暗い夜を見つめながら今日も生きる意味を探している。

夜碧ひな

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スカート

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うちの高校では女子生徒の制服にスラックスがある。
いわゆるズボンだ。ネクタイかリボンか選べもする。
でも、男子は何も無い。ズボンだけ。ネクタイだけ。
それが、社会での当たり前だった。

そんな中、僕は一際目を惹かれた。
それは幼なじみだった。
彼女とは生まれてからずっと一緒で、一緒の時間を家族ぐるみで過ごしてきた。

中学までは髪を伸ばし、スカートを履き、ごく普通の女子中学生だった。
だが今は違う。
髪を短くし、ネクタイを締め、スラックスを履いている。
男子とよくつるみ、まるで男の子の印象を受けた。

「一人?」
帰り道に声をかけてきたのは正しくその幼なじみだった。
「一緒に帰ろうよ。」
「うん。」
話に花は咲かない。昔からそうだ。でも彼女は僕を大切にしてくれる。そんな彼女といるのが心地よかった。でも、どうしても恋愛面では見れない。
僕が男の子が好きだからだろうか。
そんなこと彼女に言ったら、なんて言われるだろうか。

「ねぇ、言いたいことがあるならはっきりいいなよ。
人の体ジロジロ見て、どうしたの?」
無意識、といえば無意識だった。
ジロジロ見ていたらしい。でも言いたいことがあるのは本当だった。
「イメチェン?だいぶ雰囲気変わったね。」
相手を傷つけない程度の言葉を選んで放った。
「憧れてたんだよね、ボーイッシュな格好。
私さ、女の子好きらしいんだよね!」
彼女はまるで夕飯の話でもしているかのように軽いトーンで言葉を紡いだ。

「驚いた?だから君は恋愛対象じゃないよー。」
僕は、このチャンスを無駄にしたくなかった。
秘めていた気持ちを、解放できるのは今しか無いかもしれない。
「まだ何か言いたそうだけど?何?せっかくなんだから言ってみなよ!」

彼女の弾む声に身を任せて、言いたいことをひとつに絞った。
言いたいことは山ほどある。
どうして普通じゃないの?
どうして僕にそれを言うの?
どうして自分をさらけ出せるの?
どうしてそんなに強く生きられるの?
どうして自分らしく生きようと思えたの?
どうして普通じゃないことを受け入れられるの?
聞きたいことはいくらでもあった、でもそうじゃなくて。。。

「僕、スカート履きたい。男の子が、好き。」
声が震えているのが自分でも分かった。
でも、心配していた嫌な予想は全て外れた。
彼は全て包み込み、変わらぬ弾んだ声で私に満面の笑みを浮かべてこう言った。

「絶対、可愛いじゃん。」
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