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UP済

「絶対可愛い」

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「じゃあ飲み物持ってくるね。」
「うん。ありがとう。」

彼女はそう言うと立ち上がって部屋を出ていった。
僕は幼なじみの彼女の家にお邪魔していた。
昔から僕らは仲が良かった。だから付き合ってるとか、両思いとか、そう言われるのは日常茶飯事だった。
でも僕は彼女に気は無い。だって。。
ふと彼女の机に目をやった。

「可愛い。」

綺麗なクリアの収納ケースにはメイク用品が沢山詰まっていた。用途に合わせて仕切られ、まさに女の子の机という感じだった。

「メイク、してみる??」

そんな声が聞こえて驚いた。彼女が戻ってきていたらしい。それほどまでに集中していたことを今更知る。

「いや、いいよ。w
綺麗だなぁって思って。勝手に見てごめんね??」
「全然。そうだ、私の服着てみる??
可愛いの沢山あるよ??」

自然すぎる流れにのまれそうになったがすぐに自我を取り戻した。

「な、何言ってんの...w
着ないよw」
「ねぇ。私って、そんなに頼りないかな。
こんだけ長くいて、自分の本当も明かせないなんて。私、そんなに頼りない??
気なんか張らないで。大丈夫。私は、あなたの味方。今までも、これからも。」

どこで気づいたんだろう。どこで勘づかれたのだろう。記憶をたどってもその答えは出てこなかった。
彼女の言葉はすぐになんのことを言っているのか分かった。
隠していた自分の本音が今にも爆発しそうだった。いや、もう爆発した。
今まで隠していたこと。軽蔑されるかもしれない。気持ち悪がられるかもしれない。嫌われるかもしれない。そんな恐怖が、僕という存在を殺していた。でも彼女の前なら、今なら、いいかもしれない。
僕の心を突き刺すほどに真っ直ぐな彼女のその目は、まさに真剣そのものだった。
僕は泣きそうになるのを必死に抑えながら、彼女に負けないほど真っ直ぐに彼女を見つめた。

「僕は、私は、女の子になりたい。」
「絶対可愛い。」
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