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22 赤毛の少女

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## 午前中のお仕事

 赤毛で一本の三編みに、体格以上に大きなカバンを背負った少女とフェルマンは賑わう街を歩いていた。

「私が手伝ってるんだから、今日の分は、午前中に片付けるわよ!」

「当然だ」

「でも、ちゃんと午後にも元気は残しておいてね」

 人々をかきわけ、本日分の依頼をこなすため、早足で進む。

「はいはい、俺よりアン向けの依頼が多いんだ、すぐ終わるだろ」

「むしろ、治療の依頼がどうしてフェルマンのところに届くのよ」

「病気を延命させてしまって、あとは噂におひれがはひれ」

「あながち全て嘘ってことでもないんでしょ?」

「手の内を明かすつもりはない」

「いけーず、私は全部教えてあげたのにー」

 二人は小さな病院へと駆けていく。

 依頼された、重篤な患者をアンはたやすく治してしまう。フェルマンではそうはいかなかっただろう。

 フェルマンの治癒魔術の体得もまだまだ思うようにいかず、移動の異能で移せる病気も限られるのだ。そもそも、移すことしか出来ない。損なってしまった体力の回復などは不可能なのだ。

 休むことなく駆け足で、次の依頼へと二人は向かう。

「そういえば、巡回セールスマン問題ってのがあってな」

「商品を売りつける問題?」

「いや、売りつける先を全部回るとしたら、どういう順路で行ったら全体の距離が最短になるかって問題だ」

「あ、知ってた、NP困難ってやつ」

「そうそう、結局は考えるより体動かせって話だ」

「フェルマンって意外と向こう見ずで脳筋だよね?」

「せっかく転生したんだ、自由に生きたいだろ?」

「でもでも、フェルマンって捨てるの苦手でしょ?」

「どうしてそう思うんだ?」

「私もそうだからね」


## ガウンの腰痛

 日も落ちかけた頃のミーニャ宅付近で、白髭の魔術師は痛めた腰を冷やしながら監視を続けていた。

 ハーマルン国王が、どのようにビッグと話をし、信頼を得たとしても、それで他の王族や貴族達が納得するわけではない。

 ビッグの長期滞在を許してよいのかどうかを問題視する者たちも現れ始めている。

 そんな、結果を待つか、当の本人に確認したとしても心が読めなければ確証をえることもできない不必要な議論から遠ざかっていると思うと、魔術師ガウンは今の監視業務で良かったのかもしれんと思うようになっていた。

「それにしても、最近はあの赤毛の娘がしょっちゅう来るのぉ」


## 料理もできる

「ごめんにゃ、ほとんど毎日夕飯をつくってもらっちゃってるにゃ」

「いいのよ、私料理好きだし。それに、フェルマンにはお世話になってるから、持ちつ持たれつよ」

「フェルマン様は人気だにゃぁ……なんだか遠くへ言っちゃいそうで怖いにゃ」

 とんとんとんととリズミカルに包丁の音がなり、並行して煮物などの料理が作られていく。

「アンちゃんはすごいにゃん、フェルマン様のお手伝いしてるにゃん?」

「大丈夫だって、帰れる家があるから男は好きなことできるんだから、どっしり待ってたらいいの」

「レーメ様にもにたようにゃこと言われたけど……自信にゃいにゃ」

 ミーニャの不安も仕方ない。なにせ、隣国の英雄ビッグが彼を勧誘しに来たかも知れない、そんな話も耳にしているのだから。

 困った顔でアンは告げる。

「どこか行っちゃっても、私が捕まえてきてあげるから」
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