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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…
第364話 為政者たちの困惑 (2)
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(side : ユーロッパ王国王宮)
「陛下、大至急お知らせすべき事態が発生致しました。」
それは、"今日の昼食は白身魚のフライタルタルソースを添えてがいいな。でも最近王妃が健康管理とか言って揚げ物食べさせてくれないんだよな~。"等と考えていた国王にとっては寝耳に水の報告であった。
「はぁ?大和国の我が国大使館が崩壊した?それはテロ事件が発生したと言う事か?あの国にはいまキャロラインが留学しているんだぞ、王女の安否はどうなっている!」
急な事態に狼狽しつつ、状況の把握に務める姿は流石一国の王である。
「は、この報告はキャロライン王女殿下がおられます公館別邸の職員からもたらされたものでございます。王女殿下におかれましては、学校行事の疲れから早々に就寝為されたとの報告を受けております。」
その報告を聞き、安堵から椅子に深く腰を沈める国王。しかし事態は正確に把握しなければならない。
「では状況の説明から頼む。」
「は、この情報はまず大和国政府事務次官よりもたらされました。向こうとしては王女殿下の安否確認が優先されていたとの事です。公館側としては至急大使館へ連絡を取ったのですが、通信手段は全て反応がなく、現在現地に赴き状況の確認を行っているところであります。
既にこの事態は報道の知るところとなっており、各報道機関により世界的ニュースとして取り上げられております。
我が国政府としては、現在状況の確認中であり詳しく分かり次第お知らせする旨を発表したところであります。」
初動の対策としては問題ないだろう。後はどう振る舞うかに掛かっている。
「して、対策会議は既に開かれているのか?」
「は、第二会議場にて緊急会議が開かれる予定であります。」
「分かった、では私も会議に出席する事とする。その事、皆に知らせるように。」
国王はおもむろに席を立つと、第二会議場に歩を進めるのであった。
「それでは何も分からないと言っているのと変わらないではないか、新しい情報はないのか!」
あれから数時間、会議は紛糾し、これと言った具体策が打てないでいた。
現在分かっている事、それは"何が起きたのか全く把握出来ていない"と言う事であり、我が国が大変不利な状況にあると言う事だけであった。
大和国政府からもたらされた情報と、公館職員がかき集めた情報をまとめると次の様な物となる。
現地時間昼頃、学園の校外学習で御劔山キャンプ場を訪れていたキャロライン王女が何者かの襲撃を受ける。
その際現場に居合わせた男子生徒"高宮ひろし"の説得により犯人は投降、事件は無事終息し王女はその後もキャンプを楽しんだ後公館別邸へ帰宅する。
捜査機関に引き渡された犯人の供述により、この犯行が我が国の軍による組織的に行われた作戦であることが判明、首謀者は貴族議員の大物マクベス卿である事が明らかとなる。
大和国政府としては犯罪を未然に防ぐことが出来なかった警備体制の不備についての問題もあるが、その犯行を行ったのが警備をされる側の軍であった事を重視。状況の確認と情報の提供を求め事務次官を大使館へ派遣していたところ、大使館崩壊事件に巻き込まれる。
一時的に意識を失っていたものの回復した事務次官により事件が発覚、大規模な救助が行われ現在に至る。
「だからこれは奴らが行った報復行為ではないのか!あの島国の猿どもは生意気にも我が国に喧嘩を売っているのだ、こちらも毅然と応じるべきだ。」
「お前は馬鹿か、これが報復行為だとしたらどうやったらあのような状況を引き起こせると言うのだ。館内の全てのガラスと言うガラスが割られていると言うのに建物には傷一つ付いていないんだぞ、どんな爆発物を使えばそんな事が出来る?それに館内の人間全てを一瞬にして意識不明にするなど不可能だろうが、それも同時にだぞ!
