生き急がない二人

ヤキモチ

　しぃはずっとドライ。

同棲してからも変わらなかった。

でもな、めっちゃかわいいんやで。

　「今日おーたと呑んでくるから」

「おーたさんのとこに泊まってきてもいいよ」

おーたはグループで一番のイケメン。

クールな顔の割りにフレンドリーないいやつだから、プライベートでもけっこう一緒にいる。

「くる？」

「いやいや、邪魔なだけでしょ」

しぃは身支度を整えながら、半笑いをする。

しぃのところは子持ちの人が多くて飲み会はないんやて。

「女の子呼んだら華やかになるやん」

「かわいい子呼んだら？　芸能人でモテるんだから、たくさん知ってるでしょ」

かわいくないことばっかり言って、しぃは会社にいってしもた。

　おーたと数人の男でわいわい呑んで楽しいけど、しぃが心配になって電話をかける。

８コール目でやっと出るから、ボクは逆に不安になる。

「なに、どうしたの？」

「心配になってかけただけ、なにしてたん？」

「お風呂ゆっくり入ってた……めっちゃマッサージできて良かった」

時間を見たらまだ８時……お風呂には早すぎる。

「誰かきとんの？」

ボクは逆に浮気されているかと思って、聞いてみる。

「いや、一人だけど？」

「じゃあこの後なにするん？」

アカン、胸がチリチリ焦げてきとる。

「DVD取りまくって疲れたから寝るよ」

「一人で………？」

「そりゃそうでしょ」

なに言ってんの、とまた半笑いをするしぃ。

「じゃあ私、にっしーとデートするよ」

ブツッと電話が切れた後、俺の頭の血がぐぐっと上った。

にっしーはボクのグループの元メンバー。

しぃがグループを知ったのはにっしーが好きだったから。

今は脱退して、ソロになったけど。

あいつと浮気しとんのか。

悔しくて悲しいボクは呷るように酒を飲んだ。

　ヘロヘロになりながら部屋に着いたボクは寝室へと急ぐ。

とりあえず話を聞こう。

そう思いながら冴えた頭でドアを勢いよく開けた。

ベッドにはしぃ一人。

そして聞き慣れたボーカルの曲が流れていた。

その音の元のスマホを見ると、『にっしー、ヤキモチ』と画面の上に表示されていた。

それに真ん中の画面にはメモ。

"ごめん、バイバイ言う前に切っちゃった"

ハッとしたぼくはしぃの顔を見る。

しぃは涙を流しながら、口角を上げていた。

「アホ……めっちゃかわいいやんか」

ボクは左手で髪、耳、頬の順で撫で、鼻にキスをした。

しょーはしぃに振り回されてばっかです。