男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora

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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第457話 警護任務 (13)

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ピスタチオ国際空港、そこはタスマニア公国における空の玄関。
様々な人と物とが行き交い、多くの出会いや別れが生まれるそんな場所。

『ひろし様~、ひろし様行かないで~!』 
『お願い、我が国の全てをあげるから、私たちのひろし様になって~!』

搭乗ホールを埋め尽くす群衆、その人々は皆ただ一人の男性を乞い願う。

”パンッ”

打ち付けられた柏手。
広がる甘く優しい香り、それは天使の祝福。
高宮ひろしはその群衆の中をゆっくりと歩み進む。
彼の瞳は優しい微笑みを浮かべ、周りのファンの姿をじっと見回す。
人々は一人また一人と大人しくなっていく。その姿はまるで初心な恋をした乙女の様に。

『みんな、今日は見送りに来てくれてありがとう。タスマニア公国はとても素晴らしい国でした。またいつかこの地に降り立つことを楽しみにしています。
それじゃ、何時か会うその時まで。ありがとうタスマニア公国。』

そう挨拶を残し、彼は搭乗口へと消えて行きました。残された群衆は恋をした乙女の様に、いつまでも彼を想い幸せな気持ちに浸るのでした。

『大変お世話になりましたシルビア・バード副警備主任、いや、今は警備主任でしたね。』

『いえ、お世話になったのはこちらの方です。あなた方がいなければ今頃どんな事になっていたか。我が国を救ってくださったのはあなた方だ、佐々木ハニ子警護官殿、ブリジット・ベルッチ警護官殿、本当にありがとうございました。』

深々と頭を下げるシルビアさん。いや本当大変だったからね~、この滞在中事件の起きない日は無かったから。何なのこの国、犯罪者多過ぎでしょ、と言うかひろし君が犯罪者ホイホイになってたとか?呼び寄せられちゃった感じ?魅了するのはファンだけにしてくれないかな本当。
開会式終了後も記者会見やら晩餐会出席やら大忙しのひろし君。ゲストも大変だよね~。
でも今回ひろし君を呼んだのは成功なのか失敗なのか。世界中の人々の記憶に残る開会式になったのは間違いないけど、やり過ぎと言いますか何と言いますか。
大会関係者から選手一人一人に至るまで、みんな恋する乙女になっちゃいましてね。
え~っと、サッカーのワールドカップだよね?世界の舞台で白熱した試合を期待してたんだよね?
ナニコレ草サッカー?
う~ん、あんなにポーっとしてたらそりゃ試合にはならんわな~。ボールが飛んできたのに気が付いて“キャッ”ってどこの乙女だよ、って言うかみんな乙女だよ。
試合結果がノーゴールの引き分けになったのはせめてもの救いでしょう、あれで負けてたら泣くに泣けませんから。
まぁ、観客皆ボーっとしてたんでブーイングも起きませんでしたけどね。

これまで検挙した各犯罪組織及び国際テロ組織、各国工作員等の問題はまるっと軍にお任せ。警備部及び捜査機関は一時的に彼らの指揮下に入り捜査に協力する事になったそうです。

『それでは我々も行きます。シルビア・バード警備主任もどうかお元気で。』

『佐々木ハニ子警護官殿もお元気で。』

私たちは固い握手を交わし別れを告げる。多くは語らない、なぜならそれぞれの戦場が待っているから。
さらば戦友《とも》よ、何時か会おう、その時まで互いの健闘を祈って。
彼女達の戦いは終わらない。


(side:タスマニア公爵)

『行ったか。』

ピスタチオ国際空港、その滑走路から今一機の国際便が旅立って行った。
その光景を空港特別貴賓室から眺める一人の男性。

『公爵様、空港内の警備は全て問題なく、無事に出立されたとの報告が入りました。』

『であるか、ジャンジバルもご苦労であった。』

『は、ありがたきお言葉。』

公爵はテーブルの紅茶を一口飲んでから深いため息を吐いた。

『ジャンジバルよ、此度彼の者らが関わった案件は幾つであったか。』

『はい、国際テロリスト組織の摘発が三件、アルテイシア・クロイッツをはじめとした誘拐組織及び人身売買組織の摘発が十二件、各国スパイ工作員等の摘発が八件でございます。』

『うむ、それに我が娘の件が二件、彼らが滞在したのが五日間。いくらなんでも多過ぎではないか?我が国はいったいどうなっていたと言うのだ。』

『はい、高宮ひろし殿の登場でこれまで表面化していなかった者たちが一斉に動き出したものかと。その上で警護官殿の協力のもと速やかに捕縛回収を行った事で各組織が我々の動きに気が付かなかったものと思われます。』

『事件が表面化しない事でそれぞれが警戒なしに動いてしまったと言う事か。犯罪を未然に防ぎ大会を無事に迎えられたことは良い事ではあるのだが、複雑な気持ちになるのは贅沢な事なのだろうな。』

上空を異国に向け飛び去る飛行機を見やり、何とも言えない表情を浮かべる公爵。

『それにつきまして非常に気になる情報がございます。これまでは信憑性の薄さからご報告できなかったものでありますが。』

『うむ、よい聞こう。我もここ数日信じられないモノを見続けてきた故にな。』

『公爵様は大和国で起きたユーロッパ王国公館壊滅事件を覚えておられるでしょうか?』

『あぁ、あのときはいったい何が起きたのか情報収集に努めたが結局分からず仕舞であったか。』

『はい、その後に起きましたベッキンガム宮殿崩壊事件も世界的ニュースとして報道されましたので記憶に新しいと思います。この二つの事件はある超常の存在とユーロッパ王国とが揉めた事で引き起こされたとの情報でございます。』

『なんとその様な存在がおるというのか。』

『そしてこれは未確認情報なのですが、ユーロッパ王国国王ジュゼッペ・ウル・ユーロピアが極秘裏に大和国に入国、その超常の存在と和睦を行ったとの事でございます。』

『な、それではユーロッパ王国はその超常に全面降伏をしたと言う事か?』

『その様に。』

驚きのあまりソファーから立ち上がった公爵は、膝を折り再び深く座り込んだ。

『ユーロッパ王国の事件において死者及びケガ人は確認されておりません。それは今回我が国での一連の事件においても同様です。ただ違う点は、我が国においては物的被害が一切なかったという点のみです。』

『我が国は見逃された、いや、丁寧に扱われたと言う事か?』

『はい、それも赤子をあやすかのように優しく。彼の者たちがその気になればタスマニア大陸自体が消滅していたやもしれません。』

『ハッハッハッハッ、そうであるか。
この度大和国には高宮ひろし殿を派遣していただくという大変な誠意を示してもらった。これに対し我が国が何も返さぬというのは礼を失する事となろう。我はこの行為に報いる為、彼の国を訪問し友好の証としよう。
大和国政府には正式に訪問の申請を行い調整に当たる様に、また極秘裏の謝罪は速やかに行うよう取り計らえ。』

『承知いたしました。委細お任せくださいませ。』

歴史は動く、しかしその裏で一体何が起きていたのかを民衆は知らない。人々はその表面を見て物事を考えるしかないのだから。
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