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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第374話 何をしに来たの? (2)

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『だから私がさっきから言ってるではないですか、この場所もしくは人物と言った特殊条件がの超常の存在に繋がるのではないかと。
その条件を目の前にして今更言い争うなど言語道断、我々はすでに追い詰められていると言う事をいい加減自覚していただきたい。』

『だからそもそもその考えがおかしいと言うのです、幾らベンジャミン氏の言葉とは言え我々はユーロッパ王国が誇る術師の最高峰ですよ、それがどうしてこんな島国にまで来てコケにされなくてはいけないんです。
あの神性についてだって確かに力は感じましたがそれほどのものかと聞かれれば疑問しか残りません。この国の政府はあの場所を非常に危険視していましたがそれはこんな辺境の国の術師の言う事、我々とは土台レベルが違うのです。比べる事自体がおこがましいのです。』

先程から外国の言葉で言い争いをしているお客様方、これってユーロッパの言葉であってるよね。ノエルから簡単な言葉は習っているから分るけど、あんなに早口で話されたら全く分からん。言語の習得はヒヤリングからって言うのは本当だよね、前世で流行った何とかラーニング?二倍速くらいで英語を聴きまくって脳に覚えさせるとか何とかって奴、あれ本当に必要かもしれない。正直耳が着いていけない。

あ、お母様、自分しばらく抜けます。何か言い争いが終わりそうも無いんで着替えて来ますね。
俺はマミーにそう伝えるとその場を後にした。

(十分後)

ごめんね遅かったよね、お客様怒ってない?何か怒鳴っているけど俺怒らせちゃった?

「いや、特に問題ないぞ。何かあれから喧嘩が始まったみたいでな、代表者が解任されて新しい代表が決まるみたいだぞ。」

マミーはさっきからニマニマしっぱなし、こう言うお家騒動的な展開大好きだからな~。超性格悪い。
どうやら彼方あちらさんも話し合いが終わった様です。

「失礼した。ここから先はこのジェームスが取り仕切らせて頂くとしよう。
ま、こんな東方の島国の者に言っても分からんとは思うがこれでもユーロッパ王国最強との自負がある。言葉にはよく気を付けて発言して貰いたい。
それで我々が知りたいのは先だって我が国の大使館を襲った怪異についての情報だ。奴は不遜にも我が国に脅しを掛けて来た。我々はその事を重く受け止めている、決してないがしろには出来ないとね。
その者は我が国に喧嘩を売ったのだ、放置など出来るはずがないだろう?
この報いは必ず受けさせなければならない、その為には我々はあらゆる手段を用いるだろう。
無論我々は知的文化を愛するユーロッパ王国国民だ、いきなり暴力的な行為など行う訳ではないさ。ただ君たちには協力して欲しいだけなんだ。
素直に力を貸してくれると我々としても大変助かる。無用な血は見たくもないのでね。」

丁寧な大和言語でお話ししてくれたジェームスさん。とても頭が良いのだろう。
ただ話しが回りくど過ぎていまいち分かりにくい。ねぇマイマザー、こちらのジェームスさんは結局のところ何が言いたいの?

「うーん、要約すれば"痛い目に合いたくなければ言う事を聞け"かな?」

え~っと、ジェームスさん?ジェームス卿とお呼びした方がよろしいでしょうか、先ほど母の言った解釈で間違いはございませんでしょうか?

俺はジェームス卿の目を見て再度確認をする。

彼は肩をすくめる様な仕草をし、了承の意を示す。

え~っと本日こちらにこられた方々は皆さん同意見であると考えてもよろしいのでしょうか?ジェームス卿、申し訳ございませんが皆様に今の事を確認して頂いても宜しいでしょうか?

ジェームス卿はやれやれと言った仕草で全員に確認を行った。その結果最初の代表者以外、全員が彼と同意見であることが分かった。

う~ん、どうしようかな~。今更ユーロッパ王国って言われても正直全く興味が湧かないんだよね。呆れたと言うか飽きたと言うか、こっちにちょっかい掛けて来なければ好きにしてって感じ。
俺としては学園の問題も目処が立ったし後はのんびりしたいだけなんだけど。
マミーはこっちの様子を見ながらニマニマ楽しんでるだけだしな~。

"ピンポ~ン"

