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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー
第309話 続、旅は道連れ世は情けねぇ (2)
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深々と降り積もる雪。庭木や庭石はこんもりとした帽子を被り、石燈籠で揺れる蝋燭の灯りがより静けさを強調する。
"ポチャン"
右の脚からゆっくりと身体を沈ませ、腰に巻いたタオルを外し、頭の上に載せ変える。
「「あぁ~~~。」」
口から漏れるは魂の波動。
逆らってはいけない、在るがままを受け入れるのだ。
ここは湯の国、牧之原温泉郷。
心身を癒す魅惑の泉。
「木村君、漸く辿り着いたね~。」
「あぁ、長い道程だった。」
俺たちはこの露天風呂に至るまでのあれこれを思い出し、強い達成感に身を委ねるのだった。
「木村君~、次のお店に行くよ~。」
温泉街の撮影は順調と言えば順調であった。どのお店でも大歓迎、次々と運ばれる名物の数々。取り囲む人・人・人。
温泉王子、無双である。
のっぺりは何をやっていたのかって?商品の紹介と別撮り撮影ですが何か?
お茶の間の箸休めのっぺり佐々木、真のイケメンには敵わないでござる。(T T)
しかしそれほど大きくもない雪国の商店街、十メートルを進むのに二時間近く掛かるとは思わなかった。
しかも貴女たち何処から湧いて出て来たの?
この商店街、もっと閑散としてたよね?
ハイハイ、お姉さま方おさわりは厳禁ですよ~。王子様に嫌われちゃいますからね~。
では問題です。こののっぺりと温泉王子、この二人が向かう場所は何処でしょうか?
「「「露天風呂!」」」
はい、正解。それでお姉さんたち、何処かいい露天風呂紹介して欲しいんですけど知りません?
"ザワザワザワ"
"あそこの露天風呂は去年閉鎖されちゃったわよ。利用者ゼロじゃ仕方ないって。"
"他の場所誰か知らない?"
漏れきこえるは不穏な情報。この温泉地でも、男性客の露天風呂離れは深刻な様です。
「一件心当たりがあるけどかなり遠いわよ?この時期バスも走ってないし不便な所だけど行って見る?」
有力情報ゲット、でも遠方の予感。
木村君は"ビシッ"、サムズアップで応える気合いの入れよう。
吉田君は"コクン"、大きく頷く吉田君。
お姉さん、詳しいお話しをお聞きかせ願えますか?
俺たちの方針が決定した瞬間であった。
「なぁ、佐々木。本当にこっちの道で合ってるのか?」
あれから歩く事一時間半、田舎街の"ちょっと遠い"を嘗めてました。めちゃくちゃ遠いじゃん!影も形も見えないじゃん!
お姉さんから頂いた地図によれば合ってるハズだよ~。木村君もスタッフさんも一緒に見てたじゃん。
「そうなんだが、それにしてもこのままじゃヤバくないか?周りに家が一軒も見当たらないんだが。」
言ってはなんだけど、こんな温泉街の更に奥だったらこんなもんなんじゃない?離れた一軒宿って感じだったとしても何も不思議はないと思うよ。
「お前はポジティブだなぁ~。俺なんか遭難するんじゃないかってヒヤヒヤしてるんだが。」
スタッフさんは心配性なんだよ~。確かに雪山だったら恐いけど、ここは一応は町場《まちば》だし、ちゃんと道路なんだから大丈夫だって。
「「この状況でお気楽なお前がおかしい。」」
何か二人が辛辣なんですけど・・・。
更に歩く事三十分、漸く旅館らしき建物を発見!安堵から喜びの声を上げる一同。
でもまだ本番はこれから、取材交渉が待っています。
スタッフさ~ん、取材OK取れました~♪
何か知らないけど仲居さんをはじめ従業員一同えらい驚いてたんだけど。
”えっ、何でこんな所に男が二人も?”とか”もしかして今夜は眠れない夜になるの?私新しい下着卸さなくっちゃ。”とか不穏な言葉が聞こえてましたが、お風呂に入るだけですから。お泊りはしませんので、悪しからず。
宿の女将さんらしき人がいらっしゃったので今回の取材の趣旨を説明、露天風呂での撮影に入った次第であります。
「でも今回は本当に焦ったよ、今までも色々あったけど命の危険を肌で感じたのは今回が一番じゃないか?」
スタッフの吉田君、流石に身体が冷え切っていたので一緒にご入浴。これで後から入れって言ったら拷問以外の何物でもないですからね。
本当に色々あったね~。教会でシスターに追い掛け回されたり、駄菓子屋に入ったと思ったら巨大な頭のおばちゃんがいたり、アンティークショップに入ったら動く猫の人形に話し掛けられたり。世の中知らないことだらけだったよね~。
「お前刀鍛冶のお姉さんにスカウトされたこともあっただろ、あれマジビックリした。”奉納刀を作れるのはあなたしかいない。”とか言われて半ば強引に手伝わされた奴。そんで最後に出来上がった刀を振るったら行き成り周りが澄んだ空気になったというか明るくなったというか、 凄い不思議体験だったわ~。」
あったな~そんな事も。半年くらい前だってのにやたら懐かしいわ。あれって収益化が決まってから最初の収録だったよな、覚えてる覚えてる。こう考えると色々あったんだよな、この”世は情けねぇ”の番組も。
「佐々木の生活は常に波乱万丈だからな、たまにはゆっくり振り返るのもいいと思うぞ。こうやって露天風呂に浸かってな。」
流石は温泉王子木村君、発言がぶれないわ~。でも本当にそうかもね。
俺たちはその後も鬼ごっこ同好会の事や学校行事の事など、色んな思い出話に花を咲かせるのであった。
"ポチャン"
右の脚からゆっくりと身体を沈ませ、腰に巻いたタオルを外し、頭の上に載せ変える。
「「あぁ~~~。」」
口から漏れるは魂の波動。
逆らってはいけない、在るがままを受け入れるのだ。
ここは湯の国、牧之原温泉郷。
心身を癒す魅惑の泉。
「木村君、漸く辿り着いたね~。」
「あぁ、長い道程だった。」
俺たちはこの露天風呂に至るまでのあれこれを思い出し、強い達成感に身を委ねるのだった。
「木村君~、次のお店に行くよ~。」
温泉街の撮影は順調と言えば順調であった。どのお店でも大歓迎、次々と運ばれる名物の数々。取り囲む人・人・人。
温泉王子、無双である。
のっぺりは何をやっていたのかって?商品の紹介と別撮り撮影ですが何か?
