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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第280話 夏の合宿は女の戦場 (6)

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”ドンドンドドン、テケテテ、ドドンドドン”
”ハア~ア~アァ~ハア~♪”

祭囃子の聞こえる喧騒、屋台の掛け声に夜店で何かを買う客の声、人々は思い思いに今宵の祭りを楽しんでいる。
鬼ごっこ同好会映像研究会夏合宿最終日、地元で行われている豊漁祭りに参加し宴に華を添える男、のっぺり佐々木です。
漁師町のお祭りは豪快でいいね、マグロのサクの炙り焼きなんて初めて見たんですけど。これ頂いちゃってもいいんですか?漁協の提供?ありがたや~。
「お、兄さん彼女連れかい?羨ましいね~、おばちゃんも後十歳も若ければね~。」
いやいやいや、お姉さんは十分若いですって、行けます行けます。
まだ三十絡みのお姉さん、自分十分守備範囲ですよ?
「嫌だよ~、こんなおばちゃん揶揄って、もう一皿持って行きな♪」
あざっす。遠慮なく頂きます。
”また来てね~。”
手を振るお姉さんを後に、祭りの喧騒を進む俺たち。絵実ちゃんどうした?複雑な表情して。
「佐々木君の天然女誑しを目にして呆れていた所。佐々木君て女性を褒めるのに躊躇ないよね。」
おう、俺は女性を尊敬してるからな。この世を回してるのは女性だしな、少しでも呆れられないように日々研鑽を積んでいるって所かな。
「ふ~ん、そうなんだ。私なんて何にもないから、佐々木君は偉いね。」
何故か寂しそうな顔の絵実。
あのな絵実、お前さん勘違いをしているぞ?俺は女性が何かをしているから尊敬しているとかそんな事を言ってるんじゃないんだ。女性はただそこにいるだけで素晴らしいんだぞ。
毎日おはようを言ってくれる姿も、一緒にご飯を食べてくれる姿も、隣でこうして話を聞いてくれる姿も、その全てが愛おしいんだ。男なんて女性の掌で転がされているくらいでちょうどいいんだよ。
もっと自信を持ってくれよ、俺の相方さん。

立ち止まりじっと目を見て諭すように語る俺。
ボケの自分にとってツッコミの絵実は欠かせぬパートナー、ずっと一緒にいてください。(懇願)

顔を真っ赤にし先に行ってしまう絵実さん。あの~、置いて行かないでください、お願いします。

ようやく追いついたのは浜辺の花火大会会場。沖に浮かべた特製の筏から花火を打ち上げるシステムらしいけど、波が荒いと中止になるところだった。今夜の海は凪いでいるので絶好の条件だろう。

”ヒュルルルルルルルルッ、ドッパーン”
”ヒュルルルルルルルルッ、ドッパーン”
”ドバンバンッ、バラバラバラバラバラバラ”

うわ~、綺麗だ~。
見上げる花火に見とれる人々。今世初めての花火に唯々目を奪われる。

絵実ちゃん、綺麗だね。
「うん、私初めて生で打ち上げ花火見たけど、こんなに綺麗なものだったんだね。」

花火を見詰める彼女の横顔は、とても大人びていて魅力的に映った。

ねえ絵実ちゃん。俺、高校は私立桜泉学園高等部に行こうと思ってるんだ。
色々考えたんだけど、やっぱりあそこが一番自由が利くしね。幸いマネジメント部の吉川さんからスカウトの話も貰ってるし、素顔のままでもいいって約束も取り付けてるしね。

驚愕に表情を変える絵実、走り出そうとする彼女を咄嗟に抱きしめる。

話しは最後まで聞こうよ絵実、別に別れ話をしたいんじゃないんだから。
さっきも言ったけど絵実は俺の相方パートナーなんだから、ずっと一緒にいて貰わないと悲しくなっちゃうだろ。
俺はこんな奴だから木村君や西山君みたいに格好いい口説き文句なんか言えないけどさ、ずっと一緒にいたい気持ちは本当だよ?
こんな俺だけど彼女パートナーになってくれない?

雰囲気もない、色気もへったくれもない口説き文句。でも本心からの言葉。
絵実は涙を浮かべながらコクリと頷いてくれた。

”ヒュルルルルルルルルッ、ドッパーン”
”ドバンバンッ、バラバラバラバラバラバラ”

まだまだ続く花火の音。
俺たちは互いを見つめ合い、そっと唇を重ねるのだった。


ごめん、急に恥ずかしくなっちゃった。申し訳ないんだけど、もう旅館に戻ってもイイ?
「う、うん。私も限界、今夜眠れないかも。」
互いに顔を見合わせ照れ臭そうに笑う俺たち。ゆっくりでいいんだよゆっくりで、そうやって大人になっていこうよ。
手を繋いで旅館に戻るまだまだ未熟な男女なのでありました。


花火会場からの帰り道、街路灯に照らされた防風林の小道を並んで歩く二人。
”…”
林のお堂辺りから聞こえる物音に顔を覗かせるとそこにはみっちゃんとくみちゃん、それに西山君?
「「西山君嬉しい。私たちの気持ちを受け入れてくれて。」」
「僕の方こそ嬉しいよ。二人がそんなに僕の事を想ってくれてただなんて。これからはずっと一緒だよ。」
熱い抱擁を交わす三人。西山君を見詰める二人の瞳は燃え上がる恋に潤んでいる。
”ガバッ“
跳び付く二人に思わず倒れ込む西山君。見つめ合い交わされる熱い口付け。
「「西山君・・・」」
「みっちゃん、くみちゃん」
倒れ込み、乱れる衣服に伸ばされる女性の手野獣の触手
「「西山君、ゴールしちゃってもいいよね!」」

はい、アウト~~~~!
終~~~~~~了!!

危ない危ない、何やってんのこいつら。はいお前ら全員連行、今夜は寝れると思うなよ、一晩中お説教だ~~~~!

「「あ~~~~ん、西山く~~~~ん!!」」

劣情に流された阿呆三人を捕縛し、旅館反省部屋に戻る佐々木君なのでありました。(合掌)
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