俺がさてどうしたものかと悩んでいると玄関チャイムの音。インターホンのモニターには我が家のメイドノエルの姿が写っていた。

「"Saki様、長のお休みを頂きありがとうございました。ノエル、ただいま戻りました。"」

あぁノエルお帰りなさい。玄関は開いてるから好きに入って来て。何かよく分からない人たちが来ているけど気にしなくていいから。

「"そうですか、分かりました。それと私の友人がSaki様にお会いしたいと訪ねて来ているのですが、御屋敷に上がって頂いてもよろしいでしょうか?"」

ん?全然構わないけど?ぜひ上がってもらって~。

モニター越しのノエルは嬉しそうにお辞儀をするのだった。

「なぁそこの君、さっきから自由気ままにしているが良いのかな?私も決して気長と言う訳ではないのだよ。それに舐められると言う事にも慣れていなくてね。」

"ボフゥッ"
「突然膨らむ気配、その存在が屋敷全体を覆って行く。素人目にもハッキリと分かる上位存在の証、彼こそがユーロッパ王国の最強、誰もが逆らえない絶対正義ジェームス卿その人であった~。」

「ぶははは、止めて助けて、そのタイミングでナレーションぶちこむって、流石息子。あははは、腹が腹が、痛い痛い痛い、ジェームスさんに痛い目にあわされちまったじゃないか、ぶははは。」

マミー大ウケ、腹抱えてひっくり返っていらっしゃる。ジェームス卿はと言うと、うゎ~、顔真っ赤にして怒ってやんの。ほんのお茶目じゃん、外人さんは短気だね~。

「Saki様、ただいま戻りました。何やらお客様がお戯れのご様子ですが、宜しければお帰り願いましょうか?」
開口一番物騒な事を宣うノエル。どうどう、落ち着きたまえ。今日は君の友人が来られてるんでしょうが。

「そうでした、ご紹介致します。友人のエリザベスです。」
その人はただそこに佇んでいた。黒いドレスに黒い帽子、ベールに覆われた顔は美しい赤い唇がやけに目を引く、そんな喪服を着た様な女性であった。

こんにちは初めまして、私はノエルの主人をさせていただいています佐々木大地と申します。いつもノエルが親しくして頂いてありがとうございます。これからも彼女の事、よろしくお願いします。
おそらく外国の方、こちらの言葉は分からないだろう。だがノエルの友人なのだ最大限の敬意を持って接しなければ彼女の恥となる。
俺はエリザベスさんに深々と頭を下げるのだった。

『ノエル、貴女は本当に幸せ者ですね。こんなに素晴らしいご主人と出会う事が出来ただなんて。私、貴女に嫉妬してしまいそうでしたわよ。
佐々木大地さんとおっしゃいましたわね。ノエルの事、よろしくお願いします。ご迷惑でなければ私ともお友達になって頂けると嬉しいです。』

ん?今お友達になって欲しいとか言わなかったか?俺の拙い言語能力でも確かにそう聞き取れたぞ。こんな美女とお友達、乗らねばこのビックウェーブに!!
『はい、是非お友達になって下さい。』
俺はありったけの言語力を駆使して返事を返すのだった。

"キーーーーーーーン"

お?久々の耳鳴り、気圧の問題かな?でも季節関係なく鳴るんだよな~。一度耳鼻科の先生に相談しようかな?

あ、行けね、ジェームス卿の事を忘れてた。この人短気だから目茶苦茶怒ってないかな?面倒臭いな~。

振り返ると先ほどまで赤い顔をしていた彼が真っ青な顔をしてガタガタ震えていた。
何この人、変な持病とか持って無いよね、怖いんだけど!?

「お~い、ご主人今帰ったぞ!黒丸もご機嫌だぞ、何かおやつくれ~。
あ、なんだノエル帰ってたのか?悪いんだけど、あたしと黒丸に何かおやつくれないかい。」

「あら、葛の葉さんお久し振りです。留守中は何かとご迷惑をお掛けしました。おやつは今準備致します。それと後程鈴守さんがこちらに来られる様な事を仰っていましたが、"チリ~ン"あぁ、いらっしゃった様ですね。
鈴守さん、来てそうそう申し訳ありませんが台所仕事を手伝って頂けませんでしょうか?」

「構いませんよ、私も身体を動かすのは好きですから。大地さん勝手にお邪魔して申し訳ありません。」

あ、気にしないで良いですよ。鈴守さんはそう言う人だと認識してますんで、何時でもいらしてください。

何かお客さんがたくさん来たので面倒な"お客様"はお帰り頂きましょうか。

俺はさっきからガタガタ震えてよく分からない状態になっている集団に向き直る。

"ゴウッ"

突然現れる力の奔流、吹き荒れる荒ぶる激情が人種を越え、言語を越え、今ここにいる全ての者の魂に語りかける。

"ユーロッパ王国はこの俺に喧嘩を売った。
お前たちの答え、確かに受け取ったぞ。"

それがこの場で彼等が覚えている最後の記憶であった。
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