お茶の間の箸休めのっぺり佐々木、真のイケメンには敵わないでござる。(T T)
しかしそれほど大きくもない雪国の商店街、十メートルを進むのに二時間近く掛かるとは思わなかった。
しかも貴女たち何処から湧いて出て来たの?
この商店街、もっと閑散としてたよね?
ハイハイ、お姉さま方おさわりは厳禁ですよ~。王子様に嫌われちゃいますからね~。
では問題です。こののっぺりと温泉王子、この二人が向かう場所は何処でしょうか?
「「「露天風呂!」」」
はい、正解。それでお姉さんたち、何処かいい露天風呂紹介して欲しいんですけど知りません?
"ザワザワザワ"
"あそこの露天風呂は去年閉鎖されちゃったわよ。利用者ゼロじゃ仕方ないって。"
"他の場所誰か知らない?"
漏れきこえるは不穏な情報。この温泉地でも、男性客の露天風呂離れは深刻な様です。
「一件心当たりがあるけどかなり遠いわよ?この時期バスも走ってないし不便な所だけど行って見る?」
有力情報ゲット、でも遠方の予感。
木村君は"ビシッ"、サムズアップで応える気合いの入れよう。
吉田君は"コクン"、大きく頷く吉田君。
お姉さん、詳しいお話しをお聞きかせ願えますか?
俺たちの方針が決定した瞬間であった。
「なぁ、佐々木。本当にこっちの道で合ってるのか?」
あれから歩く事一時間半、田舎街の"ちょっと遠い"を嘗めてました。めちゃくちゃ遠いじゃん!影も形も見えないじゃん!
お姉さんから頂いた地図によれば合ってるハズだよ~。木村君もスタッフさんも一緒に見てたじゃん。
「そうなんだが、それにしてもこのままじゃヤバくないか?周りに家が一軒も見当たらないんだが。」
言ってはなんだけど、こんな温泉街の更に奥だったらこんなもんなんじゃない?離れた一軒宿って感じだったとしても何も不思議はないと思うよ。
「お前はポジティブだなぁ~。俺なんか遭難するんじゃないかってヒヤヒヤしてるんだが。」
スタッフさんは心配性なんだよ~。確かに雪山だったら恐いけど、ここは一応は町場《まちば》だし、ちゃんと道路なんだから大丈夫だって。
「「この状況でお気楽なお前がおかしい。」」
何か二人が辛辣なんですけど・・・。
更に歩く事三十分、漸く旅館らしき建物を発見!安堵から喜びの声を上げる一同。
でもまだ本番はこれから、取材交渉が待っています。
スタッフさ~ん、取材OK取れました~♪
何か知らないけど仲居さんをはじめ従業員一同えらい驚いてたんだけど。
”えっ、何でこんな所に男が二人も?”とか”もしかして今夜は眠れない夜になるの?私新しい下着卸さなくっちゃ。”とか不穏な言葉が聞こえてましたが、お風呂に入るだけですから。お泊りはしませんので、悪しからず。
宿の女将さんらしき人がいらっしゃったので今回の取材の趣旨を説明、露天風呂での撮影に入った次第であります。
「でも今回は本当に焦ったよ、今までも色々あったけど命の危険を肌で感じたのは今回が一番じゃないか?」
スタッフの吉田君、流石に身体が冷え切っていたので一緒にご入浴。これで後から入れって言ったら拷問以外の何物でもないですからね。
本当に色々あったね~。教会でシスターに追い掛け回されたり、駄菓子屋に入ったと思ったら巨大な頭のおばちゃんがいたり、アンティークショップに入ったら動く猫の人形に話し掛けられたり。世の中知らないことだらけだったよね~。
「お前刀鍛冶のお姉さんにスカウトされたこともあっただろ、あれマジビックリした。”奉納刀を作れるのはあなたしかいない。”とか言われて半ば強引に手伝わされた奴。そんで最後に出来上がった刀を振るったら行き成り周りが澄んだ空気になったというか明るくなったというか、 凄い不思議体験だったわ~。」
あったな~そんな事も。半年くらい前だってのにやたら懐かしいわ。あれって収益化が決まってから最初の収録だったよな、覚えてる覚えてる。こう考えると色々あったんだよな、この”世は情けねぇ”の番組も。
「佐々木の生活は常に波乱万丈だからな、たまにはゆっくり振り返るのもいいと思うぞ。こうやって露天風呂に浸かってな。」
流石は温泉王子木村君、発言がぶれないわ~。でも本当にそうかもね。
俺たちはその後も鬼ごっこ同好会の事や学校行事の事など、色んな思い出話に花を咲かせるのであった。
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