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春暦

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暖かい日差しが照らし始める3月の終わり。

もうあのころは捨てた。はずだっただけで、たまに頬を何かが流れる。
寂しいんじゃない。ちょっと目が痛かっただけ。

一丁前な日差しなのに、なんだか過ぎる風は冷たい。
始まってもないような人生が、また一段落する。

望んだ時に終わらず、望まない時に終わりが来る。
優しい春の陽気に、ちょっとばかり目を瞑る。

思い出そうと思えば、いくらでも出てくるような記憶。
過去に縋る自分のまま、新たな春を迎える。

そんなようなことを考えながら、桜の花弁を手に、青空を見る、昼下がり。
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