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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…
第372話 踊るもの踊らされるもの (3)
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「いや~、急にごめんね。例の映像やっぱり必要になっちゃってさ~。悪いんだけどDVDに焼いて貰おうと思って。」
ここは佐久間中学校映像研究会部室、俺はあの後映像研究会の新部長にレインで連絡を入れ、明日の緊急集会で必要な映像資料を用意して貰っていたのだった。
「いえいえ、先輩方鬼ごっこ同好会の皆さんには大変お世話になっていますから。これぐらいの用事ならいくらでもお申し付けくださいよ~。」
まるで映像スタジオをか何かかと見まごうばかりの機材に囲まれ、笑顔でDVDを差し出す後輩。うん、やっぱりいつの時代もお金って大事だよね、お互いWinWinの関係が築けて良かったよ。
「それにしても本当に先輩、私立桜泉学園高等部に入学できたんですね。みんな騙されてるって噂してたんですよ?この話には裏があるって。」
この後輩は結構鋭いな、裏はありまくりなんだけどあまり大っぴらには言えないんだよね~。
「心配してくれてありがとうな、何とかやってるよ。林や吉田たちとはその後どうだ?上手い事やってるか?」
ヨウツーベの配信はその後も続いている様だが、どうしてもマンネリ化は否めないからな。正直気にはなっていたのだ。
「そっちの方はお任せください、最近の映像は鬼ごっこ同好会部員それぞれの個性を生かしたものに仕上げていますから。今の彼らってチョッとしたアイドル状態なんですよ?ファンレターが全国から来るくらいに育て上げましたんで。」
胸を張りどや顔の部長、そう言えばこいつ林の奴と付き合ってるんだったか。
近い将来彼女の尻に敷かれるだろう後輩に同情しつつ、俺はこの場を後にした。
鬼ごっこ同好会部長林一真、俺は何も言わん、強く生きろ。
(side:私立桜泉学園高等部外部進学女子生徒)
なんか思っていたのと違う。
私立桜泉学園高等部に入学して早三週間、学園の生活にも慣れた今日この頃、私が思うのはそんな感想であった。
私立の名門桜泉学園と言えば大学進学率、スポーツ実績共にトップを走り続ける名門中の名門。そして何と言っても男子生徒がイケメン揃いと言う夢の国、それが私たちが命懸けで目指したここ桜泉学園であった。入学式での男子生徒のお披露目を見た時に感じた人生に勝利した喜びは未だ忘れる事が出来ない。性格もスタイルも顔立ちも、全てを兼ね備えたパーフェクトイケメンは存在したのだと。しかもそれが何人も、ここは学園モノの漫画の世界か何かなんだろうか。
そんな彼らと繰り広げる夢の学園生活、明日から始まるパラダイスに心弾ませたのは何時の事だったか。
現実は無常だった。本来なら入学時の成績順で決まるクラス順が学園側の事情で急遽次の中間テストにまで引き延ばしになったと聞いた時に嫌な予感はしていたのだ。
登校した私たち外部進学生徒たちが見たのは何とも微妙なイケメン?男子生徒たちであった。
Q:昨日見たあの超イケメン男子軍団は?
A:ABCと言った上位クラスに在籍しています。
Q:あの、私彼らと同じクラスがいいんだけど?
A:次に行われる中間考査の成績順でクラスが変更されます。頑張ってください。
なんじゃそりゃ~!
知らない時は良かった、妄想だけなら我慢も出来た。でも私たちは見てしまった、知ってしまった、その存在も、その実態も。
その上で同じクラスの何か鼻に掛けたような態度のイケメン?を見せられてどうしろと?
”なんだお前たちは、この俺が声を掛けてやってるのに笑顔の一つも見せないのか?”
あぁ、はいはい、ありがとうございました。ご厚意は受け取りましたのでその辺で大人しくしていてください、イケメンさん方。
なんだかな~。
クラスのほとんどの女子がそう言った感じで何かやさぐれている。
これが桜泉学園のやり方?パラダイスに行くには戦えって事?私達の闘いはまだ終わっていないって事なの?
