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シナリオ
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走る。
あの時と同じように。
あの時ヘタレていたはずの橋地点では、今や颯爽と駆け抜けることができる。
さっきまで汗が滲んでいたのに、日が暮れるに連れて寒さが際立つ。
病院に着いた頃には、すっかり日が沈んでいた。
対面時間残り二分。受付を押し切って少しでいいと話し明李音の病室に向かった。
息を整えてドアを開けた。
「あい、、ね。。」
彼女は、ナイフを手にし自分に向けていた。
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
病院内は、彼女の発狂で包まれた。
最悪の事態。
あと数秒遅かったら、彼女は、明李音は、死んでいた。
助かった。救えた。
僕が、こんな僕が、彼女の命を、救えた。
「暖、、。」
「遅くなってごめんね。明李音。
ここまで追い込ませて、ごめん。」
「怒らないの.....??」
「悪いのは、僕だから。
もう逃げないって、約束したのに。。
自分が、わからなかった。。
自信が、なかった。」
「明李音!貴様ァ!!」
「待って!!
お父さん、暖は、私を助けてくれたの。
死にたくなった私を、私の命を、救ってくれたの。」
ナイフが転がっているのを見た父親は、僕が明李音を殺そうとしたと勘違いした。
しかし明李音の言葉によって、その誤解は解けた。
「明李音、どうしてそんなことを。」
「暖と会えないんじゃ、生きてたって意味がない。
彼は、私に生きる希望をくれたの。
生きたいと思わせてくれたの!
お願い。私から彼を、暖を奪わないで。」
「暖くん、明李音を助けてくれてありがとう。」
「お母さん、。」
「一番近くにいたのに、それに気づかないなんて、親失格ね。
忘れないで。明李音は、私たちにとって宝物なの。
でもそれだけじゃ、この子が可哀想だもの。
暖くん、明李音の側にいてあげて。私たちじゃ、話せないようなことも、話せるはずだから。」
その夜は、看護師が交代で一晩中明李音に付いていたそう。
明李音の両親と別れ、僕は家に帰った。
久しぶりに開いたスマホには、明李音からの「大好き」の文字が送られてきていた。
それにならって、「僕も大好き」とだけ返信し、スマホを閉じた。
今日は少しだけ、ゆっくりと寝られる気がする。
あの時と同じように。
あの時ヘタレていたはずの橋地点では、今や颯爽と駆け抜けることができる。
さっきまで汗が滲んでいたのに、日が暮れるに連れて寒さが際立つ。
病院に着いた頃には、すっかり日が沈んでいた。
対面時間残り二分。受付を押し切って少しでいいと話し明李音の病室に向かった。
息を整えてドアを開けた。
「あい、、ね。。」
彼女は、ナイフを手にし自分に向けていた。
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
病院内は、彼女の発狂で包まれた。
最悪の事態。
あと数秒遅かったら、彼女は、明李音は、死んでいた。
助かった。救えた。
僕が、こんな僕が、彼女の命を、救えた。
「暖、、。」
「遅くなってごめんね。明李音。
ここまで追い込ませて、ごめん。」
「怒らないの.....??」
「悪いのは、僕だから。
もう逃げないって、約束したのに。。
自分が、わからなかった。。
自信が、なかった。」
「明李音!貴様ァ!!」
「待って!!
お父さん、暖は、私を助けてくれたの。
死にたくなった私を、私の命を、救ってくれたの。」
ナイフが転がっているのを見た父親は、僕が明李音を殺そうとしたと勘違いした。
しかし明李音の言葉によって、その誤解は解けた。
「明李音、どうしてそんなことを。」
「暖と会えないんじゃ、生きてたって意味がない。
彼は、私に生きる希望をくれたの。
生きたいと思わせてくれたの!
お願い。私から彼を、暖を奪わないで。」
「暖くん、明李音を助けてくれてありがとう。」
「お母さん、。」
「一番近くにいたのに、それに気づかないなんて、親失格ね。
忘れないで。明李音は、私たちにとって宝物なの。
でもそれだけじゃ、この子が可哀想だもの。
暖くん、明李音の側にいてあげて。私たちじゃ、話せないようなことも、話せるはずだから。」
その夜は、看護師が交代で一晩中明李音に付いていたそう。
明李音の両親と別れ、僕は家に帰った。
久しぶりに開いたスマホには、明李音からの「大好き」の文字が送られてきていた。
それにならって、「僕も大好き」とだけ返信し、スマホを閉じた。
今日は少しだけ、ゆっくりと寝られる気がする。
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