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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第503話 文化祭、当日

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”ジョロジョロジョロ”

くるりと円を描きゆっくりと注がれる熱湯。
ドリッパーから部屋全体に広がるコーヒーの香ばしい匂い。
しばしの蒸らしを置き、再び注がれる熱湯。
ポタポタと落ちる淹れたてのコーヒーは、その香りをより一層強くする。

”カタッ”

ドリッパーを取り外し、サーバーからカップへと注ぎ入れる。
その黒色の液体はスッと心の疲れを癒してくれるであろう。

”カチャン”

「三番テーブルへお願いします。」

「はい、マスター。」

マスターが自ら淹れたコーヒーが、メイドの手によってお嬢様方の元へと届けられる。お嬢様方は一連のマスターの所作にうっとりとし、感嘆のため息を漏らす。
天海マスター、完璧でございます。
本日の天海君、ベストに蝶ネクタイ、バーのマスターでも通る様な服装です。
これがまた似合うのなんの、寡黙イケメン、超カッコいいです。

「シェフ、オーダー入ります。バナナクレープ三、苺クレープ二、クッキー三です。」

「了解、クッキーとお皿の準備お願い。」

「はい、シェフ。」

俺はクレープ焼き器に生地を流しトンボをくるっと回す。厚過ぎず薄すぎない絶妙な厚み、これが意外に難しい。
焼けた生地はスパチュラと呼ばれる専用のヘラでサッと剝がして作業台へ。
そこで生クリーム、フルーツを盛り付けてスパチュラを使い器用に折り畳んで出来上がりである。

"スーッ、パサッ、タッタッタッ、パタン、パタン、パタン"

リズミカルな動きで次々に作られるクレープ。

「ご注文の品上がりました。どんどん運んでください。」

「「はい、シェフ。」」

うん、我ながら上達したもんだ。最初は失敗作を量産したもんな~。なぜかそれを嗅ぎ付けた篠原たち仲良し四人組に次々と食べられていきましたが。と言うか何故に集まるスポーツ専科、那須さん、貴女はそんなキャラじゃないでしょう。他の連中と一緒になって上目遣いでうるうるしない、うざいわ欠食児童ども。結局材料が無くなるまで作らさせられたのは、修行の一環だと思う事にしましょう。(遠い目)

「ご主人遊びに来たぞ、私にもなんか食べさせてくれ。」

はい?何で葛の葉がここにいるの?

「ん?マザーから聞いて無いのか?Aクラスで"hiroshi"が演劇公演をやってるだろう?それ自体はいいんだけど内容が問題でね、"hiroshi"演じる王子が宰相や騎士団長に裏切られて国を乗っ取られるって奴なんだ。
これを見た時の”hiroshi”ファンが何をするのか分からないって木村からSOSが入ってね、正式な警備依頼としてあたしと増山さん、ブリジットの三人で来たってわけさ。交代で休憩に入っているから今は私の休みの番、折角なんでご主人の所に顔を出してみた。だからなんか食べさせてくれ。」

うわっ、木村君可哀想。因みに木村君何の役なの。

「あぁ、裏切りの騎士団長だったぞ。そんで高木が悪の親玉の宰相、他の男子生徒も色々悪役をやらされてたな~。
観客の視線がヤバいのなんの、これは警備呼んで正解かもね。
お、このクレープ美味しそう。ご主人、今度家でも作ってくれ。」

分かった分かった、いいから大人しく食べとけ。
でもひろし君との舞台で敵役って、Aクラスの男子生徒総入れ替えになるんじゃないの?何か御愁傷様です。

「いらっしゃいませお嬢様。あの、つかぬことお伺い致しますが、シェフとは一体どのようなご関係で?」

「ん?あたしはご主人のしもべだぞ。お、旨そう。ハムハム、美味しい!ご主人最高。やっぱりご主人の手は魔性の手だな。あたしはもうメロメロだぞ。」

"え、こんな美女をメロメロ?魔性の手って大人の関係!?"
"やっぱりあの噂は本当の事だったの?"
"風見屋風紀委員長を誑かしたって言う奴?学園の影の支配者って・・・"

だ~、葛の葉言い方~!こいつはうちの従業員だから、警備の仕事でAクラスに来ている者の一人だから。変な誤解はしないように。

「大地君、遊びに来たよ♪風子に大地君の手作りスイーツを食べさせて。」

「お、こっちのメスはご主人のつがいか?ご主人は次々にメスを増やすな。群れが大きくなる事はいい事だと思うぞ。」

"えっ?噂をすれば風見屋風紀委員長!?佐々木君のことを大地君って"
"メスを増やす?群れって、佐々木君って益荒男ますらお!?"

「大地君~♪」
「ご主人、お代わりをくれ~♪」

"ヒソヒソヒソヒソ"

だ~、風評被害だ~!

その日、彼に新たな称号が加わった。
"美女たらし"
その称号は、彼の必死の弁明も虚しく、その後訪れたブリジットの登場により不動のものとなるのである。(合掌)
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