「みなさんおはようございます。朝のHRの時間です。
まずは学園より女子生徒の皆さんに学年集会のお知らせです。本日の放課後女子生徒の皆さんを対象とした学年集会が行われます。授業が終わり次第、体育館に移動して下さい。」
それは突然の連絡であった。
何か問題行動でも起こした生徒でも出たのだろうか?中学校までの生活を思い出し、そう言えばこんな感じの学年集会が何度かあったなと思い至る。
あの時は女子生徒が数名で一人の男子生徒に性的悪戯をしたんだっけか。あの時はダンカンが介入して大変だったな~。
この桜泉学園でそんな事が起こるとは思えないけど、なにがあるのか分からないのが世の中だ。
放課後私は気持ちを引き締めて体育館へと向かうのでした。
「本日はお忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。」
体育館の正面、壇上では一人の男子生徒がマイク片手に司会進行をしていた。
彼の事は知っている、Gクラスの男子生徒でこの学園の生徒とは思えないほどののっぺり顔。一部では裏口入学ではと噂されるほどの場違いな男の子であった。
「これより皆さんにはあるVTRをご覧いただきます。その後本日のゲストよりあるお話しがございますのでしばらくのお時間お付き合いいただきます様お願い申し上げます。」
司会の彼が深々と頭を下げる。
壇上にはスクリーンが下り、プロジェクターの明かりが照らされる。
館内の明かりが落とされ、辺りは反射光の淡い光だけが頼りとなる。
画面には一人の男子生徒が映し出されている。何か女子生徒に高圧的に話し掛けている、何処かで見た事のあるような光景。
「彼は普通の男子学生であった。多少の顔の良さを鼻に掛け、威張り散らし、すべてが思い通りになると信じている、そんな今時その辺にいる普通の俺様系わがまま男子であった。」
場面代わってこれはこの学園の様子、生徒の感じからすると中等部であろう。一人の男子生徒がまるで王様のように振る舞っている。
「彼は自らを特別だと思っていた。この伝統ある名門校にスカウトされた実績、生まれも育ちも良い自分、すべては己の為に用意された舞台装置の様に思っていた。」
場面が次々と代わる、どれもが男子生徒が己を誇示し偉ぶっている姿を映し出す映像であった。
「そんな彼が、彼らが。」
「おはようございます。今朝もいい天気ですね、今日も一日頑張りましょう♪」(ニッコリ)
「今日も撮影お疲れ様、さっきのシーン俺の立ち回りどうだった?おかしな点があったら教えて欲しいんだけど?」
「やぁ、今日ゴミ当番なの?俺が持って行くって、その代わり悪いんだけどこの後数学の宿題教えてくれない?どうも俺って数学の公式とか苦手でさ、頼む、お願い。この通り。」(合掌)
次々と代わるシーンに映し出されるのは、笑顔で女性と語り合う、夢のイケメンたちであった。
照明が明るくなり、私たちは再び壇上に目をやった。
「みなさん、先ほどの映像をご覧になってどう思われましたか?
外部進学生徒の方々はこんな映像を見せてどうする、男子が変わる?そんな事あるはずないじゃないか。そう思われたのではないでしょうか。
そして内部進学生徒の方たちは思い出されたのではないですか?今のクラスメート男子生徒もかつてはあの映像の様であったと言う事を。
あの映像はすべて事実、実際に存在する男性たちなのですから。そしてそんな彼らがどうやって今のように変わっていったのか。
ではお越しいただきましょう。内部進学生徒のみなさんならご存じですね、”男を掌で転がす方法”講座でおなじみ、桜木春子先生です。」
脇の控えから壇上に現れた女性は舞台に立つと不敵な笑みを浮かべ語り出した。
「これはこれは全国から集まったイケメン好きどもが期待外れに不貞腐れている様じゃないか、それにこの学園の持ち上がり組も随分と贅沢になっちまって。
あんたらは忘れちまったのかね~、かつて自分たちがあの男どもを手玉に取っていたという事実を。今の学園男子を育てたのは他でもないアンタらだってのに、今更外部から来た男が詰まらないって、そんなちんけな事を言いだす様な事を教えた覚えはないんだけどね~。
