男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora

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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第392話 お昼休みの出来事

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天から注ぐ温かい日差し、木々を吹き抜ける爽やかな風。
五月、それは新緑の季節。
その陽気に誘われて、学園生徒はお昼ともなれば校庭や中庭に繰り出します。
斯く言う私も陽気に誘われた一人。ノエルお手製のお弁当を片手に芝生の綺麗な中庭へと繰り出した男、どうも、最近だらけてないかと言われその通りだな~とつくづく実感するのっぺり佐々木です。
枕詞が長い?そうですか?タレントとしてそいつはまずいですね。今度北川さんに相談してみます。

俺は一人ベンチに腰掛けお弁当を広げる。うん、いつ見てもノエルのお弁当はおいしそうだ。アスパラガスのベーコン巻きって楊枝が邪魔って思ってたけど、かわいいキャラクターの付いたブラスチック製のものだと見栄えもいいのね。青物ってレタスとサニーレタスどっちが人気なんだろう。食べやすさならサニーレタスだけどレタスのシャキシャキ感も捨てがたい。
で、本日のメイン”豚の角煮”。お弁当用にあんかけ風にしてあるのがみそ、ご飯との相性抜群でしょう~♪

にしてもこの学校って本当、学園モノのラノベに出てくる学校みたい。イケメンがわらわらいて可愛い制服着た女子生徒がいて。乙女ゲームに転生して逆ハーレム築いちゃう奴。
こんなに綺麗な芝生の中庭なんて、普通の学校にはないからね?少なくとも公立にはなかったな~。(遠い目)

「お前との婚約を破棄する!!」

”!?えぇ~~~~!”

行き成りの展開に箸が止まる。待て待て待て、婚約破棄ってあの婚約破棄だよね?
えっ、こんなの実際あるの?しかもこんな学園の中庭で?マジでゲームの世界じゃないだろうな、やめてくれよな、おい。

「お前が彼女に行った数々の嫌がらせ、バレないとでも思ったのか。もうお前にはほとほと愛想が尽きた。どこへなりとも行くがいい。」

崩れ落ちる女子生徒。その前には目と目を合わせ仲睦まじい姿を見せる男女。
二人は笑顔で去っていく。残されたのはただ己の行動を悔いるように悲しみに沈む女子生徒ただ一人であった。

「”カット“、いかがでしたか?十分堪能していただけましたか?」

物陰からわらわら集まる別の集団。彼女らは皆腕にスタッフと書かれた腕章をつけている。

「はい、婚約破棄されて捨てられる女、凄くゾクゾクしました。ありがとうございました。こちら御約束の品です。」

「はい、確かに頂きました。編集したVTRは後程お渡しいたしますのでお待ちいただければと思います。この度は我が演劇部をご利用いただきありがとうございました。」

「「「ありがとうございました。」」」

”パチパチパチパチ“
何故か鳴り始める拍手。あ、さっきの男女が戻ってきて女子生徒と握手している。
これって一体何?

「あれ、大地君、今日はお外でお昼かな?そう言う時はお姉さんも誘ってっていつも言ってるじゃない。最近レインの返事もそっけないし、お姉さん寂しいぞ?」

”ここ良いかしら?”とベンチの開いているスペースに座る女子生徒。って風子さんどうしてここに。

「ん?お昼休みの見回りだけど?何か人が集まってる様だったから見に来たんだけど、演劇部が”公演”をやってたのね。どう?びっくりしたでしょう。」
隣に座ってどや顔の風子さん。それよりも俺には先ほどのハプニングバーのような光景の方が気になって仕方がない。ここは素直に先輩に教えを乞う事にした。

はい、行き成りだったんでめちゃくちゃビックリしました。あれ一体何だったんですか?

「あれはね、何年か前に流行ったドラマの再現なの。小説や漫画、ゲームでも目茶苦茶使われてるシチュエーションで、女の子の中では憧れのワンシーンなの。それに目を付けた当時の演劇部部長が校長先生に直談判して、演劇部が依頼を受ける形で”公演”として行う事になったのよ。
これがなかなか好評でね?新たに選ばれる側、捨てられる側、どちらもかなり依頼があるそうよ。男子生徒もノリノリで参加していて、演劇部からの依頼を断る事は少ないって聞いているわ。
学園側も生徒の息抜きになるならと許可しているみたい。こんなこと他所では経験できないしね。」

うん、確かに無理だわ。漫画の様なこてこての学園、夢のような超イケメン。条件揃いまくってたのね、当時の演劇部部長超敏腕。

「分かった?この学園には他にも面白い話や不思議な話があるから何でもお姉さんに聞くんだぞ?」
そう言い人の頭を撫でる風子さん。俺って完全にダメ男的にロックオンされてないかい?

「あ、委員長がまた不審者に誑かされています。風紀委員全員集合、委員長をお助けしろ。のっぺり顔、貴様風見屋委員長を誑かすとは何事だ、教育してやる。お縄につけ~!」

げ、風紀委員副委員長、あの人前も俺の事追い掛けて来てたじゃん。風見屋風紀委員長大好きっ子はしつこいんだよな~。
俺は急ぎお弁当を片付け、脱出を図る。
「それではお嬢様、私はこの辺で失礼いたします。午後の授業も頑張ってください。」
一礼し走り去る俺。後方から”あ~ん、大地く~ん”とか”逃げるなこの女誑し”とか聞こえるが知った事ではありません。
この逃走王、捕らえられるものならやってみるがいい!


(side:Gクラス女子)

「ねぇ、あのベンチでいちゃついてるの、のっぺりじゃない?」
Gクラスの廊下側の窓からは中庭の綺麗な芝生の庭が見える。そしてそこのベンチには特徴のない顔をした男子生徒が座っており、隣に寄り添うように座る綺麗な女子生徒の先輩に頭を撫でられていた。

「「「なんだと!のっぺりのくせに生意気な~!」」」

大会で好成績を出して奴にガッツリ奢らせてやる!!
Gクラス女子生徒の気持ちが一つになった瞬間であった。
彼女達の向上心嫉妬心がこれまでにない記録や結果を生み出す事、そして自身の懐具合が悲惨な状態になる事を、この時ののっぺりはまだ知らない。
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