嫌われ者は異世界で王弟殿下に愛される

希咲さき

文字の大きさ
上 下
40 / 50
番外編

もふもふの日

しおりを挟む

※アシュレイをもふもふする話。

          ♢♦︎♢

「アシュレイお願い!」
「……まぁ、いいが……」

 ーーこれは寝室での話。
 枢が部屋にやってきたと思えば、そうアシュレイに頼み込む。彼はと言えば、なんだか複雑そうな顔をしつつも了解してくれた。

 そして。

「っ、あぁぁ……!! もふっもふ!!」
「……うん。喜んでいるようでなにより……」

『今日は思う存分狼姿のアシュレイをもふもふさせて欲しい』
 そう言った枢の願い通り、狼姿になったアシュレイはベッドの上に座っている。それを正面から抱きしめるようにして、枢はその全身で撫で回していた。

「このピンと立った耳! ふわふわの毛! ふさふさのしっぽ!! っはぁ~~!! かわいい~!」
「ん、んん……」
「あったかい、かわいい。はぁ……すき」

 もふもふなでなですりすり。頬を擦り寄せ手を動かし、全身で狼姿のアシュレイを堪能している。

「このまま寝ようねアシュレイ~」
「このままか!? もう戻っても……」
「ダメ! 結局付き合う前一回もこの姿のまま朝までいてくれなかったし! その後もなんだかんだで寝たことないもん!」
「たしかにそうだが……。だが、これではカナメを抱きしめられないではないか……」
「僕がぎゅってしてあげるからいいでしょ? ね、ほら!!」
「んん~……」

 納得していないようだが、枢に押し切られてしまい、結局そのまま横になることに。
 ウキウキした顔の枢の隣に寝そべれば、すぐに隣から抱きしめられた。

「絶対朝までこのままだからね?」
「う、わかった……」
「約束ね!?」
「わかったといってるだろ……」
「んふふふ! やったぁ!!」

 アシュレイの首元に鼻先を埋める枢。

「はぁ……。なんだか複雑だな」
「ん? なんで?」
「普段より今の方が、お前は嬉しいようだ。このような姿なら私でなくともいいのかと思ってな」

 ふすん、と鼻を鳴らすアシュレイ。すると顔を上げて枢が言う。

「ひどい。そりゃあわんちゃん大好きだけど、でもだからってなんでもいいわけじゃないよ?」
「……本当か?」
「本当!! アシュレイだから、どんな姿でも大好きなの」

 鼻と鼻をくっつけ、至近距離で瞳を覗き込まれる。その輝きに嘘はない。

「ッ、んぶ!」
「私も、どんな姿だろうがカナメを愛している」

 ベロンと枢の顔を舐めると、それからピッタリと体を擦り寄せる。彼がパチクリと瞬きをする間に、アシュレイは寝る体勢になった。

「アシュレイ?」
「ほら、寝るんだろう? 早くしないと元に戻るぞ?」
「っだめだめ! 寝る! おやすみっ!!」
「ああ。おやすみ」

 アシュレイの頭を自分の胸に抱き寄せ、枢は目を閉じる。それからしばらくして穏やかな寝息が部屋に落ちる。

「……この私を、ペットのような扱いをするのはお前くらいだよ」

 そう言って笑うと、それからすぐに目を閉じたのだった。

 ーー翌朝、隣に狼姿のアシュレイがいることに喜ぶ枢は、その後すぐにペット扱いのお礼とばかりに彼に襲いかかられることをまだ知らない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

枢、アシュレイをもふもふする。
ネオブランジェで狼は神聖な生き物なのに、
枢にとっては可愛いわんわんと変わらないのです……。
それが愛しい人なら尚更もふられずにいられない……。

段々アシュレイに対して遠慮がなくなってきた枢でした。そしてアシュレイは拗ねるような態度が増えてきたような?
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。