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犬猿なのに、
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犬と猿って犬猿の仲と言われるくらい仲が悪いというのは、もう昔々の話だと思うんだ。
ボクらがその代表さ。
今までそうだったから。
これからも、そうならいいな。
「さるる、かわいい……」
ボク……猿山希壱をふざけたあだ名で甘く呼ぶやつがいる。
そいつはけんいぬ……戌川健ニの耳は黒い毛が三角形状にふわふわと生えていた。
ボクはメガネザルの獣人、けんいぬはコーギーの獣人なんだ。
「どこが?」
疑心暗鬼なボクがトゲがあるように聞くと、少し厚い下唇が弧を描く。
「メガネザルってよくわかる大きい目とか」
メガネザルのわかりやすい一番の特徴は小柄なとこだし、なんて思う。
でも、自分でディスっちゃダメじゃんって1人突っ込みを入れるように鼻で笑うと、眉間にキスをされた。
「感じやすい丸い耳とか」
やわやわと知らないうちに触られていた猿耳に吐息とともにけんいぬが囁く。
ボクはくすぐったさで小さく震える。
「さるる、気持ちいいでしょ?」
ふふふと優しく笑ってくれるけんいぬにそうだと言えるほど、ボクは素直じゃない。
本当にじゃれあいくらいの感覚だし。
「全然、興奮のこの字も出ないよ」
ボクは発情期がないオメガ……出来損ないだから。
フェロモンも出ないから、もはやベータだと言い聞かせてるんだ。
それでも、けんいぬは穏やかな微笑みを浮かべて身体を起こした。
「獣耳は出てきたけど、まだまだなんだね」
サイドテーブルから紫色の小瓶を持ってきたけんいぬ。
パカッ……シュシュ、シュー
素早く蓋を取り、空気やけんいぬ自身に噴射していく。
それはボクが調香した香水……ボク専用の発情促進剤だ。
イランイランをベースにミドルのラベンダーの香り、トップのチューベローズの香りがちょうどよく混じり合ったもの。
どっちもリラックスの効果があるのはよく知られているんだけど、それだけじゃない。
ラベンダーは溜まっている感情を吐き出させる効果、チューベローズは催淫効果があるんだ。
だから鼻腔から吸った途端、ズクンとボクの身体が疼き始めた。
「んっ、ンあ……ア」
痛くはないけど、ピリピリと全身が痺れる感じがする。
「身体、火照ってきたね……でも、楽しみはこれからだよ」
けんいぬの低く響く声を聞いて、少しずつ潤んできた瞳で追う。
白くて高い人間の鼻が、黒くて固い犬に鼻先に変わっていたんだ。
獣化……けんいぬがもっと発情してきた証拠だ。
カッコいいよ。
ボクらがその代表さ。
今までそうだったから。
これからも、そうならいいな。
「さるる、かわいい……」
ボク……猿山希壱をふざけたあだ名で甘く呼ぶやつがいる。
そいつはけんいぬ……戌川健ニの耳は黒い毛が三角形状にふわふわと生えていた。
ボクはメガネザルの獣人、けんいぬはコーギーの獣人なんだ。
「どこが?」
疑心暗鬼なボクがトゲがあるように聞くと、少し厚い下唇が弧を描く。
「メガネザルってよくわかる大きい目とか」
メガネザルのわかりやすい一番の特徴は小柄なとこだし、なんて思う。
でも、自分でディスっちゃダメじゃんって1人突っ込みを入れるように鼻で笑うと、眉間にキスをされた。
「感じやすい丸い耳とか」
やわやわと知らないうちに触られていた猿耳に吐息とともにけんいぬが囁く。
ボクはくすぐったさで小さく震える。
「さるる、気持ちいいでしょ?」
ふふふと優しく笑ってくれるけんいぬにそうだと言えるほど、ボクは素直じゃない。
本当にじゃれあいくらいの感覚だし。
「全然、興奮のこの字も出ないよ」
ボクは発情期がないオメガ……出来損ないだから。
フェロモンも出ないから、もはやベータだと言い聞かせてるんだ。
それでも、けんいぬは穏やかな微笑みを浮かべて身体を起こした。
「獣耳は出てきたけど、まだまだなんだね」
サイドテーブルから紫色の小瓶を持ってきたけんいぬ。
パカッ……シュシュ、シュー
素早く蓋を取り、空気やけんいぬ自身に噴射していく。
それはボクが調香した香水……ボク専用の発情促進剤だ。
イランイランをベースにミドルのラベンダーの香り、トップのチューベローズの香りがちょうどよく混じり合ったもの。
どっちもリラックスの効果があるのはよく知られているんだけど、それだけじゃない。
ラベンダーは溜まっている感情を吐き出させる効果、チューベローズは催淫効果があるんだ。
だから鼻腔から吸った途端、ズクンとボクの身体が疼き始めた。
「んっ、ンあ……ア」
痛くはないけど、ピリピリと全身が痺れる感じがする。
「身体、火照ってきたね……でも、楽しみはこれからだよ」
けんいぬの低く響く声を聞いて、少しずつ潤んできた瞳で追う。
白くて高い人間の鼻が、黒くて固い犬に鼻先に変わっていたんだ。
獣化……けんいぬがもっと発情してきた証拠だ。
カッコいいよ。
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