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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第375話 何をしに来たの? (3) (side : クリスティーヌ・カサンドラ)

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「表を上げよ。」

長い歴史と伝統を感じさせる建造物、豪奢でありながら品性と格式を兼ね備えた調度品の数々、荘厳な雰囲気に包まれたこの場。
謁見の間。
歴代の王が様々な儀式を行い時に歴史が動いたとされるこの場において、今、複数の男女が片膝を付き王のお言葉を緊張の面持ちで拝聴しようとしていた。

『諸君、先ずは多忙の中招集に応えてくれた事を感謝しよう。諸君の中には既に知っている者も多いと思うが聞いて貰いたい。
先頃東方の国大和国において、我が国大使館が崩壊した。多数の者の証言から我々はこの事態をただのテロ事件ではないと捉えている。事件の中心である大使執務室において、唯一意識を取り戻し会話が可能であった王宮筆頭執事ベンジャミン氏の証言によると、神性もしくはそれに匹敵するナニカの怒りを買った結果が今回の事態の真相であるとの事であった。
現在ベンジャミン氏は衰弱が激しく、病院にて療養中である。同氏によれば対抗どころか何の抵抗すら出来なかったとの事である。
諸君は霊術異能力において我が国の最高峰であり、彼のモノとの交渉の場に立てる唯一の希望であると考えている。
これは国家存亡の大事である、よって我はユーロッパ王国国王の名において宣言する。
"大和国に赴き事態の収拾にあたれ"、これは勅命である。』

『『『は、陛下の御心のままに。』』』

立ち上がり部屋を出て行く戦士たち。王は唯一の希望に一縷の望みを託すのであった。


『なぁクリス、本当にこの道を進んで行かねばならんのか?と言うかこれは道じゃないだろう。』

『仕方がないでしょ、他にルートが無いんだから。例の小隊が消息を絶ったのがこの御劔山なのよ、ヒントはここしかないの。この国の政府もこの山は霊山であり危険地帯であると認めているわ。下手にヘリなどで現地に赴いて怒りを買ってみなさい、そのまま落とされて終わりよ。文句があるなら足を動かしなさい。』

今我々は登山道などとは決して呼べぬ山道を目的地へ向かい上っていた。ここは大和国の首都よりほど近い御劔山と呼ばれる場所。キャンプや登山で休日ともなれば多くの観光客で溢れるとされるこの場所であるが、一歩道を反れ奥地へと向かえばこの国の多くの権力者にも知られる超危険地帯。昔よりその厄災を鎮める為、複数の霊能者が鎮魂の儀を行ってきたいわく付きの霊山である。

『ここで一旦休憩を取ります。目的地はまだまだ先です、無理をせずきちんと休んでください。』

目の前には崖と思しき岩壁。その上方より鎖と思しきものが垂れており、この壁を上る事が目的地へと至る道であることを告げていた。

“シュルシュルシュル“

突然崖の上方より垂れ下がってくるロープ、我々は行き成りの事態に警戒心をあらわにしました。

”シュタッ、シュタッ、シュタッ”

『”隊長、侵入者を発見いたしました。これより事情聴取に入ります。どうぞ。”』
『”こちら隊長、相手を決して威嚇してはならない。我々の役目は森の保全、その事を忘れるな。どうぞ。”』

現れたのは我が国の軍服を着た一人の女性兵士であった。

「ア~、ミナサン、ココハシユウウチデ~ス。キョカナクハイッテハイケマセ~ン。オモドリクダサ~イ。」

たどたどしい大和言語を話す女性兵士、私は事情を聴くため彼女に話しかけた。

『私たちはユーロッパ王国から来ました交渉の使者です。ぜひこちらの代表の方に御取次頂きたいのですが?ことばの方は大和言語でも問題なく話せますが、ユーロッパ言語の方がお互い話しやすいのではないですか?』

女性兵士はこちらの話を聞くとおもむろに無線機に手をやった。

『”隊長、こちら本国よりの交渉担当者だそうです。これは山姫様に直接お知らせした方がよろしいのではないでしょうか。どうぞ。”』
『”こちら隊長、状況は了解した。山姫様からはその際は直接現地に出向くとのお達しが出ている岩壁の上にヘリが待機している、そちらで合流しよう。どうぞ。”』

女性兵士は交信を終えると我々に向かいこう告げた。

『代表の者がこちらに参ります。つきましては皆さんには合流地点への移動をお願いします。』

そう告げる彼女の指差す方向、それは目の前の岩壁の上であった。
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