男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora

文字の大きさ
上 下
330 / 525
第三章 ある少年の回顧録

第326話 俺ってこの世界の主役じゃね? (2)

しおりを挟む
朝になった。
自分の状況が分かったのかと聞かれれば全く分かっていないと言うのが正直な所だ。
どうやら俺は俺であって俺でないと言うよく分からない事になっているらしい。今目の前でにこにこ笑いながら食事をしている美女は、自称俺の母親と言う事になっている。
いやいやいや、俺の母親はもっとおばさんだったハズだ。とは言えここ何年も電話すらしていないので現在どう言う顔かと聞かれれば自信を持ってこれと言えないのが情けない所だが。

それにこの身体、これって粉うことない子供の身体だよな。一体何がどうなってるって言うんだ。正直今にも叫びだしたいが、目の前の女性を心配させたくないと言う思いが強く湧いて来る。

「あのお母さん、昨夜は突然騒いだりしてごめんなさい。ちょっと怖い夢を見てたんだ。長い事囚われて無理やり仕事をさせられ続ける夢。
それで何とか逃げ出せたと思って大きな声をあげちゃって。
本当にごめんなさい。」

とりあえず昨夜の事はこれで誤魔化せるだろうか、状況が分からない以上大人しくしているしかないんだが。

「ひろし君、そんなに酷い夢を見てたのね。ママ気が付かなくってごめんなさい。やっぱりこれからもママと一緒に寝ましょ?ひろし君が大きくなったから一人で寝ますって言った時はまま寂しくって胸が張り裂けそうだったんだもの。一緒に寝れば怖い夢なんか見ないわよ、今夜からそうしましょうよ。」

はっ?こんな美女と添い寝?いくら母親でも勘弁してくれ、俺のメンタルはそこまで強靭じゃないんだっての。
一人で寝る宣言をした前の俺の気持ち分かるわ~、少しでも自我が芽生えれば恥ずかしくなっちゃうよな、マジで。
今にもこちらに抱き付いて全力で甘やかそうとする”母親”に戦慄しつつ、次の対策に移るとする。

「お母さんご馳走様。僕ちょっと調べたい事があるからお部屋に戻るね。お昼はカレーが食べたいな、お願いしちゃっていい?」

「もうひろし君たら急に大人びて来ちゃって、ママ寂しいぞ。それに全然”ママ”って呼んでくれないし。ママって呼んでくれないとニンジン一杯入れちゃうんだから。」

「う、うん、ごめんね。でもニンジンは体にいいから大歓迎だよ。それじゃお昼が出来たら呼んでね。」

俺は余計なボロが出ない内にそそくさと自室に戻るのだった。後ろから”ひろし君の意地悪~”とか聞こえるが、気にしたら負けだな、うん。


まずは自分自身の確認が必要だ。昨夜は突然の事で考える事自体を放棄して寝てしまったからな。朝ご飯を食べて少し余裕が出て来たからか、大分頭が回り始めている様だ。
ゆっくりと食事を摂るなんて何年ぶりだっただろうか、いかん泣きそう。落ち着け俺、まだまだ問題は山積みだぞ。

俺の名前はひろし、これは今のこの身体の名前だ。では前の身体、本来の名前はと言えば・・・、まったく思い出せない。しかも記憶がかなりあいまいだ、あの地獄の日々は覚えているのに会社名や自称上司の名前すら出てこない。今すらっと出て来たのは隣のデスクの松本の名前、でも下の名前が分からん。
これはあれか、もしかしなくても死んだか、俺?
まぁ、いつ死んでもおかしくないような会社ではあったからな。こんな事なら仕事なんて放り出して失踪でもすればよかった。労働基準局にでも逃げ込めば命くらいは助かったかもしれないのに、下手に今後の生活なんて考えるから。先の不安より今の命だろうに。

まぁいいや、おそらくどうにもならないだろう。それより今の状況だ、転生か憑依か、転生ならまだいいが憑依だと最悪だぞ。俺なんかがこのひろし君の人生を乗っ取っていい訳が無いからな、俺はただのんびり生きたいだけなんだ、人に迷惑を掛けたい訳じゃない。あんな自称上司みたいにだけは絶対になるもんか。

目を瞑り心を落ち着かせる。これは会社の研修と言う名目で無理やり行かされたセミナー(取引会社主催)で教わった瞑想法。徹夜続きで意識がおかしくなりそうな時、自身を無理やりリセットするのにずいぶんと重宝したもんだった。


俺は、そうだ、僕はひろし。お母さんが大好きなひろし。なんか色んな記憶が蘇って分からなくなっちゃったけど、思い出した。僕はひろしなんだ。
そうか、今までなんか変だと思っていたこの違和感は前世の記憶が原因だったんだ。
最近お母さんに抱き付かれて恥ずかしくなってたけど、前の記憶の影響を受けていたんなら仕方がないよね。
でもそれも僕の一部だ。前の僕、今までお疲れ様でした。
君の思いは僕がちゃんと引き継ぐよ。今度こそ幸せな人生を歩んで見せるから。もう苦しまなくってもいいからね。

ゆっくり目を開ける。僕の名前はひろし、新たに人生を始めたばかりの四才のお子様だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

処理中です...