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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第337話 おこってもいいよね

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「え~、取り調べ室ってカツ丼食べさせてくれないんですか~!?」
今明かされる驚愕の真実、えっ、それじゃ泣き落としの山さんとかいないの!?
故郷のお袋さんが泣いているぞとか言ったりしないの!?

「おいおい、それは何時の時代の刑事ドラマだ。大体最近の犯罪者の母親は、過干渉かネグレクトってパターンが多いんだ。そんなこと言ったら容疑者大暴れだぞ、自白するものもしなくなっちまう。
それに取り調べの際カツ丼何か食わせてみろ、裁判の際"カツ丼につられて嘘の証言をしました。"って言われて一発アウト。利益供与による自白の強要って事でこっちの首が飛ぶわ。」

"ガーン"
強い衝撃に口が半開きのまま固まる俺。山さん、転生しても貴方の活躍の場はないみたいです。(涙)

「アハハハ、いや~、意外に純粋だな君は。ほら、丁度カツ丼も到着した事だし念願の取り調べをしてやろう。」
捜査官はゆっくりと立ち上がるとブラインドカーテンに指を掛け外を眺める。

「なぁ、佐々木君。なんでこんな事になっちまったんだろうな。誰もが自分の責務を全うしようとした、ただそれだけなのにな。」

"カツ、カツ"
「容疑者の隣に移動し再び語り掛ける捜査官。
ほら、腹が減ってただろう?世間は世知辛いからな、お前も随分苦労して来たみたいじゃないか。しっかり食べて元気を出せよ。」

「は、はい。いただきます。」

カツ丼の蓋を開けがっつく佐々木君。

「ハハハ、そんな急がなくてもカツ丼は逃げないよ。それにちゃんといただきますって言えるんだ、故郷のお袋さんの育て方が良かった証拠だ。」

「美味しい、美味しいです、刑事さん。
実家にはもう何年も帰ってなくって・・・。」

「そうか、旨いか。それは良かった。でもお袋さんの手料理には負けるかもしれないな。
いい母親なんだろう?お袋さん。
そんなお袋さんをこれ以上悲しませちゃいけないよな。」

「・・・・・」
箸が止まり、沈黙する佐々木君。

「もう、頑張らなくってもいいんだ。お前がやったんだな?」

"ポン"と佐々木君の肩に軽く手をやる捜査官。

「俺、俺、すみませんでした~、俺がやりました~!」
顔を両の手で覆い後悔の叫びをあげる佐々木君。
捜査官はうんうんと頷き、優しく背中を擦るのであった。


「何をやってるんですかあなた方は?」

あ、吉川さんお疲れ様~。
刑事さん、ありがとうございました。長年の夢が叶いましたよ~。

「いやいや、こっちこそ。私も以前からこんなシチュエーションをやってみたかったんだ。古き善き時代の刑事ドラマはいいよな、私も憧れたもんだよ。」

"ガシッ"
固く交わされた握手には同志に対する熱い想いが籠っていた。

「佐々木君、そんなことより急いで下さいよ、時間がないんですってば。」

まぁまぁ、もう少しで食べ終わりますから。それより吉川さん、これ。

捜査官から渡される一通の封筒。訝しげに中を確認した吉川は驚きに目を見開いた。
〔請求書 : 私立桜泉学園様
カツ丼定食三人前、合計五千四百円〕

「佐々木君、こ、これは。」

ご馳走様でした。いや~、美味しかったです。ゴチになります。

「な、なんで学園がカツ丼定食三人前の代金を払わなくっちゃいけないんですか!」

え~、そこ説明必要かな~。じゃあ問題、ここ何処でしょう?

「警察署ですがそれが何か?」

う~ん、おしい、正確には男性犯罪課の取り調べ室ね。そんで男性の犯罪はその大小に関わらず、全て男性保護観察局に報告がされま~す。
で、全く無実にも関わらず取り調べまで行われた。この事実に男性保護観察局はどう動くでしょうか?
刑事さんはどう思います?

「そうだな、これまでの判例だと最低でも二千万を越える賠償支払い命令、二ヶ月の業務停止と改善命令は確実じゃないか?」

状況はお分かりですか、マネジメント部吉川さん?

一気に顔を青ざめる吉川。今まで入学式の事で頭が一杯であった為、まったく気が付いていなかったのだ。
事は学園高等部を揺るがす大事件だったと言う事に。

取り調べ、行われましたっけ刑事さん?

「どうだったかな?このカツ丼が誰かの奢りだったなんて事だったら利益供与になるから捜査自体なかった事になるが、各々の自腹なら問題はないしな。
ほら、おしゃべりはここまでだ。佐々木君、残念ながら取り調べ室での出前は自腹だ。早く払いたまえ。捜査を再開する。」

へいへい。
俺は押収された財布から二千円を取り出し「カツ丼定食代金ですね、はい、わたくし吉川が喜んでお支払いいたしますとも。
佐々木君は朝ごはんでもとって貰ったのかな?ちゃんとお家で食べないと駄目だぞ?」(吉川さん、引き攣り笑顔)

(ニヤリ)「「「ゴチになります!」」」
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