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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー
第299話 うちらの村に来て下さい
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燦燦と降り注ぐ太陽、山の斜面一杯に広がる果樹園、そこには鈴生りのミカン。
一つ剥いていただいてみる。甘い、めちゃくちゃ旨いぞこのミカン。
ちょっとお姉さんめちゃくちゃ旨いじゃないですかこれ、帰り直売所で箱買いしたいんだけど、宅配便て扱ってます?大丈夫、よっしゃー!事務所に山ほど送ってやる~♪
「はい、皆さんこんにちは、お茶の間の箸休め、のっぺり佐々木でございます。
只今私は愛媛県に来ています。みんな~、お婿さんが欲しいか~!」
「「「お~う!」」」
「おぉ、ノリがいいですね~
では早速会場の方に行ってみましょう♪」
意気揚々と斜面の畑道を降りて行くのっぺり佐々木。
”お姉さん方これマジでおいしいわ、いっぱい愛情詰まってるのね~。
直売所に行けば搾りたてジュ-スもあるの?やっほ~い!”
相変わらずの自由人であった。
町の文化ホールに集まった複数の女性参加者、会場には立食パーティーの様なセッティングがされている。
別室では男性参加者が緊張に震えていた。
(小声で)
「こんにちは~。皆さん緊張されているようですね~、どうも~、のっぺり佐々木でございます~。
どうでしょう、モニターの方には本日参加されている女性の方々が映し出されておりますが、お話ししてみたいという方が見つかりましたか~。」
「エントリーナンバー一番、小林祐樹さん。小林さんはプログラマーをされてるんですね~。小林さんはどうしてこの企画に参加されたんですか?」
のほほ~んとした顔で話を振るのっぺり佐々木。
「え、いや~、その、俺って今まで自分に自信が持てなくて。人前だと緊張しちゃうし、女性は何か期待した顔でこっちを見るし。かと言ってほかの男が現れるとそっちに行っちゃうんだけどさ、ハハハハ。
そんな中、元気いっぱい司会しているのっぺり君を見てたら俺も変われるんじゃないかって思って。結婚出来るかどうかは分からないけど、一度のっぺり君と話がして見たかったんだよね。」
「ごめん、泣いていい?そんな風に言われたの初めて、俺生きててよかった。力いっぱいサポートするから何でも言って、何だったら踊りだって踊っちゃうから。」
「続いてエントリーナンバー二番、武田強さん。武田さんはご実家住まいなんですね。
武田さんはどうしてこのお見合いに参加を?」
「はっきり言っていいよ、引き籠りだって。ネットで見てたよ、鬼ごっこ同好会。のっぺりって違った意味で目立ってたから。お前って凄いよな、俺なんか周りが怖くてそれでも自尊心ばかりデカくてさ。引き籠ってれば失敗する事も無いだろ?最低だよな。
そんな中お前を見つけたんだ。最初は困惑したよ、正直容姿は俺の方が上だって思ってた、でもめちゃくちゃカッコいいのな。俺なんか全然敵わないくらい。
温泉番組も見てたよ、何だよアレ卑怯だろ、変身ヒーローか何かかよ、憧れちまっただろうが。俺も変身したい、変わりたいって思っちまったじゃねえか。
