「分かっているのか?勇者よ、貴様は今反逆罪を犯した、王を殺そうとしたかもしれないそこの男を殺さなかった、挙句守った」
冷淡な口調、だがどこか笑っているようにも見える口調で老人は尋ねた。
「それが、お前の覚悟か?」
その表情はやけに穏やかで優しく、満足そうな笑顔だった。
問いに対し、リグレットは荒い息を吐きながら、咳き込みながらも答えた。
「……はい、これが僕の覚悟です」
呼吸で肩を上下させながら笑って見せた、ただの強がりだったが、既に満足している老骨を満足させるには十分すぎた。
「そうか」
そう言って老人は瞼を閉じた、目の前に敵であるリグレットが居ながら、だ。
「良い覚悟だ、良いだろう、今回は見逃してやる」
意外そうな顔をするリグレットを見ながら大剣を担ぎ直し、老人はその場で胡坐を掻いた。
「そら、早く行け勇者、もうすぐ俺の優秀な部下共が来るぞ?」
薄く笑う老人の言葉に戸惑う僕、ゆっくりと起き上がったブレイバさんは僕を担いで走り出した。
「ぶっ……ブレイバさん!自分で歩けるから降ろしてください!それから大丈夫ですか!?頭滅茶苦茶踏まれてましたけど!」
「どうってことないさ!そんな事よりさっさとここから逃げるぞ!」
そう言って、リグレットを担いだブレイバは廊下を走って行った。
急に静かになった扉の前で、一人残された老人は笑った。
「……やれやれ、勇者ってのは、どいつもこいつも我が強い」
懐かしい、何十年も前の旅を思い出しながら、老人は楽しそうに笑った。
黒焦げになった旅の思い出でも、かつては大事な宝物だった、それを忘れずに。
僕は勇者、世界を救う正しいことをする者。
だからこの行動は正しいし、少しも間違っているとは思わない。
何故なら僕は勇者だ、正しいことをするのが、最善で最優先の役目なのだから。
だからみんなが正しいと思う事をしなければいけないし、何より自分が笑わないといけない。
「何のつもりだ」
だから僕は最善の選択を選び、今こうして剣を交えている。
鍔迫り相手の大剣は重く鋭く、僕の体を潰そうと迫ってくる。
でも僕は怯まない、雄叫びを上げ、老人の大剣を弾き返す。
すぐさま横薙ぎに振るう機械件の刀身が老人の肉を裂くことは無かった、だが、それが理由で老人が笑っている訳ではなさそうだった。
すぐさまリグレットは地面に伏しているブレイバの前に立ち、老人を睨みつける。
まるで、守るように。
「……リグレット…?」
剣を構える少年の後ろ姿に、ブレイバは自然と頼もしさを覚えた。
小さくか弱く、あともう一度戦えば一撃でやられてしまいそうな、この少年の背中に。
何の期待も、根拠もない、ただ、頼もしくて仕方ないのだ。
「分かっているのか?勇者よ、貴様は今反逆罪を犯した、王を殺そうとしたかもしれないそこの男を殺さなかった、挙句守った」
冷淡な口調、だがどこか笑っているようにも見える口調で老人は尋ねた。
「それが、お前の覚悟か?」
その表情はやけに穏やかで優しく、満足そうな笑顔だった。
問いに対し、リグレットは荒い息を吐きながら、咳き込みながらも答えた。
「……はい、これが僕の覚悟です」
呼吸で肩を上下させながら笑って見せた、ただの強がりだったが、既に満足している老骨を満足させるには十分すぎた。
「そうか」
そう言って老人は瞼を閉じた、目の前に敵であるリグレットが居ながら、だ。
「良い覚悟だ、良いだろう、今回は見逃してやる」
意外そうな顔をするリグレットを見ながら大剣を担ぎ直し、老人はその場で胡坐を掻いた。
「そら、早く行け勇者、もうすぐ俺の優秀な部下共が来るぞ?」
薄く笑う老人の言葉に戸惑う僕、ゆっくりと起き上がったブレイバさんは僕を担いで走り出した。
「ぶっ……ブレイバさん!自分で歩けるから降ろしてください!それから大丈夫ですか!?頭滅茶苦茶踏まれてましたけど!」
「どうってことないさ!そんな事よりさっさとここから逃げるぞ!」
そう言って、リグレットを担いだブレイバは廊下を走って行った。
急に静かになった扉の前で、一人残された老人は笑った。
「……やれやれ、勇者ってのは、どいつもこいつも我が強い」
懐かしい、何十年も前の旅を思い出しながら、老人は楽しそうに笑った。
黒焦げになった旅の思い出でも、かつては大事な宝物だった、それを忘れずに。
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