男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora

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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第354話 木村君、部活見学に行かない? (4)

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女子バスケット部の見学はそれなりに楽しめた。やっぱり体を動かすのって楽しいよね。
コーチからはぜひ我が部にとか言われたが、女子じゃないんで。試合とか出れませんから、たまに遊びに来る程度で勘弁してください。
榊原たちは”今度はぜひSaki様でお願いします。”とかふざけた事を抜かしていたので、体力測定ランフルバースト二時間を完走出来たらね~っと伝えておいた。
アイツらの事だからそのうちやり遂げそうだけど。女子の執念野獣の欲望、超怖い。

木村君、次は武道場に行ってみない?俺武術関連って小学校の頃夏休み前に行われた、男性児童の安全講習会でしか習った事ないんだよね。
後輩の吉田の奴は古武術の先生に本格的に捕縛術を習ってるって言ってたな~。あいつ一体何目指してるんだろう?謎だよね。

バスケット部専用体育館から少し離れた場所に武芸館と呼ばれる建物がある。
ここには柔道部、剣道部、空手部、弓道部が入っている。

木村君、どの部活から見て行く。

「うむ、俺は弓道に興味があるかな。あの凛としたたたずまいは西城に通じるものがあるからな。」

うん、確かに。西城さんの一本筋の入った感じって弓道っぽいよね、納得納得。
じゃあ、そこからにしようか。

”コンコンコン”
失礼します。一年Gクラス佐々木大地及び一年Aクラス木村英雄、部活見学に参りました。つきましては見学の許可を頂きたいのですがどなたか担当の方は居られますでしょうか?

「はいはいはい、部活見学ね。今年の外部進学組の生徒さんはずいぶんと活動的なのね。ってあんた噂の変わり種じゃない。うちの子たちから聞いてるわよ、Gクラスにあり得ないくらいのっぺりとした男子生徒が入ったって。アハハハハハ、本当にのっぺりしてるわね、この学園じゃ色々大変でしょう。まぁ、ゆっくり見学していきなさいな。お~い、誰かこの子たちを案内してあげて。特にこののっぺり君はちゃんとうちの生徒だって説明するのよ。多分本人が言っても信じて貰えないから。」

うゎ~、この人歯に布着せないタイプだわ、言いずらい事をズバズバと。ま、本当の事なんですけどね、しかも対処が的確、かなり出来る御仁と見た。駄菓子屋のおばちゃんと同じタイプだな、うん。

「じゃ、私が案内しますね。どの部活から見に行かれますか。」

こちらの事務員のような格好のお姉さんが案内してくれる様だ。この規模の学園になると武道場にも事務員が付くのね、驚きです。
では初めに弓道部の見学をお願いしたいのですがよろしいですか?

「はい、弓道場はこちらになります。ただ弓道は集中力が大事な競技ですのであまり大きな声を出さないようにお願いします。」

「「はい、分りました」」

俺と木村君は事務員さんの後に着いて弓道場へと向かうのでした。


板の間の道場、そこに漂う清廉な空気。
”キリキリキリ“
引き絞られる弓、一点を見詰めただ己と向かい合う女子生徒。
”シュパッ、ズバン”
放たれ一瞬のうちに的を射抜く矢、この刹那の時間こそが弓道の醍醐味なのだ。
その女子生徒はしばしの残身の後ゆっくりと姿勢を解き、一礼をして後方へと下がっていった。礼に始まり礼に終わる。武芸とは斯くも美しいものであったのか。
木村青年は一人感動に打ち震えるので”スパン”

「申し訳ない。この馬鹿があまりに勝手なナレーションを入れるのでつい耐えられなかった。この道場の凛とした空気を乱してしまった事、深くお詫びしよう。」

俺の後頭部をむんずと掴み、ともに深々と礼をする木村君。マジ申し訳ない、この空気に耐えられなかったもんで。本当に反省しています、もうやりません。ですからこの手をそろそろ離していただけると嬉しいです。
痛い痛い痛い痛い痛い!

あ~、酷い目に合った。

「自業自得だ馬鹿者。顧問の先生、うるさくして申し訳ありませんでした。俺はこのたび外部進学生として入学しました一年Aクラスの木村英雄と言います。そしてこの馬鹿は同じく外部進学生として入学した佐々木大地です。ほら佐々木、いつまでも悶えてないでちゃんと挨拶しないか。」

木村君容赦ないわ~。初めまして、一年Gクラス佐々木大地です。今日は部活見学にこちらを尋ねてまいりました。どうぞよろしくお願いします。

「はい、お話しは事務所から聞いています。今日は始めて弓道に触れると言う事でいいのかしら?先ほど何やら素敵なナレーションを入れてくれていたけど。
どう?よかったら一度体験してみない?」

ゆったりとした口調で語る顧問の先生。でもその顔は何か引き攣った感じが・・・。
うん、めっさ怒っていらっしゃる。
”てめ~、弓道嘗めんなこら”って言葉が背後に書かれている気がする、超恐い。

トンッと叩かれる背中。行って来いって事ですか木村君、そうですか分かりました。
四面楚歌、前門の虎後門の狼。味方は居らず孤立無援。
う~、ごめんよ~。ほんの出来心やったんや~。

手袋の様な器具を装着され、軽くレクチャーを受ける。弓は射終わると同時に手首を返すのね、小指の力で自然に返る?なるほどね~、失敗すると耳が大変な事になると。そんなん素人にやらすなや、顧問めちゃくちゃ怒っとるやん!
はぁ~、何でこんな事に。ここは一回打ってさっさと退散するに限りますね。


心を静める
浮かぶのは先ほどの女子生徒

”スーッ”
肩幅よりやや広く取られた足、見据えるは己の心

”ギーィ”
引き絞られた弓、それは素人が良くやる腕力で引くものではなく、身体全体を使った骨で引く動き

ゆっくりと目標を見据える眼差し、そこには清廉な空気が漂う
足先から全身を巡り指の先まで至るすべての神経が、今目の前の一点に集約する

”パンッ、ズバン”
放たれた矢は吸いこまれるかの様に的の中心を射抜くのだった

ゆっくりと降ろされる弓、一礼のもと最後の残心が解かれる。

「ふ~っ、ありがとうございました。弓道の心の一端に触れる事が出来ました。こちらお返ししますね。」
俺は礼を言い借りた道具を返す。

口をあんぐり開け、信じられないと言った顔の顧問の先生。

「あ、そうそう、弓を放つ寸前に窓を開放するのはいかがかと思いますよ?急な風は矢の方向性を違えますからね?」
そんじゃ木村君行こうか、次は何部を見に行く?

「そ、そうだな。空手部にでも行ってみるか?」
だそう何で、事務員のお姉さん案内お願いしま~す。

俺たちは静まり返った弓道場を後にし、次の目的地へと向かうのでした。
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