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UP済

恋 夢

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君が選んだのは、アイドルという夢だった。

僕は君の応援しかできない。いや、そんなこともさせてもらえないのかもしれない。

そんな君が、僕と付き合った。僕は一度、断られた。さよならを告げられた。はずだった。

ちゃんと想いを受けてくれた。奇跡だった。初めてしっかりと告白をした。その事実がとっても嬉しかった。

煩く目覚ましがなる。これも夢だったか。
これほどまでに目覚めの悪い朝があっただろうか。今までの人生で、一番胸糞悪い朝だ。

例えこれが本当になっても、彼女の負担が増えるだけ。僕の存在は、どう転んでも邪魔なのだ。

いつもなら辛くて見れない彼女の活動のSNSを見る。
可愛かった。超絶。さすがアイドル。
彼女感満載。文面も一丁前にアイドルしてる。
地下とはいえ、雑誌掲載されている。そんなツイートも見かけた。嬉しくなかった。寂しかった。もう二度と会えない。そんな気がして。

でも何故か自撮りを見ても苦しくなかった。朝だから、寝起きだから。十分考えられる。
でも、僕だけに見せてくれる彼女のあの表情。満面でも、軽い笑いでもない。ファンには到底引き出すことなど不可能。彼女の僕だけに見せる笑顔。優しく尊いあの笑顔。僕は知ってる。

今日の夢で見た君の顔は、確かに僕にしか見せない表情を浮かべていた。大好きだと、付き合ってくださいと。そう伝えたあとの君の少し照れてるはい。という返事。少しふわふわしている感覚。駅のホーム。
あれはアイドルなんかじゃない。

たった一人の、女の子の顔だった。

さぁ、もうすぐ日が昇る。もうすぐ6時だ。
準備をしよう。

彼女のあの顔を、一生の希望にしながら。
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