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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第288話 カップルさん、いらっしゃ~い (2)

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「盛り上がって参りました!どんどん行きましょう。のっぺり君、次のカップルさんよろしく!」
「ミホちゃん、ちょっと落ち着こう。はい、深呼吸。会場の皆さんもご一緒に~、吸って、吐いて~、吸って、吐いて~。」
怒涛の盛り上がりを見せていた会場が、ようやく落ち着きを取り戻した。

「では参りましょう。」
「「カップルさん、いらっしゃ~い」」
"テテレテデテレ、テテッテレッテッテ~"

舞台の袖から入って来たのは三人組の男女、男の子を真ん中に一人は腕に絡み付き、もう一人は手を握り男の子の顔を見詰めている。

「こんにちは、ようこそいらっしゃいませ。三人のお名前をお伺いしてもよろしいですか?」

「はい、三年D組、吉田誠、十五歳。」
「三年A組、五木由香、十五歳。」
「三年D組、大西秀美、十五歳。」

「おや、結構緊張しているのかな?のっぺり君、何か一発ギャグでもかましてリラックスさせてあげなさい。」
「は、ではここはわたくしがって無理だから、無茶振りが酷いから、のっぺり君芸人さんじゃないのよ?」
「「「えぇ~、違ったの!?」」」
驚きの声を上げる一同と会場。

「ちょっと待って、会場の皆さんまで僕の事芸人さんだと思ってたの?
そちらのお三方も同じ意見だとか?」
"コクコク"

「なんてこったい、仕事の幅が広がっちまったよ畜生。」
「のっぺり君、マルチなタレントを目指そうよ。」
「OK先輩、体当たり芸人、のっぺり佐々木、やるときはやる男ですぜ!」
親指を突き立てニカッと笑うのっぺり佐々木、その反応は誰がどう見ても芸人のそれであった。

「それで三人の馴れ初めを聞きたいんだけど。」
「はい、最初は僕と由香が付き合い始めたんだよね。」
「うん、一年生の時の夏合宿での肝試しの組み合わせが切っ掛けだったんです。」
「あれ、めちゃくちゃ怖かったよな。夜中思い出して一人でトイレに行けなかったもん。」
「でも二年の時の肝試しの方が洒落にならなかったけどね。」
「「アハハハハハ」」
乾いた笑いを浮かべる二人。
腕に絡み付く大西さんが頬っぺたを膨らませる。
「二人だけで分かり合ってて狡い~。」
「ごめんごめん、秀美をのけ者にしてた訳じゃないんだ。
秀美との思い出は沢山あるだろ?」
「う、うん。ごめんなさい。」
「素直に謝れるなんて秀美は偉いね。」
よしよしと頭を撫でる吉田君、エヘヘと笑いはにかむ大西さん。

「ウガー、なんじゃそりゃ~!
何舞台の上でいちゃついとるんじゃ~!責任者出てこんか~い!」
「うゎ~、ミホちゃんが壊れた~。誰か~、ひろし君人形鎮静剤持って来て~!」
スタッフが持ってきたひろし君人形(マネージャー持参)を抱き締めて冷静さを取り戻す伊集院ミホ、相変わらず三人でいちゃつく吉田君一行、なんだこのカオス?

「それで吉田君と五木さんは合宿で仲良くなったって話だけど、一年生の頃からお付き合いをしてたのかな?」
「いいえ、その頃はまだ仲のいい友達って感じでしたね。元々僕は女子が怖くて引き籠りをしていた様な人間だから、女の子と仲よくなる事自体奇跡の様な話でしたから。二年の夏合宿以降はかなり意識するようにはなっていたけど気持ち的に恋人ってほどじゃなかったかな。周りからはカップル認定されてましたけどね。(笑)」
「私も三年生になってこのままじゃいけないとは思っていたけど切っ掛けが。振られちゃうのが怖かったんです。それで今年の夏合宿最終日に行った花火大会で告白しようとしたら吉田君が・・・。」
「やっぱりそこは格好着けたいじゃないですか、だから花火大会の最中に僕の方から交際を申し込みました。」
"おぉ~。"
唸る会場、男の子からの告白にテンションは一気に上がる。

「それじゃ、大西さんとはどうやって?」
「秀美は僕の幼馴染みなんです。引き籠りをしていた時も、秀美となら会うことも話しをする事も出来ましたし、ある意味僕を支えてくれた人でした。
でも距離が近すぎて異性として意識出来なかったんですよね。」
「誠君と五木さんがお付き合いする事になって私だけ置いてきぼりになった気がして、思わず教室の中で喚き散らしちゃったんです。不恰好にも泣きすがっちゃったんです。」
「その時始めてこいつを一人の女の子として見る事が出来ました。そうしたら急にこいつが愛おしくなっちまって、ほだされたんでしょうね。」
見詰め合う二人、たまらず吉田君に抱き付く大西さん。その様子を温かく見守る五木さん。

「俺思うんですよ、こんなに俺の事を思ってくれる人がいるって凄い幸せな事なんだって。これから先も二人を幸せにしてあげれるかは分からないけど、少なくとも俺は幸せですよ。だって二人がいてくれるんですから。」
一見情けない事を言っている様で、ずっと傍にいると宣言するも同然の事をさらっと言ってのける吉田君。
感極まって泣き出す二人。
そんな二人をそっと抱き締める彼に、惜しみ無い拍手が送られるのでした。
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