男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora

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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第388話 ここってどこ? (2)

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ふぁ~、おはようございますって知らない天井。
え~っと、あぁ思い出した。俺人違いで変なお城に連れて来られちゃったんだ。
見渡すと品の良い調度品が並ぶ室内、天井は高く圧迫感は一切ない。窓の外に広がる湖が、朝の日の光に煌めいている。
こんなの観光旅行だったら幾ら出したら泊まれるんだ?ある意味ラッキーだったのかもしれない。
さてそんな事を言ってる場合じゃないな、仕事が待ってますんでブリジットさんに最寄りの町まで送ってもらわねば。
俺はキャリーバックを引いて部屋の扉を”ガチャッ“・・・開かない。
”ガチャガチャッ”
これって外から施錠されてるって奴?
う~ん、空港で声を掛けられる。⇒どこか遠い場所のお城に連れて来られる。⇒よく分からないけどなぜか一泊。⇒軟禁される。
これってよく考えなくっても男性誘拐事件じゃね?
えっ、大崎先生がフロンティア連合国の空港で言っていたアレ?
って事はブリジットさんって誘拐犯の一味・・・うわ~、やっちまった~。
全然気が付かんかったわ、そうだよどう考えても可笑しいじゃん、これ誘拐じゃん。なんで気が付かんかな俺、情けなさすぎて落ち込むわ~。しかもここって跳ね橋じゃん、どうやって出て行けばいいのさ。

取り敢えず気配を探る。
・・・いないね。マジかよ、完全に軟禁じゃん。
窓の外に広がるは森の湖。
う~ん、何とかなるかな?
俺はキャリーバックを担ぎ上げ、窓辺で一人叫ぶのだった。

「俺の自由を縛れると思うなよ、我こそは逃走王なるぞ!アイキャンフライ!」


(side:エマニュエル・ビゼット)

歴史ある建造物のとある一室、そこではこの国の中枢を担う者たちが祝宴を上げていた。

『流石我が国最高峰魔法士エマニエル・ビゼット卿、あれだけ恐れられていた東洋の怪異をわずかな策をもって封印せしめるとは。あなたは我が国の誇りだ。』

『なにより素晴らしいのはその星見の力、彼奴の襲来を予見し罠を張り巡らせるその智謀、もはや感嘆のため息しか出ませんわ。』

『しかしてどの様にしてあ奴を油断せしめたのか、その所をよろしければお教え願いたいのですが。』
参加者は皆少年少女の様なワクワクとした面持ちで、英雄の話に耳を傾けた。

『いえ、私のしたことは難しい事ではありません。これまでの報告から私は奴の性質にある仮説を立てたのです。あれは人の悪意に反応するのではないかと。
大和国における御劔山の小隊制圧も大使館襲撃も、その悪意の強さによって被害が違っているように感じました。げんに御劔山の兵士たちは皆元気に帰国しましたし、大使館職員もその日のうちに目を覚ましている。しかし首謀者たるマクベス卿やマルソー大使は未だ意識を覚ましておられないとか。
後に交渉に向かった我が国の精鋭能力者たちも彼の者に対する態度次第で被害の状態に違いがありました。
つまり奴は悪意を感じる事が無ければ割と扱いやすい怪異ではないだろうかと言うものでした。
そこで私はこの自動人形を使者として立てる事にしたのです。』
そこに佇んでいたのは一人の美しい女性。但し彼女は表情もなくただじっとしているだけであった。

『これこそ我が最高傑作、自動人形ブリジット・ベルッチ。元はあまり才能のないただの使いパシリであった彼女も、我が英知をもって今では優秀な人形へと生まれ変わったのです。
これぞ我が力、魔法士協会は永遠に不滅なのですよ。』

”おぉ~”上がる歓声。
王宮筆頭執事ベンジャミンが倒れ、賢者クリスティーヌ・カサンドラが倒れ、王国最強と呼ばれたジェームス卿が倒れた今、この国を支えるのはこの人物しかいない。
ユーロッパ王国魔法士協会会長エマニュエル・ビゼットが、名実共にこの国の最高峰に上り詰めた瞬間であった。

『皆様、お待たせいたしました。謁見の間の準備が整いましたので、皆様のご移動をお願いいたします。』

エマニエルは興奮していた。ついに自分はここまで来たのだと、この国の最高の権威により自分の名は永遠にユーロッパ王国に語り継がれるのだと。

『ユーロッパ王国国王陛下の御入室です。』

”ガバッ”
一斉にこうべを垂れる一同。

『皆の者、面を上げよ。』

正面に向き直る、そこには今代のユーロッパ王国国王の姿があった。

『して、此度の怪異の騒動、無事終息したとの報は誠であるか?』

『は、国王陛下に申し上げます。この度我が星見にて彼の怪異の襲来を予見、策をもちいまして我が居城に封じる事に成功いたしました。』

自らの業績を誇り胸を張るエマニエル・ビゼット。
その姿にすべてが終わったことを悟り、ほっと胸を撫で下ろす国王陛下。

『そうであるか、本当にご苦労であった。そなたは我が国の"救国の英雄"である。勲章及び報奨の授与は、後程日を改めて行う事としよう。事の内容が怪異のものである為に広く国民に喧伝出来ぬ事、非常に申し訳なく思う、許されよ。』

国王はエマニエル・ビゼットに対し深く頭を下げた。それはこの国における最大の謝辞であった。

『では魔法士協会会長エマニュエル・ビゼット、そなたの業績をたたえ祝宴の席を用意した。皆の者、この英雄の偉業を皆でたたえようではないか。』

『『『おぉ~!』』』


”カンッ、カンッ、カンッ”

謁見の間へ続く廊下を、一人の男が歩いていた。
ここは王宮、王のおわす場。
しかし誰も彼を止める者はいない。
彼は無人の荒野を行くがごとく、ただ真っ直ぐこの場所を目指していた。

”ガチャッ、ギィーーーーーッ”

突如開かれる荘厳な扉、この場にいた物の目が一斉に其方へと向く。

”カンッ、カンッ、カンッ”

その男はただ静かに前を進む。

誰も動かない。いや、動けない。今この場にいる者の心を占める感情、それは恐怖。
何故怖いのか、なにが恐いのか、そのような事はもはやどうでもいい。唯々怖いのだ。生命として備わった根源的な恐怖が、全細胞を魂を蹂躙するのだ。

”カンッ、カンッ、カンッ”

嫌だ嫌だ嫌だ怖い怖い怖い逃げたい逃げたい逃げたい。
だが動かない、動けない。

『さて、色々やってくれたじゃないか。探したぞ。』

この国は終わった。
本能が告げる、自らの終焉を。

『で、親玉はお前か、ユーロッパ王国の大将。』

”ドンッ”
吹き荒れる力の奔流、それは海、巨大な大津波が今この国を覆い隠そうとしていた。

『これは最後通告だ。この国をどうするのかはっきり決めろ。』



”緊急ニュースをお知らせいたします。本日午後四時頃、ベッキンガム宮殿において大規模な崩壊事故が発生いたしました。歴史ある建造物全てが崩壊、現場はまるで更地のような様相を呈しています。幸い死者は報告されていませんが、現在懸命な救助作業が行われています。
繰り返します。本日午後四時頃、ベッキンガム宮殿にて大規模な崩壊事故が発生いたしました。”
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