幸い命に別状のある者はいないが、意識を取り戻した職員は一様に恐ろしい何かを感じたと思ったら意識を失っていたと答えているんだ。こんなの人の業じゃないだろうが。」
「それで大使執務室にいた人間はいまだ目を覚まさないのかね?」
「は、それがいまだ。ただ医師によれば外傷はおろか呼吸脈拍などいずれも問題はないそうです。」
この執務室にいた人間と言うのがまた問題であった。
一人はマルソー大使本人、これは問題はない。もう一人が件の人物、貴族議員であるマクベス卿、そしてもう一人が我が王宮の筆頭執事ベンジャミンであった。
あのベンジャミンが気絶!?その報告にここにいるもの全てが耳を疑った。何故なら彼は我が国のトップ術師の一人であり"最強"の二つ名を持つ人物であったからだ。どんな化学兵器もどんな呪術的な罠も彼の前では無駄である。
我が国の最終兵器、ベンジャミンとはそう言う男であった。
"ガチャッ"
「失礼致します。ただいまベンジャミン氏の意識が戻られたとの報告が入りました。本人から直接報告があるとの事で、こちらに回線を繋げさせて頂きます。」
壁掛けの大型モニターの映像が代わる。そこに映し出されたのは力なく項垂れる一人の老人の姿であった。
「ベンジャミン、お前本当にベンジャミンなのか?あの何者の前でも決して態度の変わらないお前が・・・。
ベンジャミン、答えろ、お前に一体何が起きた。」
動揺する国王、変わり果てたかつての最強の姿、今の国王に病人を気遣う余裕などなかった。
「これはこれは国王陛下、この様な姿をお見せする無礼をお許しください。
事は一刻を争います。結果から申し上げます。我が国は怒らせてはいけない存在を怒らせてしまった、このままではユーロッパの悪夢の再現、いやそれ以上の厄災がユーロッパ王国全土に降り掛かります。
相手は荒ぶる強大なナニカ、少なくとも会話は可能です。ですが私では無理でした、口先の誠意は相手の怒りを増幅させます。
大使館崩壊?こんなものはあの存在の温情に過ぎない、その気になればチリ一つ残らなかったはず。
超常の神に拝謁するつもりで接する事をお勧めします。」
ベンジャミンはそこまで語るとベッドに横になり意識を落としてしまった。
かつて第一級怪異を屠った男の姿は最早そこにはなかった。
発言をする者は誰もいない。
会議場は悲壮な空気に包まれるのであった。
「陛下、大至急お知らせすべき事態が発生致しました。」
それは、"今日の昼食は白身魚のフライタルタルソースを添えてがいいな。でも最近王妃が健康管理とか言って揚げ物食べさせてくれないんだよな~。"等と考えていた国王にとっては寝耳に水の報告であった。
「はぁ?大和国の我が国大使館が崩壊した?それはテロ事件が発生したと言う事か?あの国にはいまキャロラインが留学しているんだぞ、王女の安否はどうなっている!」
急な事態に狼狽しつつ、状況の把握に務める姿は流石一国の王である。
「は、この報告はキャロライン王女殿下がおられます公館別邸の職員からもたらされたものでございます。王女殿下におかれましては、学校行事の疲れから早々に就寝為されたとの報告を受けております。」
その報告を聞き、安堵から椅子に深く腰を沈める国王。しかし事態は正確に把握しなければならない。
「では状況の説明から頼む。」
「は、この情報はまず大和国政府事務次官よりもたらされました。向こうとしては王女殿下の安否確認が優先されていたとの事です。公館側としては至急大使館へ連絡を取ったのですが、通信手段は全て反応がなく、現在現地に赴き状況の確認を行っているところであります。
既にこの事態は報道の知るところとなっており、各報道機関により世界的ニュースとして取り上げられております。
我が国政府としては、現在状況の確認中であり詳しく分かり次第お知らせする旨を発表したところであります。」
初動の対策としては問題ないだろう。後はどう振る舞うかに掛かっている。
「して、対策会議は既に開かれているのか?」
「は、第二会議場にて緊急会議が開かれる予定であります。」
「分かった、では私も会議に出席する事とする。その事、皆に知らせるように。」
国王はおもむろに席を立つと、第二会議場に歩を進めるのであった。
「それでは何も分からないと言っているのと変わらないではないか、新しい情報はないのか!」
