「君が好きな小説と僕が好きな君の話」

夜碧ひな

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シナリオ

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昼下がり、という言葉がピッタリあうような暖かい日差しが差す。
夏の匂いがし始める5月中旬、少し冷たい風が心地いい。
僕らは病院の屋上に来ていた。普段なら施錠されてるはずなのだが、明李音が許可を取ったらしい。
取る方も取る方だが、許可する方も許可する方だ。

「暖、気持ちいいね。」

「そうだね。」

月日が流れ続ける度に、季節が変わっていく。
それは、彼女が消える日が迫っていることを知らせるようだった。
明李音は少しずつ弱っていった。体は元気なはずだが、日に日に増す頭痛と、それによる睡眠不足。薬の副作用で思うように体が動かない。
あれだけ元気だった明李音の姿は、随分と変わった。

「暖、、」

「ん??」

「私、お花畑に行きたい。
あぁ、死にたいってことじゃなくて。物理的な方。」

一瞬でも前者かと思った自分を殴ってやりたかった。

「どうして急に??」

「男の子はね。女の子に教えてもらったお花をずっと覚えてるの。そして、そのお花を見る度に、その子を思い出すんだって。
私が死んでも、私のこと忘れないでほしいから。」

そんなことしなくたって、、

「そんなことしなくても、僕は明李音のこと忘れたりしないよ。」

「忘れなくても、思い出すことはなくなっちゃうかもしれない。
他に好きな子ができて、その子のことばっかりになっちゃったら、寂しいし。
もちろん、!暖にはちゃんと恋愛して、幸せになってほしい。だけど、たまには私も思い出してほしいから。」

「わかった。春のうちに行こっか。」

「うん!!お花たくさん勉強しなきゃっ!!」

「そろそろ戻ろ。」

「うん。付き合ってくれてありがとう。」

僕たちは病室に戻り、すぐに明李音は眠りについた。
さっきまで晴れていた空は、奥の方で曇り始めていた。
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