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第五話
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一通り掃除が終わり、僕は買い物に行くことにした。
朝食を作った時にベーコンと卵を使い切ったのだ。
「ブレイバさーん」
「どわぁぁっ!?」
椅子からひっくり返ったブレイバさん、僕は慌てて駆け寄った。
「何してるんですか!?」
「いや!なにも!ない!」
頸をぶんぶんと横に振りながら起き上がるブレイバさん、腰をぐるんぐるんと回し、自分が何事も無いことをアピールしている。
「んでどうした、まさか朝からいい出会いでもあったのかな⁉」
「いい出会い、かどうかは分かりませんけど・・・・・・」
ポケットの銅貨が後ろめたいのか、反射的にポケットの上に手を置いた。
「シルドさんに会いました、少し話しただけですけど」
それを聞き、何故かブレイバさんは悲しそうな顔をした。
目を逸らし、後頭部をぼりぼりと掻き。
「・・・・・・・そうか」
と、一言だけ返事をした、こういう態度を取るという事は、話の話題を変えたいときだ。
僕はなんでそんなにシルドさんの話をしたがらないのか不思議に思ったが、ブレイバさんのそんな顔を見たくなかったので。
「買い物に行ってきます、卵をいくつか、あと、ベーコンを一切れ」
「ん、ああ、それなら一つ頼まれてはくれないか?」
「なんです?」
珍しい、ブレイバさんが僕に頼み事だなんて。
「ウィッシュんとこの教会に預け物をしてるんだよ、昨日取りに行くはずだったんだが忘れちゃってね、あの婆さんは約束を守らない人間、特に男が嫌いだからなぁ」
両手を合わせて頭を下げるブレイバさん、なぁんだそう言う事かと僕は少ししょんぼりした。
ウィッシュというのは、シルドさんと同じブレイバさんの友人だ。
僕も何度か会った事があるがそんなに怖いイメージは無い、怒ると怖いが、普段はとてもやさしい。
しかしブレイバさんと一緒に来ると、得意の衝撃魔法で吹っ飛ばしてくる、僕は歓迎され、ブレイバさんは向かいの老夫婦の家の壁に突っ込む、始めは驚いたが、もう慣れた。
「わかった、ウィッシュおばさんの教会だね」
僕は元気に頷き、ブレイバさんから銅貨を何枚か受け取った。
「・・・・・・ねぇ、ブレイバさん」
「ん?なんだ」
「ブレイバさんとウィッシュおばさんって、恋人だったりしたの?」
ブレイバさんの笑みが、火に水を掛けたように消えた。
地雷を踏んでしまったか、僕は慌てて言葉を探そうと思考を巡らせ。
「・・・・・・分からない」
ブレイバさんの小さなその声が、ひどく悲しく聞こえた。
何を言おうか考えても、思いつく言葉は安易で、自分を守るだけの自己中心的な言葉ばかりだ。
「・・・・・・行ってきます」
ただそう一言、ブレイバさんの顔を見ないまま、僕は買い物に出かけた。
大きな山火事はいつだって、小さな火から広がっていく。
朝食を作った時にベーコンと卵を使い切ったのだ。
「ブレイバさーん」
「どわぁぁっ!?」
椅子からひっくり返ったブレイバさん、僕は慌てて駆け寄った。
「何してるんですか!?」
「いや!なにも!ない!」
頸をぶんぶんと横に振りながら起き上がるブレイバさん、腰をぐるんぐるんと回し、自分が何事も無いことをアピールしている。
「んでどうした、まさか朝からいい出会いでもあったのかな⁉」
「いい出会い、かどうかは分かりませんけど・・・・・・」
ポケットの銅貨が後ろめたいのか、反射的にポケットの上に手を置いた。
「シルドさんに会いました、少し話しただけですけど」
それを聞き、何故かブレイバさんは悲しそうな顔をした。
目を逸らし、後頭部をぼりぼりと掻き。
「・・・・・・・そうか」
と、一言だけ返事をした、こういう態度を取るという事は、話の話題を変えたいときだ。
僕はなんでそんなにシルドさんの話をしたがらないのか不思議に思ったが、ブレイバさんのそんな顔を見たくなかったので。
「買い物に行ってきます、卵をいくつか、あと、ベーコンを一切れ」
「ん、ああ、それなら一つ頼まれてはくれないか?」
「なんです?」
珍しい、ブレイバさんが僕に頼み事だなんて。
「ウィッシュんとこの教会に預け物をしてるんだよ、昨日取りに行くはずだったんだが忘れちゃってね、あの婆さんは約束を守らない人間、特に男が嫌いだからなぁ」
両手を合わせて頭を下げるブレイバさん、なぁんだそう言う事かと僕は少ししょんぼりした。
ウィッシュというのは、シルドさんと同じブレイバさんの友人だ。
僕も何度か会った事があるがそんなに怖いイメージは無い、怒ると怖いが、普段はとてもやさしい。
しかしブレイバさんと一緒に来ると、得意の衝撃魔法で吹っ飛ばしてくる、僕は歓迎され、ブレイバさんは向かいの老夫婦の家の壁に突っ込む、始めは驚いたが、もう慣れた。
「わかった、ウィッシュおばさんの教会だね」
僕は元気に頷き、ブレイバさんから銅貨を何枚か受け取った。
「・・・・・・ねぇ、ブレイバさん」
「ん?なんだ」
「ブレイバさんとウィッシュおばさんって、恋人だったりしたの?」
ブレイバさんの笑みが、火に水を掛けたように消えた。
地雷を踏んでしまったか、僕は慌てて言葉を探そうと思考を巡らせ。
「・・・・・・分からない」
ブレイバさんの小さなその声が、ひどく悲しく聞こえた。
何を言おうか考えても、思いつく言葉は安易で、自分を守るだけの自己中心的な言葉ばかりだ。
「・・・・・・行ってきます」
ただそう一言、ブレイバさんの顔を見ないまま、僕は買い物に出かけた。
大きな山火事はいつだって、小さな火から広がっていく。
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