あれから数時間、会議は紛糾し、これと言った具体策が打てないでいた。
現在分かっている事、それは"何が起きたのか全く把握出来ていない"と言う事であり、我が国が大変不利な状況にあると言う事だけであった。
大和国政府からもたらされた情報と、公館職員がかき集めた情報をまとめると次の様な物となる。
現地時間昼頃、学園の校外学習で御劔山キャンプ場を訪れていたキャロライン王女が何者かの襲撃を受ける。
その際現場に居合わせた男子生徒"高宮ひろし"の説得により犯人は投降、事件は無事終息し王女はその後もキャンプを楽しんだ後公館別邸へ帰宅する。
捜査機関に引き渡された犯人の供述により、この犯行が我が国の軍による組織的に行われた作戦であることが判明、首謀者は貴族議員の大物マクベス卿である事が明らかとなる。
大和国政府としては犯罪を未然に防ぐことが出来なかった警備体制の不備についての問題もあるが、その犯行を行ったのが警備をされる側の軍であった事を重視。状況の確認と情報の提供を求め事務次官を大使館へ派遣していたところ、大使館崩壊事件に巻き込まれる。
一時的に意識を失っていたものの回復した事務次官により事件が発覚、大規模な救助が行われ現在に至る。
「だからこれは奴らが行った報復行為ではないのか!あの島国の猿どもは生意気にも我が国に喧嘩を売っているのだ、こちらも毅然と応じるべきだ。」
「お前は馬鹿か、これが報復行為だとしたらどうやったらあのような状況を引き起こせると言うのだ。館内の全てのガラスと言うガラスが割られていると言うのに建物には傷一つ付いていないんだぞ、どんな爆発物を使えばそんな事が出来る?それに館内の人間全てを一瞬にして意識不明にするなど不可能だろうが、それも同時にだぞ!
幸い命に別状のある者はいないが、意識を取り戻した職員は一様に恐ろしい何かを感じたと思ったら意識を失っていたと答えているんだ。こんなの人の業じゃないだろうが。」
「それで大使執務室にいた人間はいまだ目を覚まさないのかね?」
「は、それがいまだ。ただ医師によれば外傷はおろか呼吸脈拍などいずれも問題はないそうです。」
この執務室にいた人間と言うのがまた問題であった。
一人はマルソー大使本人、これは問題はない。もう一人が件の人物、貴族議員であるマクベス卿、そしてもう一人が我が王宮の筆頭執事ベンジャミンであった。
あのベンジャミンが気絶!?その報告にここにいるもの全てが耳を疑った。何故なら彼は我が国のトップ術師の一人であり"最強"の二つ名を持つ人物であったからだ。どんな化学兵器もどんな呪術的な罠も彼の前では無駄である。
我が国の最終兵器、ベンジャミンとはそう言う男であった。
"ガチャッ"
「失礼致します。ただいまベンジャミン氏の意識が戻られたとの報告が入りました。本人から直接報告があるとの事で、こちらに回線を繋げさせて頂きます。」
壁掛けの大型モニターの映像が代わる。そこに映し出されたのは力なく項垂れる一人の老人の姿であった。
「ベンジャミン、お前本当にベンジャミンなのか?あの何者の前でも決して態度の変わらないお前が・・・。
ベンジャミン、答えろ、お前に一体何が起きた。」
動揺する国王、変わり果てたかつての最強の姿、今の国王に病人を気遣う余裕などなかった。
「これはこれは国王陛下、この様な姿をお見せする無礼をお許しください。
事は一刻を争います。結果から申し上げます。我が国は怒らせてはいけない存在を怒らせてしまった、このままではユーロッパの悪夢の再現、いやそれ以上の厄災がユーロッパ王国全土に降り掛かります。
相手は荒ぶる強大なナニカ、少なくとも会話は可能です。ですが私では無理でした、口先の誠意は相手の怒りを増幅させます。
大使館崩壊?こんなものはあの存在の温情に過ぎない、その気になればチリ一つ残らなかったはず。
超常の神に拝謁するつもりで接する事をお勧めします。」
ベンジャミンはそこまで語るとベッドに横になり意識を落としてしまった。
かつて第一級怪異を屠った男の姿は最早そこにはなかった。
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会議場は悲壮な空気に包まれるのであった。
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