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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第307話 始まる、女たちの攻防

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(私立桜泉学園高等部理事会会議室)

「今年度の受験志願者状況はどうなっていますか?」
「はい、やはりhiroshi君効果が凄まじい様です。募集人数七十名に対し受験志願者人数は十万人に達しました。事前に全国の大学に協力を仰ぎ試験会場として準備しておいた事が功を奏しました。」
「しかしここまで正確に予見するとは。彼の行動予測は更に磨きが掛かっていますね。」
「やはり"陰の王"、その力は健在と言う所でしょうか。」
「事前対策は入念に、hiroshiグッズ販売ブースの商品補充は十分に行ってください。いくら余っても構いません。足りなくなって暴動が起きない様にしっかりと管理するように通達してください。」

「しかし試験会場でアイドルのコンサートでもないのにグッズ販売をする事になるとは思いませんでした。」
「我が校は代々男子生徒をエサに女子生徒を鼓舞してきた学校です。これ迄のパンフレットもそうした色合いが強く出たものでした。
今回はhiroshi君と言う殊更に強い光が現れた。これは当然の流れなのかも知れませんね。」
「この対策を提案してくれたのはスタジオS&Bのマザー佐々木だとか。彼女には中等部の頃から世話になりますね。」
「彼女提案のスタジオCherryもすっかり一流の芸能スタジオに成長しました。あそこでしたら我が校の息が掛かっており生徒を預けるのも安心ですし、これ迄学校運営とは関係なく負担となっていた芸能関連事業を全て移行出来た事が大きい。学園事務局の正常化に大きく貢献しています。」

「報告ありがとうございます。では本日最大の問題について話し合いたいと思います。
ユーロッパ王室からの王女留学の要請です。政府からはぜひとも引き受けて欲しいとの要請が出されています。」
「防犯の観点からは問題ないかと。我が校は以前より警備には力を入れて来ています。他校よりよほど安全であるとの自負はございます。」
「クラス分けはAクラスの留学生枠とすれば問題ないかと。」
「確かに他のクラスにしてしまう方が問題が多そうではありますね。」
「ユーロッパ王室からの事前申請では学力的に授業について行けないと言う事は無いとの事ですが、今回外部入学生徒の質が相当高くなると予測されます。そうしますとクラス編成に問題が生じそうなのですが。」
「中等部出身者であれば人となりは分かりますが、外部入学生徒は何とも言えませんからね。この辺は最初のクラス編成を中間考査迄引き延ばして、漸くの期間生徒を観察する方向で行くのが良いのではないでしょうか。」
「緊急的措置になりますが、その様な対処が無難でしょう。」
「しかしなぜ王女殿下は我が校へ留学をお決めになられたのでしょうか?」
「それこそ言うまでもないでしょう。彼に会うためでしょうよ。」
「「「はぁ~っ。」」」
更に激しさを増すであろうひろし君を廻る攻防。理事会会議室は中等部での度重なる騒動とそれに対する教職員の対応資料を元に、更なる議論を重ね続けるのであった。

(Side : A)

「お嬢様、私立桜泉学園高等部の試験問題の入手に成功致しました。
こちらがその問題と解答になります。」

差し出されたのは赤く持ち出し禁止と書かれた茶色い封筒。
お嬢様と呼ばれた人物は、中に入っていた問題用紙にざっと目を通してから鼻で笑う。

「なるほど、この程度ならそこまで騒ぐ必要もありませんでしたわね。側仕え全員に試験を行わせなさい。今回の試験は満点が合格ラインであると通達、人員を選別する様に。」

「「仰せのままに」」

「hiroshi様、もう少しの辛抱です。直ぐに貴方の妻がお側に参ります。」

空に昇る満月を見詰めるお嬢様。その瞳には妖しい光が宿っていた。

(side : B)

長い板敷きの廊下。進む先の部屋の障子から漏れる明かりが、周囲を淡く照らす。

「失礼致します。御婆様、お呼びと伺い参上致しました。」

"入りなさい。"

障子扉を引き中へ入る。座敷の上座には着物姿の初老の女性、ただその凛とした姿勢からは決して衰えは感じられない。

「まずは私立桜泉学園高等部のスポーツ推薦合格おめでとう。これも日々精進を欠かさなかった貴女の努力の賜物、誇りに思います。」

「はい、ありがとうございます。」

「貴女の使命は我が一族に優秀な血を取り入れる事、彼の事は調べがついています。」

スッと差し出されたのは一冊の写真集。

「彼の周りには多くの女性が群がるでしょう。チャンスは多くありません、必ずやモノにしなさい。その為のバックアップは出来る限りの致しましょう。」

「はい!御婆様のご期待に応えて見せます。」

その視線の先には先ほど渡された写真集が。

「待っていてください。hiroshi様旦那様

女たちの攻防は、静かに幕を開けるのだった。
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