俺が参加した理由はただ一つ、お前に憧れたからだよ。」
「・・・スタッフ―、人選おかしいって、なに俺を泣かしに来てるの?もう涙で前が見えないんですけど!変身したいの、やっちゃう?何にでもなれるよ?イケメンにしちゃおうか?」
「馬鹿言ってんじゃねえよ、俺は俺で変わっていくしかないんだっての。このまま勝負するさ。」
「何このイケメン、惚れてまうやろ。武田さん優勝!困った事があったら何でも言って、全力サポートするから。」
「エントリーナンバー三番、山田博人さん。山田さんはどうしてこのお見合いにご参加を?」
「捨てられたからだよ。」
「捨てられた?」
「捨てられたんだよ、嫁どもが全員離婚届持って来て出て行っちまったんだよ、俺が何をしたってんだよ、なんか悪い事でもしたかってんだ。分かんね~んだよ。」
「なるほどなるほど、それで新しいお相手を探しにって事ですね?」
「そうだよ、もう出て行った嫁は良いんだよ、新しい相手を見つけりゃそれでいいんだろうが!」
「そうですか~。山田さんは相手の女性を深く愛してらっしゃったんですね~。」
「何言ってんだよ、出て行った奴の事なんかどうでもいいって言ってるだろうが。」
「いえいえ、そうじゃないんですよ。本当にどうでもいい相手ってのは、関心が持てないんですよ。山田さんは先ほどから別れた奥様方のお話をずっとされてるじゃないですか。それだけ未練がある、関心を持っていた、身近な存在だった。
山田さんにとって奥様方はもはや身体の一部だったんです。だから失って、いつまでも隙間風が吹いてしまっている。
大丈夫、山田さんはもう知っているじゃないですか、大事な人を失うって言う事がどう言う事かって。本当に大事な事ってのが実は何気ない日常にあったんだって。
山田さんに必要なのは自分自身をしっかり見つめる事。
あなたと共に歩んでくれる女性は必ず現れます。お互いに支え合うそれが人と人との関わりって奴なんですから。」
「そ、そうかな。こんな俺でも受け入れてくれる相手が見つかるかな?」
「山田さんが相手の女性を真摯に見詰める事、受け入れる事が出来れば自ずと道は開けますよ。(ニッコリ)」
「のっぺりさん、ありがとう。俺、自棄になってたみたいだ。この見合い、頑張ってみるよ。」
「はい、頑張ってください。」
「以上三名の参加者のご紹介でした。会場の桜庭アナウンサー、女性達の反応はいかがでしょうか~。」
「は~い、テレビ愛媛アナウンサー桜庭利佳子です。会場は熱気に包まれていますよ~。ゆるキャラの愛媛ちゃんも待ってま~す。早くいらしてくださ~い。」
町をあげてのお見合いが、いま幕を切って落とされた。
一つ剥いていただいてみる。甘い、めちゃくちゃ旨いぞこのミカン。
ちょっとお姉さんめちゃくちゃ旨いじゃないですかこれ、帰り直売所で箱買いしたいんだけど、宅配便て扱ってます?大丈夫、よっしゃー!事務所に山ほど送ってやる~♪
「はい、皆さんこんにちは、お茶の間の箸休め、のっぺり佐々木でございます。
只今私は愛媛県に来ています。みんな~、お婿さんが欲しいか~!」
「「「お~う!」」」
「おぉ、ノリがいいですね~
では早速会場の方に行ってみましょう♪」
意気揚々と斜面の畑道を降りて行くのっぺり佐々木。
”お姉さん方これマジでおいしいわ、いっぱい愛情詰まってるのね~。
直売所に行けば搾りたてジュ-スもあるの?やっほ~い!”
相変わらずの自由人であった。
町の文化ホールに集まった複数の女性参加者、会場には立食パーティーの様なセッティングがされている。
別室では男性参加者が緊張に震えていた。
(小声で)
「こんにちは~。皆さん緊張されているようですね~、どうも~、のっぺり佐々木でございます~。
どうでしょう、モニターの方には本日参加されている女性の方々が映し出されておりますが、お話ししてみたいという方が見つかりましたか~。」
「エントリーナンバー一番、小林祐樹さん。小林さんはプログラマーをされてるんですね~。小林さんはどうしてこの企画に参加されたんですか?」
のほほ~んとした顔で話を振るのっぺり佐々木。
「え、いや~、その、俺って今まで自分に自信が持てなくて。人前だと緊張しちゃうし、女性は何か期待した顔でこっちを見るし。かと言ってほかの男が現れるとそっちに行っちゃうんだけどさ、ハハハハ。
そんな中、元気いっぱい司会しているのっぺり君を見てたら俺も変われるんじゃないかって思って。結婚出来るかどうかは分からないけど、一度のっぺり君と話がして見たかったんだよね。」
「ごめん、泣いていい?そんな風に言われたの初めて、俺生きててよかった。力いっぱいサポートするから何でも言って、何だったら踊りだって踊っちゃうから。」
「続いてエントリーナンバー二番、武田強さん。武田さんはご実家住まいなんですね。
武田さんはどうしてこのお見合いに参加を?」
「はっきり言っていいよ、引き籠りだって。ネットで見てたよ、鬼ごっこ同好会。のっぺりって違った意味で目立ってたから。お前って凄いよな、俺なんか周りが怖くてそれでも自尊心ばかりデカくてさ。引き籠ってれば失敗する事も無いだろ?最低だよな。
そんな中お前を見つけたんだ。最初は困惑したよ、正直容姿は俺の方が上だって思ってた、でもめちゃくちゃカッコいいのな。俺なんか全然敵わないくらい。
温泉番組も見てたよ、何だよアレ卑怯だろ、変身ヒーローか何かかよ、憧れちまっただろうが。俺も変身したい、変わりたいって思っちまったじゃねえか。
俺が参加した理由はただ一つ、お前に憧れたからだよ。」
「・・・スタッフ―、人選おかしいって、なに俺を泣かしに来てるの?もう涙で前が見えないんですけど!変身したいの、やっちゃう?何にでもなれるよ?イケメンにしちゃおうか?」
「馬鹿言ってんじゃねえよ、俺は俺で変わっていくしかないんだっての。このまま勝負するさ。」
「何このイケメン、惚れてまうやろ。武田さん優勝!困った事があったら何でも言って、全力サポートするから。」
「エントリーナンバー三番、山田博人さん。山田さんはどうしてこのお見合いにご参加を?」
「捨てられたからだよ。」
「捨てられた?」
「捨てられたんだよ、嫁どもが全員離婚届持って来て出て行っちまったんだよ、俺が何をしたってんだよ、なんか悪い事でもしたかってんだ。分かんね~んだよ。」
「なるほどなるほど、それで新しいお相手を探しにって事ですね?」
「そうだよ、もう出て行った嫁は良いんだよ、新しい相手を見つけりゃそれでいいんだろうが!」
「そうですか~。山田さんは相手の女性を深く愛してらっしゃったんですね~。」
「何言ってんだよ、出て行った奴の事なんかどうでもいいって言ってるだろうが。」
「いえいえ、そうじゃないんですよ。本当にどうでもいい相手ってのは、関心が持てないんですよ。山田さんは先ほどから別れた奥様方のお話をずっとされてるじゃないですか。それだけ未練がある、関心を持っていた、身近な存在だった。
山田さんにとって奥様方はもはや身体の一部だったんです。だから失って、いつまでも隙間風が吹いてしまっている。
大丈夫、山田さんはもう知っているじゃないですか、大事な人を失うって言う事がどう言う事かって。本当に大事な事ってのが実は何気ない日常にあったんだって。
山田さんに必要なのは自分自身をしっかり見つめる事。
あなたと共に歩んでくれる女性は必ず現れます。お互いに支え合うそれが人と人との関わりって奴なんですから。」
「そ、そうかな。こんな俺でも受け入れてくれる相手が見つかるかな?」
「山田さんが相手の女性を真摯に見詰める事、受け入れる事が出来れば自ずと道は開けますよ。(ニッコリ)」
「のっぺりさん、ありがとう。俺、自棄になってたみたいだ。この見合い、頑張ってみるよ。」
「はい、頑張ってください。」
「以上三名の参加者のご紹介でした。会場の桜庭アナウンサー、女性達の反応はいかがでしょうか~。」
「は~い、テレビ愛媛アナウンサー桜庭利佳子です。会場は熱気に包まれていますよ~。ゆるキャラの愛媛ちゃんも待ってま~す。早くいらしてくださ~い。」
町をあげてのお見合いが、いま幕を切って落とされた。
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