「君が好きな小説と僕が好きな君の話」

夜碧ひな

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シナリオ

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空に雲が悠々と浮かぶ。
こんなに空が明るいのに、もう17時過ぎだなんて馬鹿げている。
随分と日が伸びた。同時に、彼女の命は日に日に短くなっていく。
ここまで嫌な反比例があっただろうか。
僕は少しご無沙汰な彼女の病室の前で深呼吸をした。
というのも、さっきスマホに連絡があった。

『会いたい。話がある。』

もしかしたらフラれるかもしれない。僕を気遣って。
いや、もし仮に本当の意味でフラれたとしたら??
一丁前に普通の高校生男子であることがバカバカしかった。
だが話があるのはこっちもだった。

僕はもう一度だけ深呼吸をしてノックしてから病室のドアを開けた。

彼女は円な瞳をして、少し上目遣いでこちらを見ていた。僕がベットに近づき喋ろうとした瞬間、彼女は僕から目線を外し、代わりに両手を広げた。

「明李音??」

「ぎゅー、したい。」

顔を真っ赤にしながら僕を待つ彼女は、さすがに可愛すぎた。
僕は明李音の胸に優しく飛び込んだ。温かい。いや、なんなら少し暑い。でもそれぐらいが、とっても心地良かった。
僕たちは互いに一度離れて顔を見合わせ、少し照れ笑いをした。

「暖、会いたかった。
ずっとずっと、会いたかった。
我慢してた。暖のためにって。
でも気づいた。
私、暖がいなかったら生きてる意味ない。
未練を残して、死にたくない。
大事な時期だって言うのはわかってる。
だから、迷惑はかけないから。
だから、、その。。」

僕は今にも泣きそうな彼女をそっと抱きしめた。さっきより強く、優しく。

「明李音ばっかりずるい。僕にも喋らせてよ。
そばにいたい。
もう逃げないって約束したから。
君の、明李音の物語を紡ぐって決めたから。
僕は明李音のことになると、視界がぼやけて、何が正しいか分からなくなる。
でも、明李音が望んでくれるなら、僕はずっと君のそばにいたい。
それだけは、ちゃんと見える。」

結局明李音に頼りっぱなしだ。
僕は自分から、明李音から、逃げ続けてる。

「ありがとう。
暖がいてくれて良かった。
暖が私の大好きな人で、本当に良かった。。」

そんな言葉、僕にはもったいない。
言おうとしてやめた。
どれくらい経っただろう。もう時間は覚えていない。
それほどまでに、ゆっくりとした温かい時間だった。
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