35 / 47
シナリオ
34
しおりを挟む
昼下がり、という言葉がピッタリあうような暖かい日差しが差す。
夏の匂いがし始める5月中旬、少し冷たい風が心地いい。
僕らは病院の屋上に来ていた。普段なら施錠されてるはずなのだが、明李音が許可を取ったらしい。
取る方も取る方だが、許可する方も許可する方だ。
「暖、気持ちいいね。」
「そうだね。」
月日が流れ続ける度に、季節が変わっていく。
それは、彼女が消える日が迫っていることを知らせるようだった。
明李音は少しずつ弱っていった。体は元気なはずだが、日に日に増す頭痛と、それによる睡眠不足。薬の副作用で思うように体が動かない。
あれだけ元気だった明李音の姿は、随分と変わった。
「暖、、」
「ん??」
「私、お花畑に行きたい。
あぁ、死にたいってことじゃなくて。物理的な方。」
一瞬でも前者かと思った自分を殴ってやりたかった。
「どうして急に??」
「男の子はね。女の子に教えてもらったお花をずっと覚えてるの。そして、そのお花を見る度に、その子を思い出すんだって。
私が死んでも、私のこと忘れないでほしいから。」
そんなことしなくたって、、
「そんなことしなくても、僕は明李音のこと忘れたりしないよ。」
「忘れなくても、思い出すことはなくなっちゃうかもしれない。
他に好きな子ができて、その子のことばっかりになっちゃったら、寂しいし。
もちろん、!暖にはちゃんと恋愛して、幸せになってほしい。だけど、たまには私も思い出してほしいから。」
「わかった。春のうちに行こっか。」
「うん!!お花たくさん勉強しなきゃっ!!」
「そろそろ戻ろ。」
「うん。付き合ってくれてありがとう。」
僕たちは病室に戻り、すぐに明李音は眠りについた。
さっきまで晴れていた空は、奥の方で曇り始めていた。
夏の匂いがし始める5月中旬、少し冷たい風が心地いい。
僕らは病院の屋上に来ていた。普段なら施錠されてるはずなのだが、明李音が許可を取ったらしい。
取る方も取る方だが、許可する方も許可する方だ。
「暖、気持ちいいね。」
「そうだね。」
月日が流れ続ける度に、季節が変わっていく。
それは、彼女が消える日が迫っていることを知らせるようだった。
明李音は少しずつ弱っていった。体は元気なはずだが、日に日に増す頭痛と、それによる睡眠不足。薬の副作用で思うように体が動かない。
あれだけ元気だった明李音の姿は、随分と変わった。
「暖、、」
「ん??」
「私、お花畑に行きたい。
あぁ、死にたいってことじゃなくて。物理的な方。」
一瞬でも前者かと思った自分を殴ってやりたかった。
「どうして急に??」
「男の子はね。女の子に教えてもらったお花をずっと覚えてるの。そして、そのお花を見る度に、その子を思い出すんだって。
私が死んでも、私のこと忘れないでほしいから。」
そんなことしなくたって、、
「そんなことしなくても、僕は明李音のこと忘れたりしないよ。」
「忘れなくても、思い出すことはなくなっちゃうかもしれない。
他に好きな子ができて、その子のことばっかりになっちゃったら、寂しいし。
もちろん、!暖にはちゃんと恋愛して、幸せになってほしい。だけど、たまには私も思い出してほしいから。」
「わかった。春のうちに行こっか。」
「うん!!お花たくさん勉強しなきゃっ!!」
「そろそろ戻ろ。」
「うん。付き合ってくれてありがとう。」
僕たちは病室に戻り、すぐに明李音は眠りについた。
さっきまで晴れていた空は、奥の方で曇り始めていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。
※他サイトに自立も掲載しております
21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる