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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…
第376話 何をしに来たの? (4) (side : クリスティーヌ・カサンドラ)
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”ゼェ~ッ、ゼェ~ッ、ゼェ~ッ”
目の前で死にそうな顔で転がる使者一団。ここまでの道のりを平気な顔で登って来れた者はわずか数名に過ぎなかった。
その一人、ユーロッパ王国において最強と謳われ王宮筆頭執事ベンジャミン氏に次ぐ実力者と言われているジェームス卿はいぶかしげな顔で声を掛けて来た。
『クリスティーヌ卿、卿は今回の事態をどう捉えている。私はいまだ完全に状況を掴み切ってはいないのだが。』
『ジェームス卿、実は私も半信半疑と言った所ではあるのです。大和国政府の話しではこの場所は特級危険地帯との事でしたが先ほどより感じるのは清廉な空気と澄んだ気配、一種の聖域と言っても過言ではないでしょう。果たしてこのような場所にそれほどの危険な存在が顕在する事が出来るのか、まったくの疑問なんです。
ですがすべてを否定できないのが先ほどの兵士たち、彼女らはこの度の事件の切っ掛けとなった第四王女拉致未遂事件の実行犯である陸軍特殊部隊の隊員です。その彼女らがまるでこの森を守るかのような行動をとっている。
異常事態としか考えられないのです。』
『総員整列、各自点呼を行え!』
『『『はい、隊長』』』
あれは陸軍特殊部隊司令官シャルロット・ハンニバル、あの猛将と呼ばれ数々の作戦を成功させてきた”ユーロッパ王国の守護神”が今回の首謀者の一人だったなんて。
『ハンニバル殿、シャルロット・ハンニバル司令官ではないですか、あなたほどの方がどうしてこの場に。』
駆け寄り声を掛けたのはジェームス卿であった。彼は以前よりハンニバル司令官と面識があったのだろう、彼の問い掛けに彼女は苦笑いを浮かべながら答えた。
『これはジェームス卿、お久し振りでございます。このような見苦しいお姿をお見せして申し訳ない、恥ずかしながら我が小隊はこの地の者に完全敗北してしまいました。現在の我々は森の自然と安全を守るレンジャー部隊、私の事は司令官などと言う仰々しい呼び名ではなく隊長とお呼びください。』
『何を仰るのですか、ユーロッパ王国の守護神、猛将ハンニバルと言えば国民の憧れ、あなたほどの軍人は他にはいないのですよ!?』
『猛将ハンニバル、私は何を調子に乗っていたのでしょうね。皆に煽てられいい様に使われ、結果ただ部下を危険に晒すだけの無能な司令官。
我々がこうして話が出来るのもひとえに森の守護者の恩情に過ぎないのですよ。』
ハンニバル司令官は寂しそうな顔をしながら話しは終わりとばかりに部隊員の元へ戻っていった。
『隊長、山姫様がおいでです。』
『分かった、お前は列に戻れ。このままお迎えする。』
その御方は静かに森より現れた。ゆったりとした足取り、すべてとの調和がとれたその佇まい。
まるで森そのものが人の姿を取って現れたかの様なその在りよう。
周囲の空気が一気に爽やかな澄み切ったものへと変わる。
「お初にお目に掛かります。私共はユーロッパ王国友好使節団一行となります。この度は御身に拝謁する機会を頂き誠にありがとうございます。」
私は急ぎこの神性に対し最大限の礼を持って挨拶を述べた。
「あなた方はこの度この領域に侵入し勝手を行っていたこの者たちの件でやって来た。そう考えていいのかな?」
神性は聞いていた話しとは真逆の大変理性的で穏やかな印象を受ける存在であった。
「はい、私どもはその件であなた様に謝罪いたしたくこちらに参った次第です。」
我々一行は揃い彼の御方に頭を下げた。
「ふむ、分りました。ではこれらのモノはあなた方が買い取ってくれると考えてもよろしいか?」
”パチンッ”
神性が指を鳴らす。すると目の前には先ほどまでなかった数々の兵器が。軍用輸送ヘリ二台、小銃ライフル武器弾薬等多数。それはこの地で戦争でも始める気かと言わんばかりの装備品の数々であった。
「では使者殿、これらの品々をお幾らで引き取っていただけるのでしょうか?何、大体の価格なら知っていますよ、私が聞きたいのはその付加価値がいかほどのものかと言う話でしてね。
今回のこの山で起きた一連の事件、未だ報道されてはいないではないですか。大使館崩壊は大きく取り上げられていますがね。
その二つの関連性、そしてその背景。なかなかの情報だとは思いませんか?
