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27 小さなお祭り

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## 賢者の首飾り

 メルとソラへの贈り物は、なかなかの金額になってしまった。もう1つお屋敷が買えてしまう。

 自分たちで調達できる材料を大冒険で用意したり、贈り物をする企画ということでフェルマン応援団を巻き込んだり、魔法陣の内容や構成を費用が少なくなるよう調整しつつ、そうしてペアの首飾りはつくられた。

 5つの宝玉が連なる首飾りである。

 宝玉1つ1つには、賢者ワーワンドが残した魔法陣が刻まれている。

 1つ、危険な方角を示し、所有者を災いから守る
 2つ、精霊を招きよせ、魔法の行使を補助する
 3つ、ささやかに、魔法による災から身を守る
 4つ、大きな怪我をしてもたちどころに治る、そのとき、この宝玉は砕ける
 5つ、使う者の意思により、ほんのりともまばゆくとも輝く

 そして、1つ目、3つ目、5つ目が特定の順に並んでいるとき、魔王および勇者の異能を弱体化させる効果が発動する。

 こうしておけば、本来の効果に気づく人もなかなかあらわれないとミーンは考えたのだ。

 フェルマン応援団で小規模にも授与式が開催された。誕生して3ヶ月、100日目のお祝いとされたのだ。

 フェルマンの屋敷の近くでは、建物が立ちはじめ、テントなどを利用し、ちょっとしたお祭りのように授与式が行われる。

 ちょっとし高台に、フェルマンとミーニャがメルとソラをそれぞれ抱きかかえている。

 贈り物をわたすのはミーンである。企画の代表であり、制作に深く関わったミーンこそがふさわしいと、そういう成り行きになってしまった。

 ミーンは、裏方で下支えするというか、表向きのことはあまり得意ではない。そのあたりは、姉のレーメがだいたいやってくれるのだが、今回はそうはならなかった。

 贈り物をつくるにあたって、レーメもなかなかの活躍をしたのである。

 宝玉の材料となる、鉱石をもとめて、竜の群生地へと1人挑んだのだ。

 もちろん、裏ではフェルマンがフォローしていたわけだが、勇者を召喚した若い魔術師が竜退治をしたと、それは街でも大評判で、吟遊詩人の歌の流行りになっている。

 ミーンも高台にのぼると、わずかばかり拍手が舞い込んでくる。

 そして穏やかに、メルとソラには、賢者の首飾りがかけられると、高台は輝き、盛大な拍手でもって宴のメインイベントは終了した。


## 授与式のあと

 フェルマンは、まだまだ盛り上がる祭りを少し離れて見守っている。

 俺は、ひとまずの大きな目標が完了し、一段落した。だが、はたしてこれでゆっくりとした毎日が送れるのだろうか。

 街から離れた場所で、と思ったのに、気がつけばもう、小さな民家が3件、商店のような建物まで建ちはじめている。にぎやかになりそうだ。


## 晩酌

 カレンは膨らんだお腹を気遣い、ゆっくりとちびちびお酒を飲んでいるおじいさんに近づく。

「今日は珍しいのね」

「もう、お役御免じゃ。はーーー、久しぶりの酒はうまいぞ」

「そうね、私は飲めないけど、お酌くらいならできるわ」

「それはありがたや」

 ガウンは、お酒を満喫していた。

「ちょっとずつ、大きくなってきちゃっているのよね」

「そうじゃぞ……うかうかしとったら、国が乗っ取られるやもしれんな」

「現国王様は、どちらでもよいみたいだけどねぇ」

「なんじゃ、とうとうボケたか」

「候補がアピールに必死で、問題ばかり続いているの。
 このまえ第二王子が北壁を越えて、魔族討伐に行ったんだけど返り討ちに合っちゃったんだって」

「ビッグもきよったし、フェルマンもおるし、風向きが変わってきよったしの。
 それより、おまえさんの調子はどうなんじゃ?」

「あたし?元気よ。一様、諜報員のはずなんだけど、しっかりと蚊帳の外になっちゃってるのよね、贈り物の件もふくめて」

「フェルマンもミーンも賢いからのぉ」

「誰にも言ってないはずなんだけど、子供だって授かってるのに、なんか寂しいわ」

「ほっほ、して、国王にはどんな報告をしとるんじゃ」

「昔は、口説いた女の子を全部報告してたわ」

「なんと!こりゃ怖いのぉ」

「今は、全然わからないけど……遊んではいるんじゃないかと思う」

「その心は?」

「女の勘よ」

「おぉ、怖い怖い」

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