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「第四章」チェストォ!
「第十八話」『魔槍』
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向かい合うように座っているのは、アイアスとアリスである。二人は来るセタンタとの決闘に備え、作戦を練りに練っていた。
「まず私から言えることとしては、クランオール家は他の『四公』とは比べ物にならないほど強い、ということです」
アリスはそう断言したが、アイアスはいまいち納得していなかった。しかめた顔を和らげること無く、アリスに率直な問いをぶつける。
「具体的に何が強いんだよ、クランオールは。受け継いできた技か? 体が強いとかか? それとも、アイツが持ってた槍が『聖剣』としてやべぇのか?」
「前者二つは合っているのですが、最後が部分的に違います。セタンタが持っていたあの槍……ゲイ・ボルグは『聖剣』ではなく、その真逆の存在です」
「真逆ぅ?」
「はい、俗に言うところの『魔槍』です。力と、怨念で鍛えられた邪法の産物」
妖刀。そんな概念が当てはまりそうなアリスの物言いに、アイアスは静かに納得していた。あの槍は業物ではある、それは間違いないだろう。遠くからでもしっかりと作り手の念を感じたからである。──しかし、それ以上にあれは悍ましかった。百や千といった生半可な程度では済まされない、あれは相当な数の生き物から恨みを買っているであろう呪物だった。
(大方、力に溺れた鍛冶師の外道働きだろうな。それにしたってまぁ、ひどかったが)
胸糞の悪いアイアス。
それ以上に辛そうな顔で、アリスはそのまま口を動かした。
「あの槍は何千年も前に作られたもので、当時は戦争が止まなかったそうです。アルヴァロン王国が王と初代『四公』によって作られるよりも前に、あの槍は多くの武人によって振るわれ、そして沢山の人を……」
本当に争いが好きではないのだろう、アリスは口元を抑えたまま暫く動かなかった。しばらくして「すみません」と一言を発し、ようやく起き上がった。
「もう、大丈夫です」
深く息を吐き、アリスは話を続けた。
「ゲイ・ボルグは呪われた『魔槍』です。投げれば決着がつくと言わしめるほどの呪いが、あの槍には込められています……『狙った敵の心臓へと必ず向かっていく』という呪いが」
アリスの話を黙って聞いていたアイアスだったが、小首を傾げながらこう言った。
「投げれねぇように立ち回れば良いんじゃねぇか?」
「頭筋肉で出来てるんですか!? いいですか? クランオール家は『四公』の中で唯一、神である王家との血の繋がりを持つ一族なんですよ!? 素の身体能力も、使える魔法の数や質も桁違いなんです!」
「んじゃあどうやって勝てばいいんだよ、ええ!? さっきからあーだこーだ言わせてみれば、出てくるのは弱音ばっかじゃねぇか!」
「はぁ!? ……たしかに、そうでした」
すみません。小さくなった声につられ、アイアスも突然我にかえる。お互いに大きな声を感情に任せて出したため、妙に気まずい空気感を作り出してしまっている。
しかし、いい加減に沈黙に耐えられなかったアイアスが口を開けた。
「それで? どうすりゃあいいんだよ、俺は」
「私は、魔法を鍛えればいいと思います」
アリスは自分に言い聞かせるかのように、そう言った。
「セタンタは槍術だけではなく、ルーン魔術を交えての攻撃もしてきます。アイアス様には物理攻撃に近い魔法を身につけていただければ、勝機があると私は考えています」
「ん? ああ? つまり俺は具体的に何を……?」
「この手の魔法は習うより慣れろ、ですね。取り敢えず外に出ましょう」
そう言って立ち上がったアリスは、そのまま外に出ていく。アイアスもそれをゆったりと追いかけた。
「まず私から言えることとしては、クランオール家は他の『四公』とは比べ物にならないほど強い、ということです」
アリスはそう断言したが、アイアスはいまいち納得していなかった。しかめた顔を和らげること無く、アリスに率直な問いをぶつける。
「具体的に何が強いんだよ、クランオールは。受け継いできた技か? 体が強いとかか? それとも、アイツが持ってた槍が『聖剣』としてやべぇのか?」
「前者二つは合っているのですが、最後が部分的に違います。セタンタが持っていたあの槍……ゲイ・ボルグは『聖剣』ではなく、その真逆の存在です」
「真逆ぅ?」
「はい、俗に言うところの『魔槍』です。力と、怨念で鍛えられた邪法の産物」
妖刀。そんな概念が当てはまりそうなアリスの物言いに、アイアスは静かに納得していた。あの槍は業物ではある、それは間違いないだろう。遠くからでもしっかりと作り手の念を感じたからである。──しかし、それ以上にあれは悍ましかった。百や千といった生半可な程度では済まされない、あれは相当な数の生き物から恨みを買っているであろう呪物だった。
(大方、力に溺れた鍛冶師の外道働きだろうな。それにしたってまぁ、ひどかったが)
胸糞の悪いアイアス。
それ以上に辛そうな顔で、アリスはそのまま口を動かした。
「あの槍は何千年も前に作られたもので、当時は戦争が止まなかったそうです。アルヴァロン王国が王と初代『四公』によって作られるよりも前に、あの槍は多くの武人によって振るわれ、そして沢山の人を……」
本当に争いが好きではないのだろう、アリスは口元を抑えたまま暫く動かなかった。しばらくして「すみません」と一言を発し、ようやく起き上がった。
「もう、大丈夫です」
深く息を吐き、アリスは話を続けた。
「ゲイ・ボルグは呪われた『魔槍』です。投げれば決着がつくと言わしめるほどの呪いが、あの槍には込められています……『狙った敵の心臓へと必ず向かっていく』という呪いが」
アリスの話を黙って聞いていたアイアスだったが、小首を傾げながらこう言った。
「投げれねぇように立ち回れば良いんじゃねぇか?」
「頭筋肉で出来てるんですか!? いいですか? クランオール家は『四公』の中で唯一、神である王家との血の繋がりを持つ一族なんですよ!? 素の身体能力も、使える魔法の数や質も桁違いなんです!」
「んじゃあどうやって勝てばいいんだよ、ええ!? さっきからあーだこーだ言わせてみれば、出てくるのは弱音ばっかじゃねぇか!」
「はぁ!? ……たしかに、そうでした」
すみません。小さくなった声につられ、アイアスも突然我にかえる。お互いに大きな声を感情に任せて出したため、妙に気まずい空気感を作り出してしまっている。
しかし、いい加減に沈黙に耐えられなかったアイアスが口を開けた。
「それで? どうすりゃあいいんだよ、俺は」
「私は、魔法を鍛えればいいと思います」
アリスは自分に言い聞かせるかのように、そう言った。
「セタンタは槍術だけではなく、ルーン魔術を交えての攻撃もしてきます。アイアス様には物理攻撃に近い魔法を身につけていただければ、勝機があると私は考えています」
「ん? ああ? つまり俺は具体的に何を……?」
「この手の魔法は習うより慣れろ、ですね。取り敢えず外に出ましょう」
そう言って立ち上がったアリスは、そのまま外に出ていく。アイアスもそれをゆったりと追いかけた。
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