「君が好きな小説と僕が好きな君の話」

夜碧ひな

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夢。それでも良かった。明李音と会えるなら、夢だって。
暖。
そう呼ばれて、聞こえた声が聞き覚えのある声で。
ゆっくりと振り返ると、、
そこに立っていたのは、紛れもなく、白石だった。

「最近、暑いね。」

「どの口開いて世間話してんだ。お前に用はない。」

「いいじゃん。ズタバの新作奢ってあげてるんだから。そんなボソボソしゃべる人だっけ。印象違う。」

彼女の声と聞き間違えるなど言語道断。だがそれほどまでに、彼女と会っていないことが裏付けられた。

「何の用だ。」

「謝りたかった。図書室で言ったこと。」

「え?」

「私たちを避けるようになったって言ったでしょ。あれ正式には、一緒に帰ったりしなくなったってだけで、私たちを毛嫌いするようになったわけじゃないの。
明李音が記憶喪失って知って、動揺して。
あんたに、当たっただけなの。
デマを言いふらしたのも私。感ずいてただろうけど。
本当にごめんなさい。明李音のお見舞い言った時、あの子、あんたのことすごい嬉しそうに、楽しそうに喋るの。」

「え....?」

「あの子にとって、あんたが大切な人なんだって思ったら、胸が痛くて。許してほしいとか、そういうのじゃない。ただ、謝りたかったの。ごめん。」

「今更、遅い。」

「え??」

「僕は、悪魔なんだ。彼女を、悪い方向へと導く、死神なんだ。
君の言ったことは、間違いじゃなかった。
あんたのせいだ。
その通りだよ。」

「だから、!それは本当に思ってた訳じゃなくて!」

「だとしても、合ってる。明李音の父親からも言われた。お前のせいだって。彼女に合わせる顔がない。」

「だっさ。」

「え..?」

「ダサいって言ってんの。合わせる顔がない?
あんたが見つけようとしないからでしょうが。
明李音のこと知らないからそんなこと言えんのよ。
明李音はね、誰に何を言われようと、あんたを愛してんの!
どんなに苦しくたって、どんなに怖くたって、暖がいてくれるから生きていたいって思うって。
暖が私を生きさせてくれたって。
もし私が死ぬ時は、側にいてほしいって。

こんだけあの子はあんたを愛してるのに、何生ぬるいこと言ってんのよ。
あんただって知ってるんでしょ。明李音の余命を。
ダラダラしてる場合?もう二度と、あの子に会えないかもしれないのに?
ちゃんと正面から、ぶつかってあげなさいよ。
あの子を救えるのは、あんたしかいない。」

僕は、
やっぱり最低だ。
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