暗い夜を見つめながら今日も生きる意味を探している。

夜碧ひな

文字の大きさ
上 下
26 / 40

春の日記

しおりを挟む
 ……

 時は流れ……俺は幸村さんの支援によって、遂に念願の、学童保育指導員の仕事に就ける事が決まる。それも新規採用で有る!
 場所は勿論、稀子実家が有る市町村で有るが、稀子の住んでいる地区には小学校が既に無い為、稀子の地区から言えば、下の集落に有る小学校に併設されている学童保育所と成る。

 学童保育所への通勤に関してはコミュニティバスが有るが、自家用車が有れば非常に便利で有る。
 自家用車に関しても、俺は幸村さんのコネで格安かつ、程度の良い自家用車を現在探して貰っている。

 理想としては、稀子の大学卒業まで待つのが理想で有ったが、俺がほぼ一発で保育士試験に合格出来た為予定は早まり、稀子が大学三年生と成る年。俺と稀子は稀子実家が有る地域へ移り住む。
 学童保育所での勤務開始日は4月1日からで有るが、それまでに引っ越しや住民票異動なども、済ませて置かなければ成らない。

 そして、今日は羽津音市はずねしに有る山本さんの家から、稀子実家が有る地域への引っ越し日で有る。
 昨夜は山本さんの家でお別れパーティが開かれ、別れを惜しみつつ宴を楽しむ。
 稀子が悲しむ事は特に無く、鈴音さん達と楽しんでいた。

 ……
 …
 ・

『ブロロ~~♪』

 俺と稀子の荷物積み込みも、順調良く終わる。
 荷物を積んだ引っ越しトラックが一足早く、稀子実家が有る地域へ向かって行く。

 引っ越し業者は勿論、山本さんの知り合いで有る。
 荷物の受け取りは今日では無く、明日の午前中と成る。

 そして、明日から稀子との同棲生活が始まる。
 住処に関しては、稀子実家の近くに空き家が有るので、其処が俺と稀子の愛の巣と成る!

 白物家電に関しては、幸村さんが用意してくれた。
 幸村さんも俺が金を無い事を知っているし、娘で有る稀子に不便な生活をさせたく無かったのだろう?

 その為。この引っ越しでの出費と言えば、引っ越し代と俺の使っていた白物家電の廃棄処分費ぐらいで有る。
 このお金に関しては、俺のお金で処理した。

 後は、俺と稀子が移動するので有るが、今回は幸村さん達が迎えに来てくれる!
 稀子は山本さんの家を下宿にしていたので、そのお礼の言葉を言うためと迎えも兼ねて来る。

 俺と稀子は山本さんの家リビングで、最後の談笑をお茶を飲みながら“みんな”としていると、幸村さん達が家に到着する。
 いよいよ、最後の別れ時間がやって来た。

 幸村さん達は、山本さんのおばさんや山本たかあきさんと話をしている中、稀子は鈴音さんと別れの挨拶をしている。

「稀子さん!」
「あちらに行かれても、比叡さんと楽しい生活をしてくださいね♪」

「ありがとう。りんちゃん!」
「これで、鈴ちゃんとは大学以外では会いにくく成るけど、私は比叡君と幸せに成るよ!」
「でも、今でも十分に幸せだけどね!♪」

 稀子と鈴音さんは笑顔で、別れの挨拶をしている。
 稀子の事だから、きっと“わんわん”泣く者だと感じていたが全く違った。

 鈴音さんの方も、稀子とは離れるから寂しく成るかも知れないが、稀子に振り回される事は減るので、却って気楽かもしれない?
 幸村さん達との会話を終えた山本さんが、俺の方に近付き、穏やかな表情で話し始める。

「…比叡君!」
「向こうに行っても、元気でやってくれよ!」

『ポン!』

 山本さんは言葉の後。俺の右肩を叩く。
 俺も穏やかな表情で、山本さんに話し始める。

「山本さん…!」
「長い間。本当にお世話に成りました!」

『ぺこり』

 俺は言葉の後。山本さんに頭を下げる。
 山本さんはそれを見ながら、俺に陽気な口調で話し始める。

「お世話は確かにしたが、比叡君が無事に成長してくれて僕も嬉しいよ!」
「比叡君と稀子ちゃんとの結婚式。楽しみにしているよ!!」

 ……

 別れの挨拶も終わり、俺と稀子は幸村さんの車に乗り込む。
 鈴音さん。山本さん親子は外まで出て来てくれて、最後の見送りをしてくれる。

 稀子は後部座席の窓を開けて、そこから顔を少し出しながら、笑顔で鈴音さん達向けて話し始める。

「みんな~~。見送りありがとう~~!」
「私は、比叡君と幸せに成るよ~~♪」

「~~~♪」

 稀子の言葉を、車内で嬉しそうな表情で聞いている楓さん。
 楓さんも自分が嫁いだ時の事を、思い出しているのだろうか?

 稀子の言葉の後。俺達を乗せた車は、幸村さんの運転で山本さんの家から離れ、稀子実家へ向かって行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ピッケルの呟き

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
顔にツルハシ型の模様がある猫 ピッケル の日常での一言を切り抜いた呟き日記。  フィクション×ノンフィクション  他の作品の公開が無い日に投稿しようと思っていますので、暇つぶしに見て貰えたなら幸いでございます!

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

処理中です...