フロンティア国あたりのモノ好きや報道企業ならいい値を付けて買ってくれると思うんですよね~。
ほら、山の保全は結構入用なんですよ、この粗大ごみ、誰が買ってくれるんでしょうね~。」
背中を流れる冷や汗、それは先ほどまでの神聖なものに対する緊張ではなく、酷く泥臭いそれでいて現実的かつ緊急性の高い危険に対するモノであった。
「あ、ここ電波通りますから本国と相談されてもイイですよ、でもこの場で決めてくださいね、振込先はこちらの口座にお願いします。」
神性よりスッと差し出された一枚の紙、そこには”森と自然を守る会”名義の銀行口座番号が書かれているのであった。
目の前で死にそうな顔で転がる使者一団。ここまでの道のりを平気な顔で登って来れた者はわずか数名に過ぎなかった。
その一人、ユーロッパ王国において最強と謳われ王宮筆頭執事ベンジャミン氏に次ぐ実力者と言われているジェームス卿はいぶかしげな顔で声を掛けて来た。
『クリスティーヌ卿、卿は今回の事態をどう捉えている。私はいまだ完全に状況を掴み切ってはいないのだが。』
『ジェームス卿、実は私も半信半疑と言った所ではあるのです。大和国政府の話しではこの場所は特級危険地帯との事でしたが先ほどより感じるのは清廉な空気と澄んだ気配、一種の聖域と言っても過言ではないでしょう。果たしてこのような場所にそれほどの危険な存在が顕在する事が出来るのか、まったくの疑問なんです。
ですがすべてを否定できないのが先ほどの兵士たち、彼女らはこの度の事件の切っ掛けとなった第四王女拉致未遂事件の実行犯である陸軍特殊部隊の隊員です。その彼女らがまるでこの森を守るかのような行動をとっている。
異常事態としか考えられないのです。』
『総員整列、各自点呼を行え!』
『『『はい、隊長』』』
あれは陸軍特殊部隊司令官シャルロット・ハンニバル、あの猛将と呼ばれ数々の作戦を成功させてきた”ユーロッパ王国の守護神”が今回の首謀者の一人だったなんて。
『ハンニバル殿、シャルロット・ハンニバル司令官ではないですか、あなたほどの方がどうしてこの場に。』
駆け寄り声を掛けたのはジェームス卿であった。彼は以前よりハンニバル司令官と面識があったのだろう、彼の問い掛けに彼女は苦笑いを浮かべながら答えた。
『これはジェームス卿、お久し振りでございます。このような見苦しいお姿をお見せして申し訳ない、恥ずかしながら我が小隊はこの地の者に完全敗北してしまいました。現在の我々は森の自然と安全を守るレンジャー部隊、私の事は司令官などと言う仰々しい呼び名ではなく隊長とお呼びください。』
『何を仰るのですか、ユーロッパ王国の守護神、猛将ハンニバルと言えば国民の憧れ、あなたほどの軍人は他にはいないのですよ!?』
『猛将ハンニバル、私は何を調子に乗っていたのでしょうね。皆に煽てられいい様に使われ、結果ただ部下を危険に晒すだけの無能な司令官。
我々がこうして話が出来るのもひとえに森の守護者の恩情に過ぎないのですよ。』
ハンニバル司令官は寂しそうな顔をしながら話しは終わりとばかりに部隊員の元へ戻っていった。
『隊長、山姫様がおいでです。』
『分かった、お前は列に戻れ。このままお迎えする。』
その御方は静かに森より現れた。ゆったりとした足取り、すべてとの調和がとれたその佇まい。
まるで森そのものが人の姿を取って現れたかの様なその在りよう。
周囲の空気が一気に爽やかな澄み切ったものへと変わる。
「お初にお目に掛かります。私共はユーロッパ王国友好使節団一行となります。この度は御身に拝謁する機会を頂き誠にありがとうございます。」
私は急ぎこの神性に対し最大限の礼を持って挨拶を述べた。
「あなた方はこの度この領域に侵入し勝手を行っていたこの者たちの件でやって来た。そう考えていいのかな?」
神性は聞いていた話しとは真逆の大変理性的で穏やかな印象を受ける存在であった。
「はい、私どもはその件であなた様に謝罪いたしたくこちらに参った次第です。」
我々一行は揃い彼の御方に頭を下げた。
「ふむ、分りました。ではこれらのモノはあなた方が買い取ってくれると考えてもよろしいか?」
”パチンッ”
神性が指を鳴らす。すると目の前には先ほどまでなかった数々の兵器が。軍用輸送ヘリ二台、小銃ライフル武器弾薬等多数。それはこの地で戦争でも始める気かと言わんばかりの装備品の数々であった。
「では使者殿、これらの品々をお幾らで引き取っていただけるのでしょうか?何、大体の価格なら知っていますよ、私が聞きたいのはその付加価値がいかほどのものかと言う話でしてね。
今回のこの山で起きた一連の事件、未だ報道されてはいないではないですか。大使館崩壊は大きく取り上げられていますがね。
その二つの関連性、そしてその背景。なかなかの情報だとは思いませんか?
フロンティア国あたりのモノ好きや報道企業ならいい値を付けて買ってくれると思うんですよね~。
ほら、山の保全は結構入用なんですよ、この粗大ごみ、誰が買ってくれるんでしょうね~。」
背中を流れる冷や汗、それは先ほどまでの神聖なものに対する緊張ではなく、酷く泥臭いそれでいて現実的かつ緊急性の高い危険に対するモノであった。
「あ、ここ電波通りますから本国と相談されてもイイですよ、でもこの場で決めてくださいね、振込先はこちらの口座にお願いします。」
神性よりスッと差し出された一枚の紙、そこには”森と自然を守る会”名義の銀行口座番号が書かれているのであった。
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