「君が好きな小説と僕が好きな君の話」

夜碧ひな

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シナリオ

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彼女が倒れてから、すぐに検査が行われた。
事故発生後の検査によって発覚した頭部への損傷が日に日に脳内を蝕んでいたらしい。
当時は小さく、発見まで至らなかった。その後定期的な検査でも異常はなかったが、ここ数日で一気に悪化。脳に影響を及ぼす腫瘍となり、今日の発見に至った。
そして、神様とは、本当に不平等なもので。

「残念ながら、明李音さんは、もって一年の命かと。」

明李音の両親は医師と話をしていた。正式には娘の命を助けてくれという懇願だったが。
涙を流す両親と同じ空間にいるのがあまりにも辛く、明李音の病室に戻ることにした。

「明李音。」
「あ、暖。」
「大丈夫なの?」
「もちろん!ちょっと頭が痛むけど、全然平気だよ!」

彼女はまた何か言いにくそうな顔をこちらに向ける。

「暖。
さっき、言いそびれちゃったから、言うね。
私と、付き合ってください。」
「え。?」

僕は、どうしたらいいのだろうか。彼女を救える方法は。そんなことよりも今付き合っていいのか。彼女に余命は伝えないのか。
どっちつがずの考えが頭の中を駆け回る。
全身パニック状態だった。
無駄に涙が止まらない。どう止めようとしても、止まらない。彼女の温もりを肌で感じる。触れてなくても、この空間が、声が、とっても。

「どうしたの?私と付き合うの、嫌?」
「違う。。違う。」

違うんだ。そうじゃない。付き合いたい。大好きだから。でも、もしこれ以上関係を持ったら、君は死ぬのが怖くなる。僕も離れるのが、怖くなる。
そんなこと、考えたってしょうがないのに。やっぱり涙が、、

「ねぇ、暖。」
「ごめん。僕からも、言わせてほしいな。」
「え?」
「明李音、僕と、付き合ってください。」
「はい!」

僕の涙などお構い無しに満面の笑みを浮かべる彼女にさすがの涙も晴れてくれた。
例え、終わりが見えたって。終わるまでは終わってない。
最後の最期まで、僕は彼女の手をつかみ続ける。そんなことをそっと心に誓った、今日だった。
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