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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第443話 警護任務

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上空一万メートル、そこは生物の生存を否定する天空の世界。窓の下に広がる雲海は綿の様に見えるもそこに乗る事は叶わない。我々人類はその遥か下の地面に這いつくばって生きる生き物なのだから。
いつの日にか人類がこの空に住居を求めるようになったのなら、それを神はお許しになるのだろうか。
(「タスマニア来訪記」 著者 平田恵子)

「ねぇブリジット。」
私は読んでいた旅行記を閉じ、隣に座る連れに語り掛ける。

「何ですかご主人。」
彼女は手元の携帯ゲームから顔を上げ、私の顔を見やった。

「何で私ここにいるの?」


"コンコンコン"

「失礼します。Saki様、お母様がお呼びです。」
ん?マミーが呼んでるの?わざわざ呼び出しって何、凄い嫌な予感しかしないんですけど。
ノエル、マミー何か言ってた?

「さぁ、私には何も。」
一礼をして戻って行くノエル、行きたくないな~。

マミー、御用が御有りとの事ですがなんざんしょ。

「あ~、お前に行って欲しい所があってね。ただ色々問題がね。」

おや?話しする事自体を躊躇するってマミーにしては珍しくない?
どうしたのよ一体。

「あぁ、まぁいいか。あんたに行って欲しいのはタスマニアなんだよ。」

は?何言ってるの?タスマニアってあのタスマニアだよね、独裁国家タスマニア公国。
マミーは俺に死ねと言うのかな?

独裁国家タスマニア公国、女性至上主義を掲げる大陸国家。男性を保護し優遇政策を取る国家が多い中、男性は女性に管理されるべきだと主張し、国内の男性を完全管理する異質の独裁国家である。だが、決して武力による支配ではなく融和と教育によって国を治める平和主義の国でもある。
ではあるんですけどね~、あそこ優性遺伝法ってのがあってですね~。
イケメン以外隔離されちゃうんですよね~。

そう、イケメン審査をクリア出来ない男性はネバーランド送りにされちゃうんです。嫌なネバーランドだなおい。
まぁだからと言って強制労働させられたりとか日々監視生活とかではないんですけどね、大陸国家と言うだけあって国土は広いですから。北海道くらいの大きさの地域に国中の"じゃない男性"が集められて生活しているのだそうです。
彼らには子孫を残す権利は与えられていないものの、生活自体はとても快適なんだそうです。
なんだそうですけどね、嫌じゃそんな国。あんたあの国って外国人だからって容赦ないのよ、空港傍の出島みたいな所で隔離よ?しかもAI診断と視認によるダブルチェックよ、私《わたくし》真っ先に捕まりますから。いくらメイクしても目の大きさが変わる訳じゃありませんから。整形しててもアウトって言うある意味いさぎよい国ですからね?
本当、中学の頃この国の事を知った時はどれだけ大和国に生まれた事に感謝したか。あの国の人々はそれが普通でも私はごめん被ります。

「そうなんだけどね、今度女子サッカーのワールドカップ選手権があるだろ?それに"hiroshi"が歌のゲストとして呼ばれていてね、スタジオCherryとしてはその仕事を踏み台として更なる飛躍を遂げたい訳だ。国としてもタスマニアとは貿易面でかなり親しくしているからね、"hiroshi"自身も乗り気だし。
ただそうなると護衛がね、あの国究極のイケメン大好き国家に"hiroshi"を送って無事に済むとはどうしても思えなくってね。」

まぁそうだろうね、虎穴に入らずんば虎児を得ずとは言うけど虎のお母さん舐めんなよって話しだからね。虎の子なんか求めてないで猫飼いなさいと言いたい。
この話し断れないの?どう考えても無謀よ?

「まぁ政府の言い分は"hiroshi"の容貌なら問題ないの一点張りでこっちの話しを聞かなくってね、にっちもさっちも行かないのさ。」

まぁ、後は本人次第じゃない?俺に出来る事はないっス、お疲れ様です。

「いやいやいや、あるから、お前さんにしか出来ない事が。」

は?ないでしょ、入国すら出来ないのにどうしろと。

"パサッ"

テーブルの上に差し出された物、それは一冊のパスポートであった。
確認してみろと言わんばかりのマザーの眼差し。
俺はいぶかしげにそれを拾い中を開く。

[ 大和国籍 氏名 佐々木ハニ子 ]

・・・はぁ~!?
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