仕方が無いから特別にもう一度教えてあげようかね、男を掌で転がすテクニックって奴をさ。」(ニヤリ)
その日私たちの運命は変わった。
私たちは知ってしまった、パラダイスは求め目指す”幻想”なんかじゃない、自らの手で作り出す”現実”なんだと。
ここは佐久間中学校映像研究会部室、俺はあの後映像研究会の新部長にレインで連絡を入れ、明日の緊急集会で必要な映像資料を用意して貰っていたのだった。
「いえいえ、先輩方鬼ごっこ同好会の皆さんには大変お世話になっていますから。これぐらいの用事ならいくらでもお申し付けくださいよ~。」
まるで映像スタジオをか何かかと見まごうばかりの機材に囲まれ、笑顔でDVDを差し出す後輩。うん、やっぱりいつの時代もお金って大事だよね、お互いWinWinの関係が築けて良かったよ。
「それにしても本当に先輩、私立桜泉学園高等部に入学できたんですね。みんな騙されてるって噂してたんですよ?この話には裏があるって。」
この後輩は結構鋭いな、裏はありまくりなんだけどあまり大っぴらには言えないんだよね~。
「心配してくれてありがとうな、何とかやってるよ。林や吉田たちとはその後どうだ?上手い事やってるか?」
ヨウツーベの配信はその後も続いている様だが、どうしてもマンネリ化は否めないからな。正直気にはなっていたのだ。
「そっちの方はお任せください、最近の映像は鬼ごっこ同好会部員それぞれの個性を生かしたものに仕上げていますから。今の彼らってチョッとしたアイドル状態なんですよ?ファンレターが全国から来るくらいに育て上げましたんで。」
胸を張りどや顔の部長、そう言えばこいつ林の奴と付き合ってるんだったか。
近い将来彼女の尻に敷かれるだろう後輩に同情しつつ、俺はこの場を後にした。
鬼ごっこ同好会部長林一真、俺は何も言わん、強く生きろ。
(side:私立桜泉学園高等部外部進学女子生徒)
なんか思っていたのと違う。
私立桜泉学園高等部に入学して早三週間、学園の生活にも慣れた今日この頃、私が思うのはそんな感想であった。
私立の名門桜泉学園と言えば大学進学率、スポーツ実績共にトップを走り続ける名門中の名門。そして何と言っても男子生徒がイケメン揃いと言う夢の国、それが私たちが命懸けで目指したここ桜泉学園であった。入学式での男子生徒のお披露目を見た時に感じた人生に勝利した喜びは未だ忘れる事が出来ない。性格もスタイルも顔立ちも、全てを兼ね備えたパーフェクトイケメンは存在したのだと。しかもそれが何人も、ここは学園モノの漫画の世界か何かなんだろうか。
そんな彼らと繰り広げる夢の学園生活、明日から始まるパラダイスに心弾ませたのは何時の事だったか。
現実は無常だった。本来なら入学時の成績順で決まるクラス順が学園側の事情で急遽次の中間テストにまで引き延ばしになったと聞いた時に嫌な予感はしていたのだ。
登校した私たち外部進学生徒たちが見たのは何とも微妙なイケメン?男子生徒たちであった。
Q:昨日見たあの超イケメン男子軍団は?
A:ABCと言った上位クラスに在籍しています。
Q:あの、私彼らと同じクラスがいいんだけど?
A:次に行われる中間考査の成績順でクラスが変更されます。頑張ってください。
なんじゃそりゃ~!
知らない時は良かった、妄想だけなら我慢も出来た。でも私たちは見てしまった、知ってしまった、その存在も、その実態も。
その上で同じクラスの何か鼻に掛けたような態度のイケメン?を見せられてどうしろと?
”なんだお前たちは、この俺が声を掛けてやってるのに笑顔の一つも見せないのか?”
あぁ、はいはい、ありがとうございました。ご厚意は受け取りましたのでその辺で大人しくしていてください、イケメンさん方。
なんだかな~。
クラスのほとんどの女子がそう言った感じで何かやさぐれている。
これが桜泉学園のやり方?パラダイスに行くには戦えって事?私達の闘いはまだ終わっていないって事なの?
