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「第八章」ジークの遺言
「第三十八話」お前が惚れた女をだよ
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ジグルドの怒りは最早、行動に示せるような生温いものではなくなっていた。冷めた態度のソラとは対極に、その胸の内は轟々と燃え盛る炎に等しい。
それらが今にも溢れ出るのではないかと、傍観者であるスルトは手に汗を握りしめていた。
(もう駄目だ、父さんはとっくに呑み込まれてる! ソラが危険だ、早く……!)
「待ちな」
意を決して間合いに踏み込もうとしたスルトを止めたのは、アイアスだった。
スルトはアイアスを睨んだ。
「何のつもりだ、お前」
「あ? 水を差すなってことだよ間抜け」
「父さんはもう見境を無くしてる! ソラを殺そうとしたんだぞ、実の娘同然に愛していた彼女を!」
「ただの嫉妬だろ、それ」
何も言い返せなくなったスルトは、そのままアイアスを睨んだ。アイアスは舌打ちをした後に、スルトの胸ぐらを掴み、その目線を自分から部屋の中へと向けさせた。
「何を……」
「お前みたいな小物が心配しなくても、あいつは死なねぇ……誰も殺さねぇし殺させねぇ」
アイアスは殺気立ったセタンタも睨む。スルトとセタンタ、二人の『剣聖』を同時に抑え込むだけの覇気と実力が、彼女にはあった。
「だからまぁ、ちったぁ信じてやれば良いんじゃねぇか?」
「信じる? 何をだ……?」
アイアスは最早呆れた顔でため息をつき、しばらく言うべきか言わないべきか、柄にも合わず野暮なことで頭を巡らしていた。
その果てに、言ってやることにした。
「お前が惚れた女をだよ」
「──」
スルトは目を見開いた。
「……そうだな」
そう言って、スルトは拳を握りしめながら、しっかりと向き合った。自分の父親の今を、その惨状を正面から打ち破ろうとする、家族になるはずだった女性を。
「そうしよう」
託そうと、任せて信じようと思った。
それらが今にも溢れ出るのではないかと、傍観者であるスルトは手に汗を握りしめていた。
(もう駄目だ、父さんはとっくに呑み込まれてる! ソラが危険だ、早く……!)
「待ちな」
意を決して間合いに踏み込もうとしたスルトを止めたのは、アイアスだった。
スルトはアイアスを睨んだ。
「何のつもりだ、お前」
「あ? 水を差すなってことだよ間抜け」
「父さんはもう見境を無くしてる! ソラを殺そうとしたんだぞ、実の娘同然に愛していた彼女を!」
「ただの嫉妬だろ、それ」
何も言い返せなくなったスルトは、そのままアイアスを睨んだ。アイアスは舌打ちをした後に、スルトの胸ぐらを掴み、その目線を自分から部屋の中へと向けさせた。
「何を……」
「お前みたいな小物が心配しなくても、あいつは死なねぇ……誰も殺さねぇし殺させねぇ」
アイアスは殺気立ったセタンタも睨む。スルトとセタンタ、二人の『剣聖』を同時に抑え込むだけの覇気と実力が、彼女にはあった。
「だからまぁ、ちったぁ信じてやれば良いんじゃねぇか?」
「信じる? 何をだ……?」
アイアスは最早呆れた顔でため息をつき、しばらく言うべきか言わないべきか、柄にも合わず野暮なことで頭を巡らしていた。
その果てに、言ってやることにした。
「お前が惚れた女をだよ」
「──」
スルトは目を見開いた。
「……そうだな」
そう言って、スルトは拳を握りしめながら、しっかりと向き合った。自分の父親の今を、その惨状を正面から打ち破ろうとする、家族になるはずだった女性を。
「そうしよう」
託そうと、任せて信じようと思った。
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