「みなさんおはようございます。朝のHRの時間です。
まずは学園より女子生徒の皆さんに学年集会のお知らせです。本日の放課後女子生徒の皆さんを対象とした学年集会が行われます。授業が終わり次第、体育館に移動して下さい。」
それは突然の連絡であった。
何か問題行動でも起こした生徒でも出たのだろうか?中学校までの生活を思い出し、そう言えばこんな感じの学年集会が何度かあったなと思い至る。
あの時は女子生徒が数名で一人の男子生徒に性的悪戯をしたんだっけか。あの時はダンカンが介入して大変だったな~。
この桜泉学園でそんな事が起こるとは思えないけど、なにがあるのか分からないのが世の中だ。
放課後私は気持ちを引き締めて体育館へと向かうのでした。
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体育館の正面、壇上では一人の男子生徒がマイク片手に司会進行をしていた。
彼の事は知っている、Gクラスの男子生徒でこの学園の生徒とは思えないほどののっぺり顔。一部では裏口入学ではと噂されるほどの場違いな男の子であった。
「これより皆さんにはあるVTRをご覧いただきます。その後本日のゲストよりあるお話しがございますのでしばらくのお時間お付き合いいただきます様お願い申し上げます。」
司会の彼が深々と頭を下げる。
壇上にはスクリーンが下り、プロジェクターの明かりが照らされる。
館内の明かりが落とされ、辺りは反射光の淡い光だけが頼りとなる。
画面には一人の男子生徒が映し出されている。何か女子生徒に高圧的に話し掛けている、何処かで見た事のあるような光景。
「彼は普通の男子学生であった。多少の顔の良さを鼻に掛け、威張り散らし、すべてが思い通りになると信じている、そんな今時その辺にいる普通の俺様系わがまま男子であった。」
場面代わってこれはこの学園の様子、生徒の感じからすると中等部であろう。一人の男子生徒がまるで王様のように振る舞っている。
「彼は自らを特別だと思っていた。この伝統ある名門校にスカウトされた実績、生まれも育ちも良い自分、すべては己の為に用意された舞台装置の様に思っていた。」
場面が次々と代わる、どれもが男子生徒が己を誇示し偉ぶっている姿を映し出す映像であった。
「そんな彼が、彼らが。」
「おはようございます。今朝もいい天気ですね、今日も一日頑張りましょう♪」(ニッコリ)
「今日も撮影お疲れ様、さっきのシーン俺の立ち回りどうだった?おかしな点があったら教えて欲しいんだけど?」
「やぁ、今日ゴミ当番なの?俺が持って行くって、その代わり悪いんだけどこの後数学の宿題教えてくれない?どうも俺って数学の公式とか苦手でさ、頼む、お願い。この通り。」(合掌)
次々と代わるシーンに映し出されるのは、笑顔で女性と語り合う、夢のイケメンたちであった。
照明が明るくなり、私たちは再び壇上に目をやった。
「みなさん、先ほどの映像をご覧になってどう思われましたか?
外部進学生徒の方々はこんな映像を見せてどうする、男子が変わる?そんな事あるはずないじゃないか。そう思われたのではないでしょうか。
そして内部進学生徒の方たちは思い出されたのではないですか?今のクラスメート男子生徒もかつてはあの映像の様であったと言う事を。
あの映像はすべて事実、実際に存在する男性たちなのですから。そしてそんな彼らがどうやって今のように変わっていったのか。
ではお越しいただきましょう。内部進学生徒のみなさんならご存じですね、”男を掌で転がす方法”講座でおなじみ、桜木春子先生です。」
脇の控えから壇上に現れた女性は舞台に立つと不敵な笑みを浮かべ語り出した。
「これはこれは全国から集まったイケメン好きどもが期待外れに不貞腐れている様じゃないか、それにこの学園の持ち上がり組も随分と贅沢になっちまって。
あんたらは忘れちまったのかね~、かつて自分たちがあの男どもを手玉に取っていたという事実を。今の学園男子を育てたのは他でもないアンタらだってのに、今更外部から来た男が詰まらないって、そんなちんけな事を言いだす様な事を教えた覚えはないんだけどね~。
仕方が無いから特別にもう一度教えてあげようかね、男を掌で転がすテクニックって奴をさ。」(ニヤリ)
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